みなさんはスピーチをすることが得意ですか。職場での朝礼や社員の歓送迎会、イベントなど、学生時代に比べ社会人になると、スピーチをする機会がぐっと増えるもの。また、社会人経験を重ね立場が変化するうちに、スピーチの回数は多くなっていくことでしょう。

こうしたスピーチが得意な人や慣れている人はいると思いますが、そうでないという人も多いでしょう。突然スピーチをしてくれと頼まれたり、準備をする時間が十分に確保できなかったりすると、困ってしまいますよね。

聴き手の印象に残るスピーチを成功させるためには、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。今回は、私たちのスピーチを格段に向上させる「ストーリーの黄金律」についてお伝えしたいと思います。

「ストーリーの黄金律」とは

スピーチはプレゼンテーションと少し異なり、派手な演出などをしないことが特徴です。聞き手に資料を配ったりスライドを映したりすることなく、話のみを聴き手に届けることになります。そこで重要になるのが、ストーリー展開です。

コピーライター・ストーリープランナーであり、広報ツールのコピーライティングなどを手がけている湘南ストーリーブランディング研究所代表でもある川上徹也氏によれば、「ストーリーの黄金律」とは以下の3点がストーリーに含まれていることを指すのだそう。

<何かが欠落している、または欠落させられた主人公が>
<何としてもやり遂げようとする遠く険しい目標やゴールに向かって>
<数多くの葛藤、障害、敵対するものを乗り越えていく>

(引用元:PRESIDENT Online|部下の心を掴むスピーチ「ストーリーの黄金律」3

以下詳しく見ていきましょう。

「何かが欠落している、または欠落させられた主人公が」とは、ストーリーの主人公が、失敗続きの状況であったりライバル達と比べて恵まれていない環境であったりと、どこか欠落していることを指します。

「何としてもやり遂げようとする遠く険しい目標やゴールに向かって」とは、ストーリーにおいて主人公は、周囲の人間が絶対に無理だと考えるような大きな目標に挑む、ということ。

そして、「数多くの葛藤、障害、敵対するものを乗り越えていく」とは、ストーリーのなかで主人公には様々な困難が押し寄せるが、もうダメかと思った時に救いや問題解決のヒントとなるものが現れて、最終的には困難を乗り越えることに成功する、ということです。

上手な人のスピーチを聞くと惚れ惚れしてしまう、なんてことはよくありますよね。そのような素敵なスピーチには、上記の3点のような、人が感情移入しやすい物語のパターンが含まれていることがあります。

これらの点を盛り込めば、効果的なストーリー展開によって、聴き手の印象に残るスピーチをすることが可能になるのです。

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上手なスピーチの例

「ストーリーの黄金律」を含んだ上手なスピーチの例として、2005年にスタンフォード大学の卒業式で行われたスティーブ・ジョブズ氏のスピーチを挙げたいと思います。

ジョブズ氏と言えば、アップル社の新商品発表時における華やかなプレゼンで有名でした。しかしこの卒業式でのスピーチは、演台の後ろに立って原稿を読むというもの。演出をしない分、スピーチの出来は話す内容や構成に大きく左右されます。それにも関わらず、伝説のスピーチだとまで評されるほどに彼は聴き手を感動させたのです。

ジョブズ氏がそのスピーチで話したのは、主に自分の半生とそこから得た教訓についてでした。では、「ストーリーの黄金律」に沿ってその内容を簡潔にまとめてみることにしましょう。

「何かが欠落している、または欠落させられた主人公が」
「幼い頃に養子に出され、大学へ通う価値を見出せずドロップアウトし、さらには自分で立ち上げたアップル社からクビを宣告されたスティーブ・ジョブズ氏が」

「何としてもやり遂げようとする遠く険しい目標やゴールに向かって」
「消費者が使いやすく素晴らしいと感じる、革命的な製品を開発するために」

「数多くの葛藤、障害、敵対するものを乗り越えていく」
「新たにNeXT社を興して創造的な仕事に取り組み、その後アップル社に復帰を果たしてからも様々な技術や商品を生み出した」

そしてこれらの自身の経験を踏まえて、あの有名な「ハングリーであれ。愚かであれ(Stay Hungry. Stay Foolish.)」という言葉が雑誌『全地球カタログ(Whole Earth Catalog)』から引用され、卒業生へのメッセージとして伝えられたのです。

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「ストーリーの黄金律」を実践する

では実際に私たちがスピーチを行うなら、どのように「ストーリーの黄金律」を盛り込むことができるのかについて考えてみましょう。例として、新入社員の歓迎会でスピーチを行う場合を挙げたいと思います。

歓迎会でスピーチを行う時、主な聴き手は新入社員となるはずです。そこで、「ストーリーの黄金律」に沿って、彼らを主人公としたストーリーを練ってみてはいかがでしょうか。

1.「まだ入社したてで右も左も分からない新入社員たちが」

2.「会社で成果をあげて立派な社会人となるために」

3.「周囲の人の助けを得ながら、仕事のトラブルや合わない人間関係を乗り越えて成長していく」

このようなストーリーを軸に、自分自身の経験に加え、上司や先輩社員の経験・アドバイスも織り交ぜながら話せば、きっと新入社員の印象に残るスピーチをすることができるでしょう。ただ、長い時間だらだらと話し続けることには注意してください。聴き手が飽きてしまいます。

***
「たとえ失敗や挫折を経験したとしてもまた目標に向かって努力する」というストーリーを主観的に語ることは、聴き手も追体験がしやすく、共感を得るにはとても効果的です。

また、話し手の実体験から得た教訓は、伝聞や客観的な教訓よりも説得力があります。スピーチの構成に悩んだら、みなさんもぜひ「ストーリーの黄金律」を入れるようにしてみてください。

(参考)
日経BizGate|心を鷲掴み、五輪招致かなえた感動の黄金律
PRESIDENT Online|部下の心を掴むスピーチ「ストーリーの黄金律」3
日本プレゼンテーション教育協会|Q03「プレゼン」と「スピーチ」の違いは?
ダイヤモンド社 書籍オンライン|スティーブ・ジョブズの伝説のスピーチを解剖する
日本経済新聞|「ハングリーであれ。愚か者であれ」 ジョブズ氏スピーチ全訳
湘南ストーリーブランディング研究所 川上徹也オフィシャルサイト|湘南ストーリーブランディング研究所