仕事の質には一定の評価があるけれど、迅速さに欠けるとお悩みの方は、完璧主義、あるいは論理的思考になり過ぎているかもしれません。仕事の効率を上げたいなら、取り入れるべきは「優先順位主義」と「ヒューリスティクス」です。その理由を説明しましょう。

「完璧主義」と「過度な論理的思考」は効率を下げる?

ミスを恐れる完璧主義の弊害

完璧主義は、決して悪いことではありません。細部までこだわるので成果物の質が高く、ミスも少ないはず。しかし、そのぶん多くの時間を要してしまいます。臨床心理士から作家に転身したアリス・ボーイズ氏は、完璧さに執着するあまり陥りがちな、落とし穴を5つ挙げています。

1.意思決定や行動を起こす前に悩みすぎて時間がかかる
2.サンクコスト(埋没費用=取り戻せない時間・お金・労力)を取り戻そうと非生産的に時間を使う
3.新たに挑戦する際、失敗を避けようと完璧に取り組みすぎて、結局チャンスを逃す
4.自分の高い基準を周囲にも押しつけるため、周囲と「溝」が生まれ孤立する
5.一度の失敗をいつまでも引きずり、結局現行の仕事のパフォーマンスを低下させる

また、完璧を求めるあまり何でも抱え込んでしまうため、効率を下げてしまうことが多いはずです。

論理的思考に偏りすぎる弊害

「論理的思考(ロジカルシンキング)」とは、物事を整理・分析し順序立てて考えること。また、筋道を立てて相手にわかりやすく説明することです。ビジネスパーソンにとって、必要不可欠な思考術といわれています。

しかし、何もかも論理的に考えていると、膨大な情報を処理しきれないことがあります。正しい分析を行うためには、すべてを正確に把握する必要があるからです。また、不確定な要素が混じっていた場合、論理が根本から揺らいでしまいます。

ブラック・スワン理論をご存知ですか? ありえない事態が発生し、予測できないほど強い衝撃を与えることです。白鳥しか知らない人類が、黒鳥を目にして衝撃を受けたことから、金融市場などで使われるようになりました。論理的思考では、これまで100%白鳥しか現れていなければ、この先も100%白鳥しか現れないと考えるため、黒鳥の出現は予測できません。

それゆえに、論理的思考によって効率よく仕事を進めようとしていたにもかかわらず、不確定な要素が混入したり、予測不可能な事態が起こったりすると、それを正すために余計時間がかかってしまうことがあります。

そこで、「優先順位主義」と「ヒューリスティクス」が役立つわけです。

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仕事効率を上げる「優先順位主義」と「ヒューリスティクス」

優先順位主義になる

完璧主義の落とし穴にはまらないよう、いま自分はどこへ向かっているか、何を一番優先させたいかを考えましょう。つまり、「優先順位主義になる」ということです。優先順位が低いことは気にせず、優先順位が高いことだけに集中すれば、ゴールへの近道になります。そして、「優先順位が高いものをクリアできれば合格」と考え、それを成功の積み重ねにして“慣れていく”わけです。

例えば筆者が、「一般向け介護情報メディアに掲載する、ある行政の取り組みについて書かなければならない」とき、その情報量はあまりにも膨大です。それをすべて把握し、限られた時間と文字数で書くことは不可能でしょう。

そこで筆者が優先すべきは「決めた時間内に終えること」と、「情報を集約しわかりやすく書く」ということです。もしも、「もっとこの内容を調べて、詳しく書き込めば完璧なのに」という気持ちが起こっても、それを気にせず書き進めることで仕事を効率よく進められます。

ヒューリスティクスを使用する

最終的な判断や評価まで、短い時間で一気に到達する思考の近道を「ヒューリスティクス」といいます。いわゆる「経験則」のこと。実は、必ずしも正しい答えを導き出せるわけではないので、このヒューリスティクスによって生じる認知上の偏りを認知バイアスといいます。

しかし、即座に判断が求められる場合には、論理的思考よりも非常に有効なのだとか。そのため、アリス・ボーイズ氏も完璧主義による自滅を防ぐため、この方法をすすめています。また、インテリジェンスの専門家である北岡元氏は、「膨大な情報の中からパターンを瞬時に認識し、分析するには(ヒューリスティクスが)欠かせない」と説明しています。

それに、「優先順位主義」と「ヒューリスティクス」には、深いつながりがあるのです。

経験則が優先順位を決めてくれる

アリス・ボーイズ氏の個人的なヒューリスティクスは、「100ドル未満の価値しかない仕事より先に、100ドル以上の価値のある仕事をする」なのだとか。つまり、同氏の経験則は、優先順位をつけることに役立っています。

また、前項で示した筆者の例に関しても、「情報を集約する」「わかりやすく」は、経験則に頼ることで判断するほうが時間を省略でき、なおかつ良い結果を導き出せる可能性が高くなります。なぜならば、その経験則は「良い経験」から得たものだから。そのためにも、あらゆる経験を日々アップデートしていくことが大切です。

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正確さが求められる仕事や、とても重要な判断や評価をしなければならない場合、あるいはプロジェクト全体で情報を共有しなければならない場合などは、「完璧主義」や「論理的思考」が必要不可欠です。

しかし、時間が限られている場合、あるいは早急に判断し進めなければならない場合や、「どうも仕事が速くならない」と感じたときには、ぜひ「優先順位主義」と「ヒューリスティクス」を活用してみてください。

(参考)
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|完璧主義による自滅を防ぐ方法
タウンワークマガジン|完璧主義者の特徴・原因と治し方|頑張りすぎて疲れてしまう人
Wikipedia|ヒューリスティクス
プレジデントオンライン|米軍が本気でニュータイプ育成に挑むワケ
U-NOTE|正しさだけでは人は動かない!ロジカルシンキングのみで「プロジェクトマネジメント」を行うことの弊害
Think!編集部編集(2011),『Think! 2011 Winter No.36』,東洋経済新報社.