最近ずっとストレスを感じている……、という方は要注意。その状態が続くと「脳」が打撃を受けてしまいます。ストレスレベルを下げてくれるという、ちょっと興味深いテクニックを活用してみてはいかがでしょう。キーワードは「思い込み」と「匂い」です。

慢性的なストレスは脳を萎縮させる

人はストレスを感じると副腎からストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールを分泌し、心拍数や血圧を上昇させるなどして非常事態に備えます。つまり、戦うか、全速力で逃げるかといった、生き延びるための準備が整うということ。

コルチゾールは、通常であれば役割が終わると分泌が止まり、脳に吸収され無害化されます。しかし、ストレスが慢性的だと分泌が過剰になるため、吸収が追いつかない状況に……。そうなると、ついには脳の「海馬」という領域に悪影響を及ぼしてしまいます。エピソード記憶の形成や、想起に重要な海馬は、脳内にあふれたコレチゾールによって神経細胞を破壊され、萎縮してしまうのだとか。

また、コルチゾールはATF3遺伝子というものに作用します。ATF3遺伝子が活性化していると、免疫細胞ががん細胞を攻撃する動きを止めてしまうと考えられています。

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ストレスを「害」だと思うほど悪影響になる?

とはいえ、ストレスもコルチゾールも、決して極悪非道なわけではありません。

福岡大学医学部内分泌・糖尿病内科教授の柳瀬敏彦氏によれば、コルチゾールには脂質やタンパク質をエネルギーに変えたり、体内の炎症を抑制したり、血糖値の低下状態を防いでくれたりする作用があります。それに、そもそもストレスホルモンと呼ばれる由来は、ストレスへの対処に不可欠なものだから。

また、仕事でプレゼンテーションをしなければならない場合や、テストの前などであれば、多少のストレスは集中力を高め、力を発揮しやすくしてくれるはずです。

そんななか、米スタンフォード大学の心理学者であるケリー・マクゴニガル氏は、「『ストレスにもいい面がある』と気づくことが重要だ」といいます。米イェール大学の研究によれば、「ストレスを害だと思っている人」は、「ストレスがポジティブな力になり得ると思っている人」よりも、気分を落ち込ませる傾向があるのだそう。そして前者は、ストレスからくる健康問題をより多く抱えているといいます。

つまり、「ストレスはカラダに悪い」という思い込みが、心身の問題を引き起こしている可能性もあるのです。逆をいえば、たとえストレスがあっても、とらえ方次第で快適に過ごせるということ。

考え方ひとつでできる、意外なテクニックですね。でも、それだけではありません。もうひとつ、興味深い話題をご紹介しましょう。

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好きな人の匂いでストレスレベルが下がる?

ブリティッシュコロンビア大学の大学院生、Marlise Hofer氏らによる研究チームは、異性カップル96組を対象に調査を実施しました。女性の被験者を2つのグループにわけ、

「未使用のTシャツと、パートナーが着たTシャツ」
「未使用のTシャツと、知らない男性が着たTシャツ」

の匂いを嗅いでもらい、ストレスレベルを上げるために模擬面接や暗算を行ってもらったのち、血中のコルチゾール濃度などを調べたのです。

すると、コルチゾールのレベルが低かったのは、パートナーが着ていたTシャツを受け取った女性のほう。なおかつ、その匂いがパートナーのものであると認識できた場合、よりコルチゾールレベルの低下具合が大きかったのだそう。

逆に、知らない男性の匂いを嗅いだ女性は、コルチゾールレベルが高くなっていたといいます。つまり、コルチゾールレベルが高くなった順番は、

1.知らない男性が着たTシャツ > 2.未使用のTシャツ > 3.パートナーが着たTシャツ

だったということです。この結果について、「人間は知らない人を警戒する習性があるため、それが、コルチゾールレベルを上げている可能性がある」と研究者らは述べています。

いずれにせよ、好きな人、安心できる人の「匂い」を持ち歩くだけで、どんな場所でもストレスレベルを下げられるというわけです。

ストレスレベルを下げるテクニック まとめ

では、以上を踏まえて、ストレスレベルを下げるテクニックをまとめましょう。

1.ストレスの良い面を見ようとする

ストレスを感じたら、「いま自分は戦うためにスタンバイしている」「生き延びるために活力がみなぎっている」「集中力が高まり、意欲がわいてきている」と考えましょう。そう思い込んでしまうのです。

偽薬を本物のくすりとして服用すると、治ってしまうこともある「プラセボ効果」という言葉があるように、思い込むことは想像以上に大きな力を生むはずです。

2.好きな人の匂いを持ち歩く

家族や恋人が身につけていたものを持ち歩き、その「匂い効果」でストレスレベルを下げましょう。先述したとおりブリティッシュコロンビア大学の研究チームは、調査をTシャツで行いましたが、おすすめはハンカチです。

数日間、家族や恋人に使ってもらったハンカチを、大事な会議やプレゼンテーションの日、テストや面接の日など、大事な日のお守り代わりに持ち歩いてはいかがでしょう。もちろんこれは身近な人でなければ意味がありません。一方的に想いを寄せる人のものでは効果がないので悪しからず。

3.ポジティブ・イリュージョン(優越幻想)をもつ

ポジティブ・イリュージョンとは、前向きな錯覚、いわゆる自分の都合のいいように思い込むということです。医療法人社団信証会江田クリニック院長の江田証氏は、日本人の美徳とされる謙虚さも度を超えると脳に悪影響だといい、「優越幻想を持っている状態が健康」だと述べています。

「根拠のない自信」という言葉もありますが、それこそがストレスレベルを下げるコツ。優越幻想に根拠は不要なのです。「自分ってすごい」「他の人よりも、いい仕事をしている」「実際には誰よりも優れている」といった具合に、心の中で思い込んでしまいましょう。これも思い込みの力です。

***
調査会社ギャラップが2005年~2006年にかけて実施した世論調査では面白いことに、「ストレス指標が高いほど、国民の幸福感や満足度も比例して高い」と示されていたようです。うまくストレスと付き合いながら、上手に乗り切りましょう。

(参考)
東洋経済オンライン|あなたを殺してしまうキラーストレスの恐怖
毎日新聞「医療プレミア」|ストレスに反応するコルチゾールは敵か味方か
厚生労働省|こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~|ストレスとうまくつきあう
理化学研究所|海馬から大脳皮質への記憶の転送の新しい仕組みの発見
NIKKEI STYLE|ケリー・マクゴニガル ストレスとうまくつき合う法
GIGAZINE|「パートナーのシャツの匂いをかぐとストレスレベルが下がる」という研究結果
武田薬品工業株式会社|プラセボとは?
リクナビNEXTジャーナル|カリスマ医師が教える! 記憶力が向上する9つの生活習慣とは?
NHKスペシャル取材班著(2016),『キラーストレス 心と体をどう守るか』,NHK出版.