学びの記憶を呼び起こす! 東大生が実践する『紐付け学習』の思い出し効果

仕事やプライベートで、学んだことが必要になることってありませんか?

「仕事で突然グラフの解析を任されたけど、三角関数なんてもう何年もやってない…」 「家庭教師のバイトを引き受けたはいいが、受験問題を解説できる自信がない…」 「来月彼女と海外旅行に行くけど、英語は受験以来ちゃんとやってないけど話せるかな?」

こういったとき、また一から学び直すのは非効率ですよね。だからといって、当時の感覚を完全に思い出すのは難しいもの。

では、どうすればより早く昔の感覚近づけることができるでしょうか?

どうして忘れてしまうの?

そもそも、一度覚えたことを忘れてしまうのは、なぜなのでしょうか?

実は、人間が一度に記憶できる情報量には上限があるのです。そして、情報ごとに「優先度」がつけられており、優先度の高いものから優先して記憶されるようになっています。

また、情報の優先度は、脳内に出現する回数に比例するという性質があります。これは、スマホの容量みたいなものですね。容量が一杯になってしまって、何かを削除する必要があるとき、LINEのような、普段使う回数が多いアプリは優先的に残しますよね。逆に、昔ハマっていたけどもうやっていないゲームは、削除する対象となるでしょう。

英語をしばらく使わないと忘れてしまうのも同じことです。昔は毎日勉強していた英語も、使わない期間が空いてしまうと、脳内での優先度が他の情報に負けてしまい、削除対象となってしまうということ。このようにして、せっかく覚えた情報は忘れられてしまうのです。

思い出し=追体験

しかし、「忘れてしまう」といっても、何から何まで忘れてしまうわけではありません。難しい英単語を覚え直す時も、最初に苦労して覚えた時ほどの時間はかからないはず。

これは、以前の記憶を「追体験」しているために起こる現象です。追体験とは、他人がした体験を自分も体験することを指す言葉ですが、ここでいう「他人」は、過去の自分を指します。

情報の優先度を決める脳内に出現する回数は新たな情報のみに関するものではありません。以前の記憶を思い出すだけでも、それは出現回数としてカウントされます。

英単語を覚え直す時も自分がその英単語を使った記憶を追体験することで、「現在の視覚情報」と「過去の記憶」が同時に脳内に出現します。すると、一から覚えたときに比べて、脳内での優先度は何倍も上昇するのです。結果、覚え直すのにかかる時間は、当時よりも短くなります。

しかし、その優先度を当時よりも高くするに相当な時間を要します。自分が思い出せる経験の数は限られていますし、当時ほど勉強時間を確保できない人も多いでしょう。より早く覚えるためのは覚え方に一工夫加えることが必要になります。

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「紐づけ学習」で記憶を呼び覚ます

どうしたらより早く思い出せるのでしょうか? その答えは、「紐づけ学習」にあります。

人間の記憶は、単体で蓄積されているものではなく、他の記憶と結び付けられて蓄積されています。例えば、「給食」という単語を聞くと、「コッペパン」や「ソフト麺」が思い出されるでしょう。英単語も同じように、別の記憶と結びついて蓄積されているのです。

逆に言えば、英単語と結びついた記憶の方を呼び覚ますことができれば、それに紐づけされた英単語自体も脳内に想起されるので、定着がより一層速くなります。

どういった記憶と紐づけされて蓄積されているかというと、「当時それを勉強した環境」がほとんどです。ゆえに、その環境に近づけて勉強することが定着に有効な手段といえます。

1.時間を合わせる なるべく当時と同じ時間に勉強しましょう。晩御飯後や通学、通勤での電車内など、自分が勉強していた時間に合わせることで、当時の記憶を呼び起こしやすくなります。

2.手法を変えない 手法も同様に、同じものを用いるのが1番です。例えば、昔はシャーペンとノートを使っていたのに、今はタブレットを使っていたりはしませんか? もちろんそれぞれにメリットはありますが、それはあくまで新たに勉強を始める場合のこと。昔の知識を思い出すためには、あくまで同じ手法を選ぶ方が良いでしょう。

3.音楽を聞く 音楽を聴きながら勉強していた人は、その音楽をかけましょう。音楽は聴いていなかったという人は、自分がどういった環境で勉強していたかを思い出してみてください。ざわついた教室だったのか、静まり返った図書館だったのかを思い出し、それにあった環境で勉強を始めましょう。

*** 最近、筆者は大学受験の指導をすることになったので当時のルーティンで再勉強しています。せっかく一度覚えたことですから、サッと思い出して他のことに時間を使えるといいですね。

(参考) 清野躬行(2013),「繰り返し学習方式によるカクテルパーティ効果を伴う脳記憶系のニューロン科学的解釈:アナログ ディジタル的動作特性を持つニューロン ネットワークのHebb学習モデル」, 電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング, 113(148), 1-6. 東原義訓, 中村浩志, 赤羽貞幸, 漆戸邦夫(2005),「科学者の問いの連鎖を追体験するディジタル教材の開発」,教育実践研究:信州大学教育学部附属教育実践総合センター紀要, 6, 171-180. Wikipedia|ミラーニューロン

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