「情報が多くて把握しきれない……。」
スマートフォンの機種変更をしようとしたけれど、選択肢が多くてどれが良いのか分からない。プロジェクトの概要を把握したいけれど、要点が多くて混乱してしまう。
そのようなことはありませんか?

たくさんの情報を一度に理解しようとして混乱してしまうのは、人間の脳の構造上仕方のないことです。ですが、短期記憶のメカニズムについて少し知るだけで、そんな悩みに対処するのもグッと楽になりますよ。

マジカルナンバーという考え方

マジカルナンバー7という言葉を聞いたことがあるでしょうか? これはアメリカの認知心理学者であるジョージ・ミラーが考案したもので、人間の短期記憶は一度に7±2個のものしか同時に把握、記憶することができないという考え方です。

ミラーはこの記憶の単位を「チャンク」として扱うことを考案しました。例えばアルファベットで「W」「O」「R」「D」という4つの文字を提示すると、4チャンクとして認識されます。しかしこれを「word」というひとつの単語として扱うと1チャンクになります。

人間がひとつの意味、認識のまとまりとして扱うものがチャンクなのです。「Very important word」という並びは3チャンクなので認識するのも記憶するのも簡単ですが、これが同じ17文字の意味のないアルファベットであれば17チャンクにもなってしまい、記憶するのは相当大変になるでしょう。このように、扱うチャンクが7±2個を超えると扱いきれなくなってしまう、というのがミラーの唱えた考えなのです。

ユーザーインターフェースなどの開発においては、このマジカルナンバー7の考えに基づいて「ボタンや機能を7つ程度に絞る」ということが実践されています。例えばAppleのトップページであれば、「Mac」「iPad」「iPhone」「Watch」「TV」「Music」「サポート」と、7つのメニューが表示されています。このように、ある程度以上の規模を持った会社のホームページを訪れてみれば、トップページに並んだメニューは7つ程度まででおおよそ揃っているはずです。

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マジカルナンバー4の例

しかし2001年、ミズーリ大学の心理学教授であるネルソン・コーワン氏の研究によって、本当の記憶の限界は4±1個程度であることが明らかになり、近年では新たにマジカルナンバー4マジカルナンバー3という言葉が浸透し始めているようです。

このマジカルナンバー4の分かりやすい説明には、電話番号の例がよく使われます。一般的に電話番号は10桁や11桁の数字が割り振られていますが、これを連続して表記するとその数字を認識したり、記憶したりすることが難しくなります。そのため、電話番号にハイフンを挿入し、4桁までの塊(チャンク)に分割して記載されることが一般的です。郵便番号や金額の表記に挿入されるハイフンやカンマもまた、同様に認知、記憶を助ける役割を果たしています

多過ぎる選択肢で迷ったときや、複雑な物事を理解するときなどは、この手法を参考にするとよいでしょう。

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チャンク化で情報を整理する

電話番号のハイフンのように、多過ぎる要素をいくつかのグループに分けて把握しやすくすることを「チャンク化」と言います。多過ぎる要素を大雑把に4つ程度までのグループに分類し、それぞれについて考えてやるチャンク化をするだけで、それらを把握したり記憶したりすることがグッと楽になるはず。チャンク化の過程では同時に情報の整理も行うので、物事の概要を把握するには一石二鳥です。

もしくは思い切って、要素を減らす方向で考えるというのもひとつの手です。例えばスマートフォンの機種で悩んでいるなら「売れ筋上位4位までの中から」と絞ってみたり、思い切って「これとこれのどっちかにする」と二者択一に持ち込んでみたりすることで、その後の検討が思いがけずすっきりするかもしれませんよ。

また、たくさんの要素が絡んだ複雑な案件を扱うときには「まずこれとこれとこれとこれだけ考える」というように思考の対象を絞ってしまいましょう。例えば、受注金額・納期・補償・重要度などをまず検討してから、実際の作業にかかる費用や、人員の確保、補償の範囲など、他の要素についても検討を始めることで、思考の混乱を避けることができます。

一度にたくさんのことを扱い、短期記憶の領域をギリギリまで圧迫してしまうと、要素の見落としや致命的なミスを招くことに。そうならないためには、マジカルナンバー4の考え方で、情報を整理しながら正しく把握することが大切です。

プレゼンにも使えるマジカルナンバー4

このマジカルナンバー4の考え方は、自分の思考、記憶術として使えるだけではなく、誰かに何かを伝えたり、プレゼンなど発表をしたりするときにも役立ちます。

話の聞き手も自分と同じ人間ですから、同じ様に短期記憶の容量には限界が存在しています。そのため、多過ぎる要素を一度に並べて説明しても、相手は混乱してしまい、うまく理解することができません。自身が記憶するときと同じように、要点をグループ分けしたり、思い切って絞り込んだりすることで、相手が要点を把握しやすくなるのです。

この際、4±1の下限に合わせて3つに絞るというのが一般的な方法です。最も強調したいポイント3つをしっかりと目立たせ、残りの要素は思い切って削ってしまいます。ポイントを3つに絞るなんて少なすぎるのでは? と思うかもしれませんが、あれもこれもといろんなことを並べるよりも、プレゼンの内容がむしろ伝わりやすいのです。

これはスティーブ・ジョブズがあの有名なiPhoneのプレゼンで利用した方法でもあります。その歴史的なプレゼンは、新製品の特徴を3つのポイントに絞って紹介するところから始まりました。

1. ワイド画面タッチ操作のiPod
2. 革命的携帯電話
3. 画期的ネット通信機器

この3点がこれから世に送り出すiPhoneにとって重要なポイントなのだと、ジョブズはそう判断したのです。

初代iPhoneが搭載した機能は、皆さんがすでに知っているとおり、かなり多岐にわたります。それでも、こうして3つに絞って提示してみた方がその良さが伝わるような気がしませんか?

プレゼンの天才と呼ばれたスティーブ・ジョブズのテクニック、さっそく次回のプレゼンで試してみてはどうでしょう。

***
人間の短期記憶の容量は、頭の良し悪しとはほとんど関係ないと言われています。
それをどのようにうまく使うかこそが、有能かどうかの分かれ道になるかもしれませんね。

(参考)
PhilPapers|The magical number 4 in short-term memory: A reconsideration of mental storage capacity
MCラボ|マジックナンバー7±2の間違いと真実
コトバンク|チャンク
One think work|意外と知られてない!誰でも説明が上手になるマジックナンバー3の使い方