仕事で初対面の人と接する機会が多いけれど、いつも緊張してしまい、会話を弾ませることができない……。そんな風に悩んだことはありますか? 会話が途切れたことを気にしながらの仕事では、効率も下がってしまいそうですね。そんなビジネスパーソンのために、「初対面の人とうまくいく3つのテクニック」をご紹介します。
ビジネスでは初対面の人との付き合いも大切
株式会社ネオマーケティングが、全国の20歳~59歳の男女800人を対象にインターネットリサーチを行ったところ(2016年2月)、対人コミュニケーションが苦手だと答えた人は7割以上だったそうです 。かなり多いですよね。なおさら初対面なら、誰だって警戒心をもつでしょう。相手をよく知らないので、何を話していいのか分からないのも当然です。
しかし、ビジネスにおいて、初対面の人とのコミュニケーションは必要不可欠。苦手だからといって避けていれば、いつまで経っても新規顧客の開拓はできません。新しいプロジェクトチームの一員になった場合でも、コミュニケーション不足ではスムーズに仕事を進められないかもしれません。
どんなに初対面の人と接することが苦手でも、ビジネスパーソンはそれを克服していく必要があるのです。
なぜ初対面だと緊張するのか?
実は、経験を積んだとしても、初対面の緊張はなくならないそうです。
経営コンサルタントの小宮一慶氏いわく、多少の差こそあれ、百戦錬磨のビジネスパーソンであっても、初対面のシーンでは緊張してしまうとのこと。そして、「見ず知らずの相手に対し、予期せぬ攻撃から身を守ろうと心理的なバリアを張るのは、人としてごく自然なこと」だといいます。
また、税理士法人あさひの『企業経営マガジン(No.312)』には、「営業マンの行く手を阻む4つの心理的バリア」のなかに、「過去の嫌な体験に反応する」とも記されています。 だとしたら、過去に味わった初対面シーンでの苦い思い出が、「また良い印象を与えられないのではないか」「会話が途絶え気まずくなるのではないか」と気持ちを委縮させ、初対面の緊張感を高めてしまうとも考えられます。しかも、心理的バリアは人間の本能なので、理性でコントロールしにくいのだとか。
ならば、それを逆手にとってはいかがでしょう。初対面での成功体験を少しずつ増やし「過去の良い体験に反応」させ、緊張を弱めてしまうのです。そこで、ご紹介したいのが、心理学的なテクニックや、ビジネスにおけるコミュニケーションのテクニック、もしくは会話のヒントをうまく利用する方法です。
初対面の人とうまくいく3つのテクニック
1.インスタント・モデリング
箱田忠昭氏が、著書『傷つけず傷つけられない距離感の法則』のなかで紹介している「インスタント・モデリング」とは、自分が理想とする人物と同じような振る舞いをすること。その人物は、歴史上の人物でも、スポーツ選手でも、実業家でも、上司や先輩でも、ドラマや映画のキャラクターでも構いません。
大切なのは、自分がその人に敬意を払っており、なおかつ「そうなりたい」と感じていること。そして、「尊敬するあの人なら、初対面の人とどうコミュニケーションをとるだろう?」「ここで、どんな言葉を発するだろう?」と考え、その人物になりきって実践するわけです。
同氏は「(初対面で)緊張しすぎてしまうと、相手との距離を縮められない」とし、インスタント・モデリングはそのような悩みを解決するテクニックのひとつだと伝えています。
2.ペーシング
心理学的なコミュニケーションのテクニックに、「ペーシング」というものがあります。その方法は、相手の「話し方」「状態」「呼吸」に自分のペースを合わせるというもの。 心理カウンセラーの池田宏治氏は、「自分と共通点が多い人には好感を抱きやすいものなので、相手と話すテンポを合わせたり、共通点を見つけたりすることで、相手から親しみをもたれやすくなる」と述べています。具体的には以下のとおり。
「話し方」――声の調子・大きさ・高さ、話すスピード・リズムを相手に合わせる 「状態」――明るさ、静けさ、暗さ、感情の起伏を相手に合わせる 「呼吸」――相手の呼吸のリズムを、肩の動きなどから読み取り合わせる
こうしていくと、聞き手と話し手に一体感が生まれ、安心感をもたらして、信頼関係を築くことができるのだとか。
3.木戸に立ちかけし衣食住
「木戸に立ちかけし(きどにたちかけし)衣食住」とは、会話を引き出すヒントです。“おまじない”と表現されることも。初対面の人や、あまり親しくない人と会話する際、これを思い出すと話題づくりに役立ちます。具体的にいうと、
「き」は気候――例:「今日は寒いですね」 「ど」は道楽(趣味)――例:「休みの日は何されているんですか?」 「に」はニュース(時事)――例:「アメリカの大統領が来日しましたね」
といった具合です。そして、ここから先は初対面の相手と、少し会話が進んだあたりで活用するといいでしょう。
「た」は旅――例:「連休はどこかに行かれますか?」 「ち」は知人――例:「○○さんは、ご存知ですか?」 「か」は家庭――例:「わたし以外の家族はみな暑がりで困ります……」 「け」は健康――例:「最近、健康のためにウォーキングを始めました」 「し」は仕事――例:「来月は仕事が忙しくなりそうですね」
「衣食住」は 「衣類」――例:「素敵なスーツですね」「素敵なバッグですね」 「食べ物」――例:「何料理がお好きですか?」 「住まい」――例:「ずっとこちらにお住まいですか?」
相手のプライバシーに踏み込み過ぎないよう、いずれも無難な内容を選ぶのがポイントです。特に「か(家庭)」や「け(健康)」などは繊細なので、相手からの情報を引き出そうとせず「最近は……」から始めて、自分の話を盛り込んでいきましょう。
*** コンサルタントの小宮一慶氏は、「気配り」こそ心理的バリアを低くする最良の方法といいます。気配りを心がけながら、ご紹介したテクニックをお試しくださいね。
(参考) PR TIMES|株式会社ネオマーケティングのプレスリリース|全国の20~59歳男女800人に調査「手紙と対人コミュニケーション力に関する調査」 マイナビウーマン|親しくない人との会話がすごい楽になるテク「きどにたちかけせし衣食住」 NLP 日本NLP協会 公式サイト・神経言語プログラミング|NLP用語集|ペーシング 栃木県の中小企業をサポートする税理士-税理士法人あさひ|No.312 企業経営マガジン 1月25日号 箱田忠昭著(2010),『傷つけず傷つけられない 距離感の法則 単行本』,マガジンハウス. 小宮一慶著(2010),『たった5分で「あなたと一生仕事をしたい」と思われる話し方』,PHP研究所. 小宮一慶著(2011),『気くばりの極意』,学研パブリッシング.