成績が伸びず勉強することがつらい、仕事がきつくてつらい、人間関係がうまくいかずつらい……。誰だって、一度くらいはそう感じることがありますよね。

でも、そんなとき、無理してその状態を続けて心身が壊れてしまったら元も子もありません。頑張ることも大切ですが、自分を追い込むだけではなく“苦痛のもと”から離れることも必要です。心身のつらさを解くために「たまには逃げてもいい」ことを説明します。

“つらい” ときに私たちの身に起こっていること

“つらい”と感じるとき、私たちは肉体的あるいは精神的に苦痛を受けている状態です。しかし、それが継続的に繰り返されるとストレスになります。脳生理学者の有田秀穂氏は、ストレスを感じると脳は2段階の反応を示すといいます。

第1段階目はノルアドレナリン神経が働いて交感神経が高まり、血圧が上がって覚醒状態になります。パニックになったり、不安になったりしますが、ストレスに対処するための反応なので、この時点では問題ありません。

しかし、問題はストレスが続いた場合。脳の反応は第2段階目となり、すくんで動かなくなってストレスへの抵抗を止めてしまうのです。すると、無意識のままどんどんストレスが蓄積され、脳の底部にある視床下部が反応し、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)やストレスホルモン(コルチゾール)が分泌されます。それによって心拍数の増加や血圧の上昇、食欲の低下などが生じるのです。さらには肥満や糖尿病まで発症させてしまうのだとか。

ちなみに、肉体的な苦痛を感じると、脳から鎮痛効果がモルヒネの数倍という物質β-エンドルフィンが分泌され痛みをブロックしてくれます。しかし、結局長く続けばストレスが蓄積され、先述した悪循環を招くことになります。

和歌山県立医科大学・仙波恵美子教授の論文『ストレスにより痛みが増強する脳メカニズム』によれば、痛みの中枢回路とストレスの中枢回路はお互いにオーバーラップしているとのこと。心の痛みがカラダの痛みをさらに増強させるメカニズムがあると考えられているそうです。

いずれにせよ、受けた苦痛は私たちのカラダに多大な影響を与えます。

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“つらい” が精神に及ぼすこと

精神医学の視点でストレスが及ぼす代表的なことといえば、やはり「うつ病」です。WHOの調査によれば、20歳以上の日本人約13人に1人の割合でこの病気を経験するとのこと。「気持ちが滅入る」「やる気がおきない」から始まり、「外出がおっくう」「仕事ができない」と感じるようになっていきます。また、疲れやすくなり、頭痛や肩こり、カラダの痛みに、下痢や便秘まで起こることがあります。

なかでもまじめなひとや、几帳面な人がとくにかかりやすいのだとか。

つらくても、負けずに頑張って長く無理な状態を続けていると、知らず知らずのうちに心身はボロボロになってしまいます。では“つらい” と感じたとき、私たちはどう対処したらよいのでしょう。

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“逃げる” は悪いことじゃない

“つらい”と感じたとき、それを誰かに話して、あるいはジムに行って汗を流して、もしくは趣味に没頭してスッキリできたなら、きっと大丈夫。しかし、そんなことでは解消できないほど耐えがたい“つらさ”を感じているならば、

その場から 逃げてみる ことです。

でも、逃げるというと普通なら「忍耐力がない、根気がない」とネガティブに解釈されますよね。“逃げる”ではなく“離れてみる”と言葉を変え表現をやわらかくしても、“逃げる”という言葉はネガティブなまま。

だからこそ、精神科医の泉谷閑示氏は「逃げ」=「悪いこと」の価値観をそのままにせず、“逃げ”という言葉からネガティブな意味を引きはがしてしまうことだといいます。そして「家が火事になったら人は逃げるように、生き物である私たち人間は、置かれている状況が危険・不快な場合には、自然な反応として逃げようとするものだ」と述べているのです。

頑張り続けることは素晴らしいことです。しかし、決して危険や不快から「逃げる=悪」ではないこと、自然な反応だということをぜひ知ってください。

ならば、どう「逃げる」のか?

苦痛が続き、心が抑圧されてきたら、まずは可能な範囲で自分がすべきことをしてしまいましょう。約束があればそれを終え、終えられなければ連絡したり、説明したりします。謝罪が必要なら、もちろんそうします。

そして、さっそくあなたの“つらい”から逃げます。

逃げるのが「一時的」か、「完全に」か、状況によっていろいろあるでしょう。いずれにせよ、そこから逃げたあと、待っているのは未来の選択です。世界で最も精神的に影響力のある人物に位置づけられた作家エックハルト・トールは、「唯一力をもっているのは、『今この瞬間』である」といいます。つまり、大きな影響力があるのは過去ではなく、なんでも自由に選択できる「今」だということ。

それに、多様化した現代において選択肢は無数に近いはず。学ぶこと、友人、進路、仕事、働き方など。泉谷閑示氏も、試行錯誤は必要な回り道だといいます。そして、こうも伝えています。

「心」が本当に「面白い」「やってみたい」と思うものに出会ったとき、人は多少の障害があっても、「逃げ」たり続かなかったりしないものです。

(引用元:ダイヤモンド・オンライン||男の健康|  「逃げる」のは悪いこと?―ウツの人にもよく向けられる精神論

逃げることが、大切なことに出会うための第1歩になる可能性もあるのです。

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WHO憲章による“健康の定義”は、「健康とは、肉体的・精神的ならびに社会的に完全に良好な状態であって、単に疾病や虚弱でないというだけではない」です。ぜひ健康のためにも「たまには逃げてもいい」と覚えておいてくださいね。

(参考)
東邦大学|生物学科|ストレスと脳
THE21オンライン|脳のストレスを「溜めない」 8つの方法
長谷川鍼灸院|ストレスから病気へ
ソラクリニック|診療案内 |ストレス外来
鈴木泰子著,佐藤弘明監修(2015),『図解入門よ~くわかる最新からだのしくみとふしぎ』,秀和システム.
仙波恵美子(2010),『ストレスにより痛みが増強する脳メカニズム』,日本緩和医療薬学雑誌,日本緩和医療薬学会,Vol.3 pp.73-84
マーシー・シャイモフ著,茂木健一郎訳(2008),『「脳にいいこと」だけをやりなさい!』,三笠書房.
Wikipedia|エックハルト・トール
ダイヤモンド・オンライン|男の健康|「逃げる」のは悪いこと?―ウツの人にもよく向けられる精神論