教養として「世界史」を学ぶ。大人におすすめしたい良書5選

「教養」として世界史を学びなおすべきだ――このような主張を耳にしたことはないでしょうか? 21世紀は「教養としての世界史」が注目を浴びている時代です。Study Hacker読者の皆さんも、興味をお持ちになったことがあるかと思います。

とはいえ、「世界史」と名のつく本が世にあふれている現在。興味を持ったとしても、ちょうどよい1冊を自分で選ぶのは難しいかもしれません。そこで今回は、世界史のなかでも特に「人気の高いジャンル」に焦点をあて、おすすめの5冊をご紹介しますね。

「教養としての世界史」ブーム

2009年、歴史書や教科書で知られる山川出版社が『もういちど読む山川世界史』を発行して大好評を博したのを契機に、大人をターゲットにした世界史の本が続々と世に出ました。出口治明『仕事に効く教養としての「世界史」』(祥伝社、2014年)はビジネス書として人気を集めたため、読んだ経験のある方がいらっしゃるかもしれません。

世界史を扱った海外の大著もよく読まれました。ジャレド・ダイアモンド著、倉骨彰訳『銃・病原菌・鉄』(草思社、2000年)は、生物学や言語学などの知見も取り入れて著された世界的ベストセラー。2010年に行われた朝日新聞の企画「ゼロ年代の50冊」において第1位を獲得しました。また、20世紀に活躍した歴史家による大作、ウィリアム・マクニール著、増田義郎・佐々木昭夫訳『世界史』(中央公論新社、2008年)は2012年にベストセラーとなりました。

「世界史ブーム」が落ち着いたあとも、本村凌二『教養としての「世界史」の読み方』(PHP研究所、2016年)など、「教養」を意識した世界史関連書籍の出版は続いています。上記のような本を手に取ったことがない方も、「1冊くらい読んでみようかな」と思った経験があるかもしれませんね。

「教養としての世界史」とは

これほどまでに「教養としての世界史」が注目される理由は何なのでしょうか? そもそも「教養」とは何を意味しているのでしょう。小学館の「デジタル大辞泉」では以下のように説明されています。

学問、幅広い知識、精神の修養などを通して得られる創造的活力や心の豊かさ、物事に対する理解力

(引用元:コトバンク|教養 太字による強調は編集部が施した)

では、世界史を学ぶことにより、心の豊かさや理解力が育まれるのでしょうか? 上述した『仕事に効く教養としての「世界史」』の著者であり、ライフネット生命保険株式会社の創業者にして立命館アジア太平洋大学の学長でもある出口治明氏は、歴史について、人間を知るための「最良の教科書」だと話しています。

人間の脳はこの一万年間、まったく進化してないと言われています。そうすると、今も昔も考えることは一緒です。(中略)人間がこれまでやってきたことは形を変えて何度も再現されています

(引用元:Book Bang|出口治明・インタビュー 歴史はたった一つ 『「全世界史」講義 Ⅰ古代・中世編/Ⅱ近世・近現代編 教養に効く!人類5000年史』刊行記念 太字による強調は編集部が施した)

誰かの行動が理解できないということは、歴史の見方がまだ甘いということ。同じ人間なんだから、理解できるはずですよね。 (中略)すこしリテラシーを上げて、いろんなものを結びつけて世界を全体としてとらえるようになれば、いろんなことに気がつくようになりますよ。

(引用元:文春オンライン|出口治明「歴史の本を出すきっかけは、ツイッターでした」 太字による強調は編集部が施した)

つまり、歴史に登場する過去の人間の行動や考えを知ることは、現在の人間を理解することにつながるのですね。そして、グローバル時代を生きる私たち現代人が理解しなければならない相手は、日本人だけではありません。そのため、日本史だけでなく世界史を学ぶことで、より多くの人間を理解しやすくなるのです。これが「教養としての世界史」がもたらす効能だといえるでしょう。

世界史のおすすめ書籍5選

世界史における「人気ジャンル」は何か

さて、一口に「世界史」といっても、地球全体の歴史を俯瞰(ふかん)的に眺めたものと、諸外国の歴史を集めたものの2種類があります。前者の例で有名なものが、上で挙げた『銃・病原菌・鉄』。ヒトやモノの動きを大局的にとらえるため、そのダイナミックさが好評です。

一方で後者の「世界史」は、地域や時代によって細かく区分されています。前者のダイナミックな「世界史」にあまり興味が持てない方でも、特定の地域や時代が「お気に入り」になるかもしれません。では、「世界史」のなかにはどのような地域や時代があるのでしょうか? 特に人気なのはどの「ジャンル」なのでしょうか?

実をいうと、「世界史」における人気は偏っています。2017年11月、インターネット調査を手掛ける株式会社クリエイティブジャパンと世界各国の歴史料理を再現するプロジェクト「音食紀行」が共同で、20歳以上の約5,400人を対象にアンケートを実施しました。

その結果によると、「世界史に興味はありますか?」という設問への回答は、「ある」が19.1%、「どちらでもない」が29.9%、「ない」が51.0%。「ある」と答えた人に「好きな年代」を尋ねたところ、最も多かったのが「中世(5~14世紀)」の30.2%、次が「近代(17~19世紀)」の21.1%でした。そして、「最も興味のある地域」として57.2%もの人に選ばれたのは「西ヨーロッパ」。つまり、世界史のなかで最も人気のある地域・時代区分は「西欧中世」ということになりますね。

なぜ西欧中世の歴史に興味を持つ人が多いのでしょう? さまざまな理由が考えられますが、そのひとつにスマートフォン向けRPG『Fate/Grand Order』(FGO)の流行が挙げられます。2015年にリリースされた同ゲームは、歴史や伝説上の人物が多数登場する大ヒット作。2018年2月時点で1,100万回以上ダウンロードされており、Twitter上で頻繁に話題にされた「Twitterトレンド大賞」として、2017年の「ゲーム・オブ・ザ・イヤー」および「ワード・オブ・ザ・イヤー」第1位に輝きました。同ゲームに登場するキャラクターには、西欧中世に由来する人物が特に多いため、ゲームをプレイして西欧中世の歴史に興味を持つ人が増えたのかもしれません。

ちなみに上記のアンケートには、文化史・政治史・経済史のなかでどれが好きかという設問があり、それぞれの結果は42.6%、37.3%、20.1%という内訳でした。文化史が最も人気だとはいえ、人気はある程度分散しているようです。

西欧中世に関するおすすめの良書5冊

上記のアンケートにより、世界史のなかでも特に「西欧中世」の人気が高いことがわかりました。一口に西欧中世の歴史といっても、英国やドイツ、イタリアなど、言語や文化の異なるさまざまな国を含んでいますし、およそ1000年間もの時間を扱います。現代の先進7カ国(G7)のうち4カ国の長い歴史を知ることは、世界史を学びはじめるにあたって、大きな一歩となるでしょう。それでは、文化史に焦点をあてているものを中心に、西欧中世に関するおすすめの良書5冊をご紹介しますね。

『図説 騎士の世界』

西欧中世といえば、思い浮かぶのが華やかな「騎士」の存在。文学の重要なモチーフであるだけでなく、政治や経済にも大きく関わっています。そんな彼らがどのような生活を送っていたのかがよくわかる1冊。当時に制作された絵画や彫刻などのカラー図版が豊富なので、楽しみながら読み進めることができますよ。

『アーサー王の死』

騎士に興味を持ったら、その代表的な文学作品にも触れてみてはどうでしょうか? なんと15世紀に編集された物語群ですが、現代のベストセラー小説もかくやというほどの、わくわくする冒険譚(たん)です。一度読みはじめたら、ページをめくる手が止まらなくなってしまいますよ。

アーサー王の死 (ちくま文庫―中世文学集)

アーサー王の死 (ちくま文庫―中世文学集)

  • 作者:トマス・マロリー,William Caxton,ウィリアム・キャクストン,厨川 圭子,厨川 文夫
  • 筑摩書房
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『中世イタリア商人の世界』

現在は世界遺産の美しい街並みで知られるフィレンツェで14世紀に活躍した商人、ジョヴァンニ・ヴィッラーニが残した記録をもとに、中世イタリアにおける商人の生活や価値観、文化を生き生きと描いています。イタリア史の研究者による専門的な内容ながら、読み物としての面白さが高く評価され、1982年にサントリー学芸賞を受賞しました。

『15のテーマで学ぶ中世ヨーロッパ史』

研究の第一線で活躍する13名によって書かれた、豪華な入門書。政治や経済だけでなく、衣食住や芸術にも多くの紙幅が割かれています。まずは手にとってみて、自分の好きなテーマから読んでみるとよいでしょう。1000年も前のことが、研究によってこれだけ詳細に解き明かされていることに、驚きを禁じえないはず。

15のテーマで学ぶ中世ヨーロッパ史

15のテーマで学ぶ中世ヨーロッパ史

  • 作者:宏一, 堀越,尚志, 甚野
  • ミネルヴァ書房
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『ハーメルンの笛吹き男 伝説とその世界』

13世紀にドイツの小さな町で起きた、大勢の子どもが突然姿を消してしまうという事件――ここから生まれた「ハーメルンの笛吹き男」という伝承は、聞いたことのある方が多いかもしれませんね。西欧中世に関して数十もの本を残した著者が、当時における町の様子や「ネズミとり男」について考察を重ね、事件の真相を追います。

***
「世界史」のなかでも特に人気のあるジャンル「西欧中世」の良書5冊をご紹介しました。現代日本からは遠く離れた世界のこと、私たちとは何の関係もないかもしれません。ですが、本を読んで自分の知らなかった世界に没入することによって、想像力や読解力が養われることは間違いありませんよ。

(参考)
ValuePress|【中世ヨーロッパが熱い!】世界史に関するアンケート
東洋経済オンライン|大人の教養は「教科書」で身につけよう!
日本経済新聞 電子版|仕事に効く教養としての「世界史」 出口治明著 ビジネス書ランキング2位
日本経済新聞 電子版|文庫 「世界史 上」が1位 ベストセラー
現代ビジネス|著名人10人が薦める「私の人生を変えた、この1冊」
サントリー文化財団|清水 廣一郎『中世イタリア商人の世界 ―― ルネサンス前夜の年代記』
Book Bang|出口治明・インタビュー 歴史はたった一つ 『「全世界史」講義 Ⅰ古代・中世編/Ⅱ近世・近現代編 教養に効く!人類5000年史』刊行記念
文春オンライン|出口治明「歴史の本を出すきっかけは、ツイッターでした」
コトバンク|教養
ねとらぼ|「Twitterトレンド大賞2017」が発表に 最も流行したアニメに「けものフレンズ」、ゲーム部門では「Fate/Grand Order」など

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