マルチタスクが苦手な脳。それでも複数のタスクを処理するための『タスクボード』活用法

皆さんは、日々のタスクを効率よく片付けられていますか?

急ぎの仕事を片付けなければならないのに、上司から別の仕事を指示されたり、目下抱えている資料作成の仕事に集中したいのに、トラブル対応をしなければならなくなったり……。こうした例のように、いくらひとつのタスクに集中したくとも、どうしても複数のタスクを抱えざるを得ないことはあると思います。気が付けばタスクの嵐で忙殺されてしまっていた、なんてことも少なくはないでしょう。

そのようなマルチタスクの状況では、処理すべきタスクが次々に降って来るため、小さなタスクを忘れてしまったり、タスクごとの期限を勘違いしたりといったミスが起きがちです。チームで仕事をしている時には尚更、たったひとりのタスク管理が甘いだけでチーム全体の足並みがそろわなくなり、プロジェクトそのものが停滞してしまう、といったことにもなりかねません。

そこでこのコラムでは、いかに上手にマルチタスクをこなしていくかということについて、いくつか提案をしてみたいと思います。

なぜマルチタスクで失敗してしまうのか

「良いマルチタスクのこなし方」に必要なことを考える前に、私たちがマルチタスクによって失敗してしまうことがあるのはなぜなのかについて確認しましょう。

マルチタスクをやめてひとつのこと(シングルタスク)に専念することを勧めている書籍 “Singletasking: Get More Done - One Thing at a Time”の著者であるDevora Zack氏は、マルチタスクの正体は高速でスイッチを切り替える連続的なシングルタスクであると説明しています。つまり私たちの脳は、本来的に複数のタスクについて同時に考えることができず、複数のタスクの間で思考を高速で行ったり来たりさせることによって、疑似的にマルチタスクを成立させているというのです。

しかし、そのような切り替えには、当然多大な労力とストレスが伴います。タスクそのものに加え、「タスクからタスクへと切り替える作業」にまで酷使された脳は、あっという間に疲労を溜めてしまうばかりか、思考回路を混線させてエラーを吐きだしてしまいます。

「マルチタスクは良くない」と言われたり、実際にマルチタスクを実行すると失敗してしまったりする理由は、マルチタスクには上記のような欠点があるからなのです。

脳への負荷を軽減すれば、マルチタスクでも失敗しない

ここまで述べてきたことからお分かりいただけるように、私たちがマルチタスクによって脳を酷使しているとき、脳は能力が圧迫され、細かなこともミスなく作業できるほどの余裕はありません。ですから当然、タスクはひとつずつこなしたほうが、上手く処理することができます。とは言えタスクは次々降ってきますから、複数のタスクを並行して行うこともやむをえないでしょう。

そこで、何とかしてスマートにマルチタスクをこなす技を身に付けることが大切になります。それは、脳への負荷を最小限に抑えることで、複数のタスクを並行しても脳の性能を落とさないようにするということ。そのために押さえておきたいのは、「細分化」「可視化」の2つのポイントです。

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スマートなマルチタスクのコツ1. 細分化

タスクの「細分化」とは、タスクを細かくして「単純作業に落とし込む」ということです。

分かりやすい身近な例として、「朝の身支度」というタスクについて考えてみましょう。朝の身支度を限られた時間内でこなそうとするとき、ひとつひとつの作業をしながら「次はこれ、あれもしないと」としきりに考え続けることになります。

そこで、朝の身支度というタスクを細分化したらどうでしょうか。人によって多少の違いはあれど、「トイレに行く/顔を洗う/朝食を摂る/食器を片付ける/歯を磨く/寝間着を脱ぐ/スーツを着る/鏡で身だしなみをチェックする/持ち物をチェックする/家を出る」といったように細分化できると思います。実際には私たちは、これらいくつもの小タスクをまとめて「朝の身支度」と呼んでいるわけですが、それでも頭が疲れると思わないのは、余計なことを考えることなく小タスクを順々にこなし、朝の身支度という大きなタスクを完成させるという行為が、長年の間に身体に馴染んでいるからです。

ではこの流れを、仕事にも応用させてみましょう。さきほどの例を「プレゼン資料の作成」に置き換え、タスクを細分化してみてください。

「まずはデータを集めて……」「それを整理して……」「構成を考えて……」などと考える方もいるかもしれません。しかし、データの集め方や整理の仕方にもいろいろやり方がありますし、手順がありますよね。ですから、これではまだまだタスクは大きいのです。このような煩雑さは、マルチタスク中の脳には大きな負担になってしまいます。

理想は、例えば「○○についてのデータを××の方法で集める」といったようにやるべきことに一発で取り掛かれるくらいにまでタスクを細分化すること。そこまで細分化しておけば、「プレゼン資料を作る」以外の仕事が重なり忙しくなってしまっても、着実にタスクを片付けることができるようになりますし、慌てていて大事なステップを飛ばしてしまう、などのミスも減らすことができます。

更に、タスクを細分化すると、「これは先に片付けておけるぞ」というようなことや「これは自分で処理しなくても誰々に頼めそうだ」といった点が見つかり、その分仕事の軽減にも繋がることがあります。タスクの細分化には、タスクの効率化につながる様々なメリットがあると言えるでしょう。

スマートなマルチタスクのコツ2. 可視化

マルチタスクを上手にこなすうえでもうひとつ大切なことは、タスク管理において「可視化」を重視するということです。

皆さんはタスク管理をするとき、文字でつらつらとやるべきことを箇条書きにして、終わったら×をつけるというやり方をしていませんか? このやり方は、やるべき項目は把握できたとしても、実際の作業の進捗や重要度の管理の面で、あまり優れているとは言えません。何からこなせば良いのかの管理が曖昧になり、様々なタスクが渋滞を起こして作業が停滞してしまう、ということが起こってしまいがちになるからです。

そのような失敗を避けるために、マルチタスクを管理する方法として「タスクボード」を導入することをオススメします。

タスクボードとは、1枚のボードを「作業予定/作業中/完了」の3つに分け、タスクを書いた付箋などをその状態に応じて適切な場所に置くことで、タスクの進捗を管理するツール。主にプロジェクトメンバー内でタスクの進捗を共有するために使われるものなのですが、自分一人のタスク管理にも有効に使うことができます。

このツールの最大の効能は、複数のタスクをまとめて俯瞰することで、プロジェクトの進捗や作業の優先順位などが一目で分かるようになること。この効果は非常に大きく、タスクの進捗が一目でわかるだけでなく、優先順位が上がったものは上の方へ貼り替える、重要なものは特定の色の付箋を使うなどの工夫をすることで、現在の各タスクの状況が直観的に理解できるのです。

直観的に理解できるということは、その分脳のリソースを節約できるということですから、マルチタスクをしながらもタスクの海で溺れてしまうようなことがなくなりますよ。

クラウドを利用すれば、どこにいても1つのタスクボードにアクセスできる

タスクボードは、模造紙のような紙やホワイトボードなどを使いアナログ形式で作っても良いのですが、筆者が特におすすめするのはクラウド式のタスクボード。タスクボードをインターネット上で管理すれば、「いつどこにいても確認、修正可能」なタスクボードを運用することができます。

例えば、職場にアナログ式のタスクボードが置いてある場合、出先などでタスクの変更が生じても「職場に戻ったらボードを変えておこう」と思っているうちに修正するのを忘れたり、出先にいるときに重要なタスクが何であったかを確認できないというリスクが生まれます。その点クラウド式であれば、ボードを共有している全ての人が、いつでもどこでもタスクボードにアクセスすることが可能になり、利便性が飛躍的に向上するのです。

タスクボードを管理できるクラウドサービスは複数ありますが、筆者はその中でも、日本語に対応しているJootoというサービスを利用しています。ひと人でも複数人でも運用することができるので、理想的なマルチタスク環境を手に入れることができています。

しかしこの方法には欠点も考えられます。それは、いつでもタスクを管理できることでむしろタスクに縛られて「オフ」になる時間がなくなってしまう、ということ。それを回避するために、「夜9時から朝8時まではタスクボードを触らない」というようなマイルールを設けたり、そのルールをメンバーの中で共有しておいたりするような対策を考えることも必要かもしれません。

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次から次へと生まれるタスクをうまく処理するために、「細分化」と「可視化」によって、スムーズに仕事を進めていけると良いですね。

(参考) Entrepreneur|Forget Multitasking. Real Productivity Comes From Singletasking. リクナビNEXTジャーナル|間違ったマルチタスクが業務を崩壊させる!正しく作業効率を上げる4つのコツ Lancers Engineer|Web開発チームをタスクボードだけで見える化する 5つのコツ

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