後輩を指導することになったとか、部下を教育しなければならないとか、そんな立場に立ってはみたもののそもそもどうやって教えれば良いのかわからない。教えるのが下手だと思われるのもいやだけれど、教え方について詳しくしっているわけではない。そんな、新人上司、新人先輩のみなさんにお伝えしたい「教え方」の基本ルールです。
仕事を教えるときには「自分が経験したことだし、人に教えるのも簡単だろう」と思いがちですが、ちゃんと教えることは意外と難しいですよね。本当に相手が理解しているのかはわかりませんし、教えられた本人も理解しているようで本当は理解していなかったというパターンもあるでしょう。
後輩を育てるには、どういった指導が必要なのでしょうか?
教え方のルールの基本は「相手本意」であること
教え下手な人の典型例に、「相手の立場に立てない」というものがあります。できない人の気持ちを汲み取ろうとしないため、以下のような指導をしがちです。 ・頭ごなしに否定する ・論理を省いて説明する(わかっていると思い込む) ・早々に指導を諦める(自分でやってしまう)
特に、つい指導を面倒くさがって、やり方を見て覚えてもらおうとする人も多いのではないでしょうか? 仕事自体は自分で片づけられるので、一見すると効率的な方法ですが、後輩の成長を考えるとやはり非効率な気がします。
学生時代、先生が問題を解いているのを見ただけで、自分も解けるようになった人はほとんどいませんよね? 自分で解くためには、繰り返し問題集を解いて練習する必要があったはずです。
それと同様に、「背中で語る指導」だけでは、後輩はいつまで経っても成長できないことが多いでしょう。使える人材に育てるためには、仕事を見せるだけではなく、ちゃんと教えてあげることが必要なのです。
教えるためには「経験則」と「理論」の両方が重要である
元プロ野球選手の工藤公康氏も“相手本位の指導”の大切さについて説いています。
教えるということは決して軽いことではありません。その児童や学生を深く観察し、理解しなければなりません。投げ方や走り方、バットの振り方。野球の基本動作ひとつにしてもその子供なりの個性があるはずです。それをかつてプロだったからといって、自分の経験した知識の範囲で教えても良いのでしょうか?
(引用元:NIKKEI STYLE|“教えるプロ”になるために…… 野球評論家 工藤公康)
野球の指導者は、自身の経験だけを頼りに指導すべきではなく、人間の身体や医学的理論についても学び、指導を行うべきだということです。
例えば、バッターが飛距離を伸ばしたいとき、どの部位の筋肉をどう鍛えたらいいのか、元プロの指導者が指導できるでしょうか? もちろん、自身が飛距離アップのためにトレーニングをした経験はあるかもしれませんが、その経験が必ずしも当てはまるとは限りません。ゆえに、そういった指導は、スポーツ医学の専門家に任せた方が良いといえるでしょう。
このように「理論的な知識」は、指導に欠かせないものなのです。しかし、だからといってスポーツ医学の専門家だけでバッターの育成は難しいでしょう。実践経験のない人がいくら理論を駆使しても、実際のバッターボックスでの駆け引きや細かいバッティングフォームを教えることはできません。
そういった「生きた知識」を教えられるのは、実践を経験した指導者のみであり、それもまた「理論的な知識」と同じくらい重要なものだと言えるのです。
自身の経験を論理的に説明せよ!
仕事においても同じことが言えます。論理的に筋道立てて説明すること、自分の経験則に基づいて説明することの両方が必要でしょう。
プロ野球のように、それぞれの専門家がいれば分業することもできますが、仕事ではそうもいきませんよね。自分1人で全てをこなさなければいけないことも多いはず。
ゆえに、「自身の経験を理論化する」ことが必要となります。
自分が上手くいったやり方を教えて、後輩にその通りやらせても、また上手くいくとは限りません。そうではなく、どうして上手くいったのか、論理的にかみ砕いて説明することを試みましょう。
「生きた知識」を「理論的な知識」を元に教えることになるので、指導を受ける側は理解しやすいですし、実際の経験もあるので、それを実践に役立てることも容易になります。
筆者が数学の家庭教師をしていたときに、試験で完答数が少なく、点数が伸びなかった生徒がいたので実践してみました。
まずは、私の経験に基づいて「できる問題から確実に完答しよう」とアドバイスをしたのですが、それだけではなかなか完答の数は伸びません。本人に聞いてみると、手付かずの問題が残っていると落ち着かなくて、完答する前にそちらに手を出してしまうのだとか。
そこで、「マルチタスクの効率の悪さ」について解説して再びアドバイスしてみたところ、できる問題で確実に点数をとれるようになり、安定した点数が取れるようになったのです。
このように、経験則を論理に落とし込むことで、よりわかりやすい指導をすることができました。
*** どうやって論理に落とし込むかは指導者の腕次第ですが、練習を重ねれば上達していきます。もし後輩を指導する機会があったら、そういった準備を欠かさないようにしてみてください。
(参考) NIKKEI STYLE|“教えるプロ”になるために…… 野球評論家 工藤公康 5セカンズ|「教え方が下手だなぁ」と影で言われてしまう4つのタイプ Study Hacker|マルチタスクは非効率! 猪突猛進、超集中モードで “ひとつずつ片付ける” ための3つの工夫。