「100%同じ意味の書き換え」は存在しない

こんにちは、英語職人・時吉秀弥です。

中学のとき、英語の授業で “ will = be going to ” とか “ can = be able to ” とか “ must = have to ” といった「書き換え」を習った記憶をお持ちの方は多いと思います。私もとりあえずテストに出るから覚えました。「同じ意味なら、どっちか1個だけあればよくない?」という気持ちを抱きながら……。

しかし、例えば認知言語学の世界では「表現が違えば必ず意味も異なる」という原則的な考え方があります。実際に will と be going to は似てはいますが、同じ意味ではありません。見える風景が違うのです。だから、英語のネイティブスピーカーはこれらの表現を使い分けます。can と be able to 、must と have to もそうです。

それではいったいどんな気持ちが起きたら使い分けが発生するのでしょうか。今回は一緒にそれを探っていきましょう。

will と be going to の風景の違い

第9回コラム「will は『未来』じゃない? ではその正体とは?」では、“will は「未来」という意味の言葉ではない” というお話をしました。一見未来の話をしているように見えても、実際は「~しようと思う、~するつもりだ」という「意思」と、「~だろうなぁ」という「予想」がその正体です。そして be going to も will と同様に「意思」と「予想」を表すことができますが、その風景は少し違います。

まずは「意思」における will と be going to の違いを見てみましょう。will は「今決めた予定」などと言われることがあるのですが、ご存知ですか? 一方で be going to は「すでに決まっている予定」という言われ方をすることがあります。一体どういう風景の違いがあるのでしょう?

まず will ですが、第9回で説明した通り、「心が揺れて、パタンと傾く」というのが根っこの意味です。つまり「どうしようかな、と考えた(=心が揺れる)結果、よし、こうしよう、と決める(=心がパタンと傾く)」というのが、will が表す意思ということになります。例えば、予定が早く終わって時間が空いて、さぁ今からどうしようかなというときに、

Well, I think I will go home. 「じゃあ、家に帰ることにするよ。」

と『決心』する感じが出るのです。これが「今決めた予定」ということです。今心の中で決めたことなので、よく I think と一緒に使われます。

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次に be going to を見てみましょう。be動詞 +~ing になっていることでわかる通り、進行形です。進行形というのは「動作の途中」というのが根っこの意味です。つまり、be going to なら文字通り「~へ向かっている途中」という意味になります。例えば、

We’re going to move next month. 「私たち、来月引っ越すつもりなんです。」

と言っているときには、直訳すると「私たちは『来月引っ越す』というところへ向かっている途上にあります。」ということで、すでに引っ越しの意思決定はなされていて、今は予定が実行される未来に向かっている途中なのだ、という感じがします。だから、意思の be going to は「すでに意思決定された予定」と言われることが多いのです。

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今度は「予想」の will と be going to を見比べてみましょう。will の「予想」はやはり「心がパタンと傾く」ことから来ていますから、「こうなるだろうな」と心の中で思っているだけです。一方で be going to では「そうなることに向かっている途中にある」ことを表しています。すると「切迫感」を表すシーンで違いがはっきりと出てきます。

例えば「雨が降るだろう」というのを比べてみましょう。天気予報では It’s going to rain. よりも It will rain. のほうがよく使われると言われます。なぜなら衛星写真などの気象情報を集めて、天気がどうなるのか「判断」するからです。判断によって心がパタンと傾き、「雨になるでしょう。」という感じです。まだ「心の中で思っているだけですよ」ということでもありますので、現実感、切迫感はそれほど強くありません。

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一方これが It’s going to rain. になると、「雨が降ることに向かって、今進んでいるよね。」ということですから、もう間もなく、という感じがより強まるわけです。

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can と be able to は過去形にすると違いがはっきり出る

can の根っこの意味は「実現を邪魔するものはない」ということです。そこから、「~することができる」という「能力」と、「~でありうる、~が起きうる」という「可能性」という意味が出てきます。

can のポイントは「実際にやったかどうかはまた別の話だ」ということです。オバマ大統領がかつて言った “Yes, we can.” は「やろうと思えばやれる」と言っているだけで、実際にやったとは言っていないわけです。This can happen to you. も同様で「これは君にだって起きる可能性はある。」と言っているだけで、実際に起きたとは言っていません。一方、be able to は「やってみたら実際にできる、できた」ということを表します。can が「まだ起きていないことを話す」のに対して、be able to は「できた、成功したという結果」を表すわけです。この違いは過去形の肯定文ではっきりと現れます。

I could swim across the river when I was ten. 「10歳の時、私はその川を泳いで渡ることができた。」
(実際に泳いだかどうかは別として、やろうと思えばできるだけの能力があった。)

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I was able to swim across the river in the storm. 「嵐の中、私はその川を泳いで渡ることができた。」
(やって見たら、実際にできた。)

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ただし過去形の否定文では、「やろうと思ってもできなかった(couldn’t)」と「やってみたができなかった(was / were not able to)」というふうに結局どちらも「できなかった」ということなので、両者に大きな違いは生まれません。また現在形は基本的に「いつもそうだよ」ということを表す時制なので、肯定文でも「いつもやろうと思えばできる(can)」と「いつもやってみたらできるよ(is / are able to)」というふうに大きな違いは生まれません。大きな違いが生まれない場合は、be able to よりも can 、could が圧倒的に多く使われます。わざわざ be able to を使うと、かしこまった固い感じが出てくるからです。

must より have to が5倍多く使われる。その理由は?

will と can を見て、助動詞とは何か、ということが見えた方もいらっしゃるかもしれません。助動詞の正体は「動詞を助ける」ということではありません。「心の中で思っているだけで、実際の話ではないよ」ということです。will は「だろうと思っている」「するつもりだと思っている」。can は「できると思うよ」「ありうると思う」。may なら「かもしれないと思う」……、などなどです。

ちなみに be going to や be able to 、have to などは「書き換えに利用される、似た意味の表現」であって、助動詞ではありません。つまりこれらの言葉には助動詞の持つ「心に思う」感は存在しないのです。

さて、それを頭に入れたうえで must と have to を見ていきましょう。

must は「絶対」が根っこの意味で、そこから「絶対やれよ → ~しなければいけない」、「絶対そうだ → ~に違いない」というふたつの意味が生まれます。must が「~しなければいけない」という意味のとき、「絶対やれよ! と私は心の中で思っている」というところまで意味します。must が「心の思い」を表す助動詞であることもあいまって、強い主張、意見を押し通す気持ちを表していることがわかります。一方で have to の have は、どこまで行っても「持っている、抱えている」という意味しかありません。したがって have to は「事情を抱えているから、やらなきゃしょうがないじゃない。」という意味を持ちます。

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例えばデートで夜遅くなって、帰りたがらない彼女に彼が以下のことを言うとしたら、どっちのほうが角が立たないか、もうわかりますね。

You must go home. 「ホント、絶対帰らなきゃダメだよ。」
→話し手の主張、意見。毅然とした強い態度が表れている。

You have to go home. 「帰らないとしょうがないじゃない。」
→帰ってほしいと思っているわけじゃないかもしれない。でも色々事情もあるから帰らないとまずいじゃない。しょうがないじゃない。

このような違いがあるため、アメリカで行われたある調査によると、must に比べて角の立たない have to の方が5倍も多く使われているそうですよ。