疑問文を眺めると、英語の語順の究極のルールが見えてくる

皆さんこんにちは。英語職人・時吉秀弥です。今回も英文法から見える「英語を話す人の心の風景」を一緒に探検しましょう。

今回のお話は、言ってみれば……英語の「最終奥義」です(連載3回目にして!)。
まぁ、とは言え、前回のコラム(英語職人・時吉秀弥の英文法最終回答 第2回「英語らしい表現・日本語らしい表現」)の「外から自分を眺める英語」というのも英語という言語の全体像を捉えた「最終奥義」の一つです。

しかし今回のお話は、英語を学ぶみなさんに、さらにグッとくる奥義になるかもしれません。
なぜなら今回は語順の奥義をお話しするからです。英文を組み立てるときに一番厄介なのが語順ですものね。
お話の内容は、
「英語の語順には二つのルールしかない」
というものです。そして今回は一つ目のルールについてお話しします。

This is a pen. が疑問文になると、なぜ Is this a pen? という語順になるのか?

英語の語順には、究極的には二つのルールしかありません。
その一つ目のルールは「英語は言いたいことから先に言う」というものです。

実はこれがわかると、なぜ英語に疑問文という語順が出現するのかがわかります。
さらには、疑問文の語順というのは本当は疑問文のためにあるのではない、ということまでわかり、今までピンとこなかった「英文の倒置」の気持ちがわかるようになります。スティーブ・ジョブズじゃないですが、「点の知識が繋がり、線になる」のです。
では一緒に見ていきましょう。

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「心のスポットライト」

This is a pen.「これはペンです。」

……想像してみてください。皆さんは今、見ようによってはペンに見える、でもペンではないような、よくわからないものを手に持っています。
「何なの、これ? これってペンですか? ペンじゃないんですか?」という気持ちが湧いてきます。

さて突然ですが、ここでクイズです。
そういう気持ちが湧いてきたとき、あなたの気持ちの「スポットライト」が当たるのは(つまり、一番意識が向かうのは)This is a pen. のうち、this という言葉? is という言葉? それとも a pen という言葉? 一体どれでしょう?

いかがですか?
「そりゃ、ペンだろう。ペンかどうかを尋ねているんだから。」と思った方も結構いるかもしれません。
しかし、英語の疑問文ではそうは考えていないようです。

Is this a pen? というのは、Yes, it is. もしくは No, it is not. で返答できることでわかるように、yes-no questionです。つまり、疑問の核心は「これはペン『です(is)』なのか、それともペン『ではないです(is not)』なのか、一体どちらなのか」なのです。
従って話者の「心のスポットライト」は This is a pen. のうち、is という言葉に当たるのだ、ということがわかります。

で、ここで二つある英語の語順の究極のルールの一つ目が適用されます。「言いたいことから先に言う」です。
This is a pen. のうち、疑問の気持ちの焦点が当たっている is が先に「言われ」て、Is this a pen. という言い方が生まれるのです。

否定の倒置

実は Is this a pen、だけでは厳密には疑問文とは言えないのです。
話すときには Is this a pen?(⤴︎)というふうに語尾が上がり、書く場合には語尾にクエスチョンマークをつけることで初めて疑問文として成立します。
なぜ疑問文の語順だけでは疑問文だとは言えないのでしょう?

それは、この語順の正体が「動詞を強調する文を作るための語順」であり、純粋に疑問を表すために存在している語順というわけではないからです。
この「動詞強調語順」は、クエスチョンマークをつけることで、疑問文として利用されているだけなのです。
ということは、当然、他の表現形式にも利用されている、ということです。その一つが、否定の倒置です。

Never have I seen such a man. 「そんな男、見たこともないよ。」

この文は、I have never seen such a man. を倒置して出来上がったものです。
一体どういう気持ちがこのような倒置を生み出したのでしょうか?

まず、この文の先頭には never が来ています。
通常の語順を無視してわざわざ never を文頭に出している、ということは、「never から先に言いたい」つまり、「一回もないんだ(never)!」という気持ちを強調したい! という意識が働いているということになります。

では、ここでの never は一体何を否定しているのでしょう? つまり、「何が一度もない」のでしょう?
……そうです。「見たこと(have seen)」が一度もないわけです。
というわけで、never が強調されるならば、never が否定する have seen も一体となって強調されるわけです。
have seen は動詞ですから、これを強調するなら「動詞強調語順」、いわゆる「疑問文の語順」の出番です。そこで、never の後ろに have I seen such a man という疑問文語順が続き、Never have I seen such a man. という文が出来上がるわけです。

よくある間違った思い込みに、「否定語が文頭にあれば、必ず倒置が起きる」というのがありますが、そういうわけではありません。例えば、

No student could understand his lecture. 「彼の講義を理解した生徒は一人もいなかった。」

という文では、no という「ゼロ」を意味する全否定の言葉が文頭にあるにもかかわらず、倒置は起きていません。なぜだかわかりますか?
……この文の no という言葉が何を否定しているのか、考えてみてください。

そうです。no は「生徒が一人もいない」ということを述べています。つまり、student という主語を修飾しているのがここでの no の働きです。
no が動詞を修飾して文頭に来ているのなら、no とともに動詞も強調され、倒置が起きますが、今回はそうではありませんので、倒置も起きません。
これも、いわゆる「疑問文の語順」と呼ばれているものの正体が「動詞強調語順」であることの一つの証拠だと言えます。

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疑問詞が文頭に来る理由。疑問詞の疑問文と感嘆文が似ている理由

これがわかると疑問詞がなぜ文頭に来るのかの理由もわかります。
例えば「これは何?」が Is this what? ではなく、What is this? になるのも、whatが一番尋ねたいことだからです。
「彼はどのくらい金持ちなの?」も、Is he how rich? ではなく、How rich is he? となります。「どれくらい(how)?」だけではなく、「どれくらい金持ち(how rich)?」で一つの意味のかたまり、つまりワンセットの情報なので、how rich がまとまって最初に来ます。

ここで、How rich is he? の is he の語順を疑問文ではなく、肯定文の語順に(つまり、he is に)してみましょう。

How rich he is! 「彼はなんて金持ちなんだ!」

という感嘆文になります。感嘆文というのは大きな驚きを表したいのですから、驚いた内容が真っ先にやって来るわけです。
当然のことですが、真っ先に尋ねたい部分を先に言う How rich is he? という疑問文と、驚いた部分を真っ先に言う How rich he is! という感嘆文、語順が似ているのは偶然ではないのです。
このように、疑問文だけでなく感嘆文や関係代名詞などでも疑問詞がかたまりの先頭に来るのは、すべて「言いたいことから先に言う」というルールが働いていると考えられるのです。

次回は「究極のルール」の二つ目を

では、ここで一つ問題です。
This is a pen. が疑問文になると Is this a pen? になるのはわかりました。
では、なぜ He plays tennis. が疑問文になると、Play he tennis? とはならずに、Does he play tennis? になるのでしょう?

次回は、この謎を解きます。ここでは二つある英語の語順の究極ルールのうちの、残りのもう一つのルールを使うことになります。お楽しみに。