「人間は考えるために生まれている。ゆえに人間は、ひとときも考えないではいられない。」

哲学者パスカルの遺著『パンセ』に残されたこの言葉の通り、私たちは仕事やプライベートを問わず、日々さまざまな事柄について考えています。しかし皆さんの中には、考えが漠然としたところで停止してしまったり、いつの間にか堂々巡りに陥ってしまったりと、思考をもう一段深めることができずに悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、紙とペンを使って誰でも手軽に実践できる、思考を深めていくための「T字型思考法」というメソッドをご紹介します。アイデアの創出や自己省察など、いろいろな場面で役立てることができますよ。

「T字型思考法」とは

今回ご紹介する「T字型思考法」とは、「世界は誰かの仕事でできている。」(缶コーヒー「ジョージア」)や「バイトするなら、タウンワーク。」(求人メディア「タウンワーク」)といった、印象に残るキャッチコピーを生み出し続けている株式会社電通のコピーライター梅田悟司氏が、自身の著書『「言葉にできる」は武器になる。』の中で提唱している、思考を進めていくためのフレームワークです。

具体的には、頭の中に浮かんでいる漠然とした考えや思いを言葉として書き出したあとに、それを「なぜ?」「それで?」「本当に?」の3つのキーワードを使って拡張させていきます。下の画像のように、はじめの言葉を中心に「T」の形になるように思考が進んでいくため、梅田氏は「T字型思考法」と名づけたのだそう。

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(画像は書籍『「言葉にできる」は武器になる。』を参考に編集部にて作成)

この「なぜ?」「それで?」「本当に?」の3つの問いかけが持つ役割について、梅田氏は以下のように記しています。

この「なぜ?」「それで?」「本当に?」の3つの言葉には、それぞれ違った方向に思考を進めさせる役割がある。「なぜ?」は考えを掘り下げる、「それで?」は考えを進める、「本当に?」は考えを戻すことである。

(引用元:梅田悟司 著 (2016),『「言葉にできる」は武器になる。』, 日本経済新聞出版社.)

1つめの「なぜ?」では、その考えや思いが浮かんだ理由を自分自身に問いかけます。これにより、顕在化しづらい自らの思考の源泉や元来持っている価値観に迫ることができ、より本質的な課題について考えることができるようになるのだそう。

2つめの「それで?」では、その思いが実現されることでどのような結果が生まれるのか、結局何をしたいのか、といったことを考えます。本来の目的を思い出せてくれる契機となり、思考が正しい方向に前進するのを手助けしてくれます。

3つめの「本当に?」では、“はたして本当に意味があるのか?” “これは本当に本音なのか?” といった具合に、自分の考えに対して疑問を投げかけていきます。これにより、冷静になって考えを戻すことができると同時に、それまで考えが及んでいなかった新しい方向へと思考を巡らせていくことができるのだそう。

このように、思考の枝葉を広く深く伸ばしていくことにより、それまで漠然としていた考えが明瞭になったり、自分の中に眠っていた本当の思いに気づかされたりするのです。

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「T字型思考法」をやってみた

ここまでT字型思考法の概要を説明してきましたが、実際にどのようなものになるのかの具体例を見てみましょう。

まずは、「T」の字の中心に据える、漠然とした自分の思いや考えを言葉に表すところから始まります。例えば「ビジネス」をテーマに、自分が解決したい課題や願望を挙げていくとすると、皆さんはどのようなものを思い浮かべるでしょうか。

今回は例として、「英語を話せるようになりたい」を軸に、T字型思考法に則って思考を展開させていきます。

なぜ? → なぜ英語を話せるようになりたいのか?
それで?→ 英語を話せるようになるとどんな結果が生まれるのか? 結局何をしたいのか?
本当に?→ 本当に英語を話せるようになりたいのか? それは本当に自分の本音なのか?

このように問いかけていくと下の画像のようになります。

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(画像は編集部にて作成)

どのような内容になるかは人それぞれでしょうが、一度試していただくと、思考がどんどん展開されていくことが実感できるはずです。

「T字型思考法」で思いは明確になる

何かを一生懸命考えているつもりでもなかなか具体的な言葉にならない場合があるのは、自分の思考を正確にとらえられないことが原因のひとつであると考えられます。

一般に頭の中で考えるスピードは、普段の話し言葉の30~50倍と言われています。つまり、考えていることはとっても速いので、自分が今、何を考えているのか察知できていないというのが、本当のところです。

(引用元:伊藤守 著 (2002),『もしもウサギにコーチがいたら―「視点」を変える53の方法』, 大和書房.)

ただ頭の中で考えているだけでは、高速で流れ去っていく自分の思いをつかまえるのは非常に困難です。そのような意味では、自らに強制的に問いを投げかけて現れ出てきた言葉のひとつひとつを紙に書き下していくという作業は、自分の思いを正確にとらえるのに役立ち、必ずや思考に広がりや深みをもたらしてくれることでしょう。

その際、T字型思考法を実践する紙はあくまで自分用のメモであるため、誰かに見せる必要はありません。無理に整った言葉をひねり出そうとするのではなく、思いついたままに書いていきましょう。慣れないうちは少し時間がかかるかもしれませんが、それもまた自分自身の思考としっかり向き合っている証拠です。それまで全く思ってもみなかったことを思いついたり、自分の中で眠っていた考えが呼び起こされたりすることでしょう。

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スペインの哲学者であるミゲル・デ・ウナムノは、以下のような言葉を残しています。

考えることは己れ自身と親しむことである。

(引用元:名言コツコツ|[名言/ノート/手帳] 考えることは己れ自身と親しむこと

「なんだか思考が進まないな……」と悩んでいる方は、ぜひ一度この「T字型思考法」を試してみてください。自分自身と対話をしながら思考を展開させていくことで、自分の頭の中が晴れていく感覚が体験されるはずです。

(参考)
名言+Quotes|パスカルの名言
NIKKEI STYLE|「伝わる言葉」を生み出す「内なる言葉」
梅田悟司 著 (2016),『「言葉にできる」は武器になる。』, 日本経済新聞出版社.
PRESIDENT Online|緊急チェック!「あなたの思考は、深いか浅いか」
伊藤守 著 (2002),『もしもウサギにコーチがいたら―「視点」を変える53の方法』, 大和書房.
Study Hacker|それはただの、考えてる “つもり” ですよ? 「正しい思考力」を手に入れるための3つのトレーニング
名言コツコツ|[名言/ノート/手帳] 考えることは己れ自身と親しむこと