時間も労力も沢山注いだ計画が、上手く行かないかもしれない……。認めたくはないけれど、多分上手く行かないだろう……。そんな状況に置かれたとき、あなたならどうしますか?

「それは中止にした方が良い」と言い切るのが合理的だと思うでしょう。では、次のように、少し具体化したらどうでしょうか。

「足掛け三年、1,000万円を投じてきた事業が、どうやらこのままでは利益を出せそうになくなってきた……」

このような状況の時に「それじゃあ今すぐやめてしまおう!」とキッパリと言い切るというのは、非常に難しいことだと思います。なにしろ、その事業に1,000万円もかけたんです。そう簡単に、踏ん切りなどつきませんよね。

でも冷静に考えれば、利益が出ないビジネスだったら畳んだ方が賢いはず。そのまま続けていったところで、損失が拡大したり、より大きなリスクを抱えたりすることにもなりかねません。

それではどうして人間は、そうキッパリと割り切って考えることができないのでしょうか。

サンクコストとコンコルド効果

それまでに投じた資金や労力に縛られて正常に判断できなくなることを、実際の事例に基づいて「コンコルド効果」と呼びます。

「コンコルド効果」という名前がついたいきさつは、飛行機の「コンコルド」にあります。これは開発途中、多くの費用がかかり採算が取れないことがわかったにもかかわらず、開発計画を中止することができず、赤字のまま飛び続けた飛行機のことです。

(引用元:マイナビウーマン|「コンコルド効果」から見る、破滅の心理とは?―もったいないから続ける

これは、経済学上で「埋没費用/サンクコスト」と呼ばれる概念(ここでは投じた資金や労力)が、人間の判断力に影響を与えてしまうことの好例です。

採算が合わない、損をするということが分かった段階でも、それまでに投じた資金や労力が足かせとなって計画を中止することをためらってしまうのです。コンコルドの例だけではなく、同じ理由で赤字を広げ続けた例は非常に多いと言われています。

yoko815
苦手の文法を克服! TOEIC815点を獲得し、国際会議でスピーチ。英語力を大きく変えた3ヶ月の科学的トレーニング。
人気記事

恋愛にも関係? サンクコストとコンコルド効果。

コンコルド効果は、大きなプロジェクトを動かすときにだけ当てはまる問題だ、という訳ではありません。

例えば、クローゼットの中に、もう随分と着ていないしこれから先も着ないであろう服を見つけたとします。それならばと捨ててしまえば良いものの、「でもこの服高かったからな……」とそれを惜しみ、再びクローゼットに仕舞いこんでしまう。そういう経験はないでしょうか?

実際に着るか着ないかということと、購入時の金額とは実際には関係がありません。本来なら、着ない服がクローゼットを圧迫するのは損失になるはずです。しかし、購入資金(サンクコスト)に縛られてその損失をそのまま抱え続けてしまう。これは、身近なコンコルド効果の一つの例だと言えるでしょう。

他にも、買い続けていた漫画に飽きてしまったのに「ここまで買い揃えたから……」と読みたくもない新刊を引き続き買ってしまったり、長く付き合った恋人と気持ちが冷めてしまっているのになかなか別れることができなかったりするのも、コンコルド効果によるものなのです。

sunk-cost-handan02

サンクコストから抜け出すために。 ゼロベース思考のススメ

このような心理効果は、知識としては知っていても、それから逃れることは非常に難しいものです。いくら、サンクコストに惑わされてはいけないと分かっていても、高価な服を捨てるのは勇気がいりますよね。

ですから、コンコルド効果からきちんと抜け出すためには、適切な対処法を知っておく必要があります。その対処法が、ゼロベース思考と呼ばれるものです。

「ゼロベース思考」とは既存の枠組みにとらわれず、目的に対して白紙の段階から考えようとする考え方の姿勢のことを指す。既存の枠組みでは、過去の事例や様々な規制などが思考の幅を狭くし、目的への最適な方法への到達を難しくなるため、「ゼロベース思考」で考えようとする姿勢が重要であるとされている。

(引用元:コトバンク|ゼロベース思考

長い目で見て重要なのは、「今」と「これから」です。「過去」ではないはずですよね。

目の前に二つの選択肢があるとき、今までのサンクコストは除外して、条件を白紙に戻すこと。これが、ゼロベース思考における唯一にして最大のポイントになります。

もっと実践のしやすい考え方に置き換えるなら、「初めの時点に戻れるのなら、自分はどうするか?」と考えると良いでしょう。

「この事業は立ち上げない」と思うのだったら、その時点で事業を打ち切るのが正しいと言えます。
「この服は買わない」と思うのなら思い切って捨てましょう。
「この人とは付き合わない」と思うのだったら別れた方が賢明なのです。

埋没費用を切り捨てて、機会費用を大切に

埋没費用と対になる考え方に、機会費用(オポチュニティーコスト)というものがあります。

機会費用とは、「ある選択をすることが、他の選択をすることに比べてどれだけの損失を生むか」ということを表す経済学上の概念です。

例えば、赤字になると分かっているビジネスを畳まず、赤字を出し続けた場合、「そこで出た赤字の額+他のビジネスに切り替えていれば出せたであろう黒字の額」が機会費用として支払われたことになります。これは、埋没費用に比べずっと大きな額になってしまいます。

他の例で言えば、あなたが気持ちの冷めた恋人と付き合い続けた場合、「同じ期間でもっと魅力的な恋人と過ごすことができた可能性」が機会費用として支払われているのです。

このように、コンコルド効果に縛られていると機会損失までも広げてしまい、大きな失敗となり得ます。

重要な判断に迫られた局面で、埋没費用に惑わされそうになったときは、このことをしっかりと頭に置いて、ゼロベースで「最善の選択」を追及することが大切なのです。

***
「もったいない」という考え方は、人間なら必ず持っているもの。日本人は特にその感覚が強いと言われています。

もったいないと考えること自体が一様に悪いということではありませんが、時にはその考えから脱却することも必要です。「コスト」を正確に見極め、最善の選択ができるようになると良いですね。

(参考)
Wikipedia|コンコルド効果
Wikipedia|機会費用
ビジネス思考への転換|機会費用を大切にして、埋没費用(サンクコスト)は無視する
PRESIDENT Online|目標は、過去を捨て「ゼロベース思考」で設定する
マイナビウーマン|「コンコルド効果」から見る、破滅の心理とは?―もったいないから続ける
コトバンク|ゼロベース思考