うつ病になる原因は諸説ありますが、そこには性格が大きく関係しているといわれます。その中でも、うつ病の原因となりやすい性格が「完璧主義」や「生真面目」。

結果が重視され、完璧であることが理想とされるこの世の中。気が付かないうちにストレスが溜まっていき、心身に不調を来すというのは、だれにとっても他人ごとではありません。今回の記事では、考え方を変えることで憂鬱な気分までも変える方法を紹介します。

「イヤな出来事」は存在しない!?

「色即是空」という言葉をご存知でしょうか。これは般若心経にも登場する、仏教の概念の一つです。「色とはすなわち空である」。わかりやすく言うと、人間の目に映る世界の色は、色自体として存在するのではなく、人間がそれを色と認識しているに過ぎない、ということです。

なんとも哲学的な考え方ですが、これは人間がストレスを感じるメカニズムによく当てはまるのです。人は何かが起きると、それまでの人生の中で培った考え方によって「解釈」を行い、それが自分の中でどんな意味を持つかを決定します。つまり、最初からいやなことというものは、実は存在しないということ。

うつ病になりやすい性格の人は、起きたことを、自分にとってつらい方に解釈する思考の癖を持っているとされます。そして、完璧主義の人の多くが持ち合わせているのが、以下で紹介する「全か無か思考」です。

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全か無か思考とは

「この試験に失敗してしまったら、私の努力はすべて無駄になる」。あなたは、こんな風に考えた経験がありませんか。その試験に失敗したって、次の試験には今までの勉強が生きてくると思えば、この考え方は誤っています。このように、白か黒しかないという考え方が、全か無か思考なのです。

神経症などの治療においては、人間がストレスを生む要因には、10種類の認知の歪みがあるとされます。その中の代表的なものの一つが、この「全か無か思考」なのだそうです。

また、心理学の概念に「スキーマ」という物があります。自動思考とも訳されるこの言葉の意味は、簡単に言えば「思考のショートカット」。これは、歪んだ考えについても同様に働きます。今までの人生経験から、特定の考え方の癖がつき、次第に何に対してもそのように考えてしまう。こうして、「全か無か思考」のような歪んだ考えは生まれます。

しかし、「全か無か思考」をしがちであったとしても、悲観することはありません。歪んだ思考に気付いたら、それをただせばいいのです。

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歪んだ認知は自分で治せる!

神経症やうつ病の実際の治療においては、カウンセラーが患者の抱える「歪み」を見極め、その次にそれを合理的な考え方に導く、という手段がとられます。実は、そのやり方は、自分一人でできてしまうものでもあります。

まず、動揺したときに、そのとき考えたことをそのまま紙に書いてみてください。そして、そこに潜んでいる思考の誤りとは何なのかを考えます。最後に、どう考えるのが合理的かを書くのです。一見、効果を疑いたくなるような単純な作業ですが、これが絶大な効力を発揮します。

最初のうちは効果が感じられないこともあるかもしれませんが、何度も繰り返していけば、自分がどういうときにどう考えるかがパターンとして見えてくるようになります。そうなればしめたもの。だんだんと、認知の歪みが矯正されていき、合理的に考えられるようになっていきます。

完璧主義を直してしまったら、完璧を目指そうという気がなくなり、成果が上がらなくなる、という風に考えてしまう人もいるかもしれません。しかし、ストレスは脳のワーキングメモリを圧迫し、能率を下げます。つまり、認知の歪みを矯正していけば、完璧主義であり続けるよりも能率よく生活ができるのです。

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いかがでしょうか。競争に勝って、その成果をもとに評価が下されるこの社会。つい偏った考え方になりがちですが、たまには心の声を聞いて、その歪みを直すことも大切です。

参考文献
デビッド・D・バーンズ著、野村総一郎・夏苅郁子・山岡功一・小池梨花・佐藤美奈子・林建郎訳(2004),『いやな気分よ、さようなら―自分で学ぶ「抑うつ」克服法』,星和書店.