職場の上司や同僚と話していて「この人は頭が良いな」と、感じた経験がありませんか?
簡潔にまとめられた話し方は伝わりやすく、また知性も感じられて憧れますよね。それに対して、自分は語彙の面でも話すときの切り口という面でも劣っていて、頭が悪いのではないかと思ってしまう、そう感じることもあるでしょう。
日本語の中には、使うことで話が簡潔になったり、頭が良さそうに聞こえる言葉があります。もともと頭が良い人がそういう言葉を使うと考える方もいるかもしれませんが、逆のプロセスもあり得えるのです。そういった言葉を意図的に使うことによって、頭を鍛えることができるでしょう。
今回は、“頭の良い話し方”を身につける第一歩として、ものの見方を変えてくれて頭を鍛えるキーワードを紹介します。
「要するに」や「総括して言えば」で視点を移動
何かを話すとき、最初から具体的な話に入るのではなく、全体像を伝えることが大切です。
例えば、何らかのプロジェクトの結果発表のプレゼンがあるとしましょう。
そこで「まず、Aの地域では、○○の部分がうまくいき△△は目標達成できませんでした。うまくいかなかった理由は××と□□がありまして……」というように話されたら、「結局プロジェクトはどうなったの?」と聞きたくなりませんか?
そこで意識したいことが「全体像」です。プレゼンの始めに下記のように言うのです。 「総括して言いますと、このプロジェクトはうまくいきました」
そのあとに「細分化しますと、A地域では○○で、B地域では△△でした。」と話せば、最初に全体像と結論がはっきりしているので、聞き手にとってわかりやすい話し方となります。
日常生活における話し方としても、全体像を意識することは有効です。例えば、動物のゾウの説明をするとしましょう。そこで、「足が太くて、耳が大きくて、草食で」と、話しても相手には伝わりません。視点を広く持ち「一番大きい草食動物です」いう方が分かりやすくありませんか?
まずは、視点の大きさを上手に利用するようにしましょう。
「主観的に言えば」と「客観的に言えば」
視点移動の手段に「主観」と「客観」を使う方法もあります。
例えば、自分の立案した企画Aと企画Bがあるとしましょう。Aのほうがオーソドックスで安心できるけど、自分としては新しい発想であるBのほうが好ましいと考えています。
そこで上司にこう言ってみるのです。 「客観的に言えば、企画Aのほうが安心感はありますが、主観的に言えば企画Bの○○な部分の新しさを評価していただきたいです」
このように言うことで、上司もいろんな角度から検討するようになりますし、「自分の意見だけでなく、きちんと客観的な分析もしているな」という安心感を与えることもできるでしょう。
主観と客観を意識して、自分のエゴでない、あるいは他人に流されない話し方をしていくことがポイントです。
「メリット」と「デメリット」を明確にする
メリットとデメリットに分けることも非常に有効です。どんな物事にも、メリットとデメリットの両面があるという前提でそれぞれを列挙しましょう。
例えば、営業マンがセールストークの中で商品の説明をするとします。メリットばかりをいうことはあまり効果的ではありません。あえてデメリットやリスクの存在を伝えることで「何も隠していません」というイメージを与えることができるのです。
また、買い手の立場でも、メリットばかりを見てしまうのではなく、デメリットがないかを常に考えるようにすると、賢い買い物ができますよ。
「帰納」と「演繹」を使おう
物事を考える道筋には、「帰納」と「演繹(えんえき)」があります。
「帰納」とは、個々の具体例をまとめ上げて、一般的な法則を導き出す道筋ということ。算数の問題で、数列の規則性を考えて、次の数字を予想するといったものは帰納的な考え方を使います。
「演繹」は「帰納」の逆で、すでに確立されている事柄から他の事柄を示すという考え方です。三段論法は、その典型例となります。
話の進め方に「帰納」と「演繹」が入っていないと、話の論理がバラバラになってしまいます。例えば、おばちゃんの雑談などは個別の関係ない話をポンポンと出していくようなことがあり、これは論理的とは言えませんよね。
「帰納」「演繹」を意識して、論理がはっきりした話し方をしましょう。
*** 紹介したような言葉をうまく使うことで、いろいろな面から物事を観察することができるようになります。そのことによって相手にも分かりやすい話をすることができるでしょう。
(参考) 斎藤孝(2014), 「すぐに使える!頭がいい人の話し方」, PHP新書 コトバンク|演繹 All About|【連載】説得と交渉の営業心理学第3回 一面呈示と両面呈示