みなさんこんにちは。英語職人・時吉秀弥です。

今回は、ある受験問題を通して、
1. 比較の情報構造
2. oneという代名詞
3.「~の」を意味する形容詞と of と所有格の ’s の違い
の3つの項目について説明していきます。

以下の問題は平成6年の大学入試センター試験で出題されたものです。なかなかの難問とされていて、予備校の文法問題のテキストにも必ず出てきますし、ネットでも質問の掲示板にたびたび登場するものです。しかし、正解の根拠を正確に説明できているなと思えるもの、例えば of の役割をきちんと説明できているものは、残念ながら(私の知っている限りでは)見たことがありません。

今回の記事を読むことが、みなさんにとって、「何番が正解か」ではなくて「なぜそれは正解で、これは不正解なのか」をきちんと説明しようとするひとつのきっかけになってほしいと思っています。特に中~上級者の方で、さらに高い得点を目指したい方。「なんとなく」をなくし、正解の理由を論理的に説明する訓練が、現在のあなたの壁を打ち破る重要な鍵になります!

Can you tell the difference between rice grown in Japan and (  ) ?
「日本で栽培された米とアメリカの米との違いがわかりますか。」
1. American one  2. American rice  3. one of America  4. rice of America

(平成6年センター試験:英文の日本語訳は筆者が加えたもの)

上記の問題、正解は2番です。

まずは選択肢の数を半分に:「比較」と「代名詞」に注目!

先に、選択肢の1番と3番がだめな理由から解説します。

このふたつの選択肢で鍵となる言葉は one という代名詞です。そして代名詞を見たら「それ」とか「彼」とか「彼女」などというふうに日本語に訳して考えては絶対にいけません。代名詞が何を指しているのかは、リーディング問題でも文法問題でも絶対に問われます。ですから、問題部分に代名詞が出てきたらそれが何を指しているのかは必ず突き止めておかないと、確実な正解を得ることはできなくなります。

それでは、選択肢1と3の one は何を指しているでしょうか。答えは rice ですが、その根拠を正確に説明できますか? もし、説明ができないのなら、今回はたまたまラッキーだっただけで、高度で複雑な英文ではそうは行かない、ということになるでしょう。どのような英文でも対応できるようになるには、プロ棋士が将棋を指すように一手一手論理的に詰めていく必要があります。手順は以下の通りです。

1.「AとBの違い」ということは、「AとBを比べている」ということなのだ、と気づく。
2. 比較は必ず「比較する対立情報」+「同じ土俵を表す情報」のふたつでできている。
3.「日本で栽培されたコメ」と「アメリカのコメ」なら、「対立情報」=「日本対アメリカ」。「同じ土俵」=「コメ」。つまり「コメという分野の中で日米の違いを比較」している。
4. 代名詞はすでに一度述べた情報と同じ情報を繰り返すときに使うので、比較の文で代名詞は「同じ土俵」の情報を必ず指す。
5. したがって、今回の one が指すのは rice 。

さて、この問題において、one が rice を指しているということがなぜそれほど重要なのでしょう?
じつは、one は代名詞として rice を指すことが文法上できないのです。one は代名詞の働きもしますが、根本的には「数字の1」という意味を表す言葉です。つまり、「数」です。ですから、代名詞(つまり「今言ったそのひとつ」という意味)として使う場合も「数えられるもの」しか指すことができないのです。

ところが rice は「数えられない名詞」です。日本語でも「コメがいくつある」と言う人はいません。「どれだけの量(=いくら)があるのか」と考えるのが普通です。コメが入った袋が破れたら、水が流れるように米粒が流れ出てきます。人間がこのようにコメを見ているせいで、英語では rice は water と同じように「数えられない名詞」として扱われます。よって、rice を one という代名詞で指すことができないのです。これが1番と3番が不正解になる理由です。

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rice of America が不自然な理由:「コメなしにアメリカは語れない」のか

さて、残った選択肢は American rice と rice of America です。どちらも日本語にすれば「アメリカのコメ」です。

みなさんの中には「なんか、こっちの方は自然に感じるけど、こっちは不自然に感じる」という直感が働く方もいるでしょう。英語に対する大量の経験がないと直感は発生しませんから、直感が働くのはとてもいいことです。そして、そこに明確な根拠が伴えば、鬼に金棒ということになります。一緒に根拠を考えてみましょう。

まずは rice of America が不自然であるという理由を説明します。of は第10回「多義語の秘密:たくさんの意味を持つ of 。その正体は?」で述べた通り、「全体から、構成要素である一部分を取り出す」というイメージを持つ言葉です。

イラストにある通り、a piece of cake なら「ケーキ全体からその一部であるひと切れを取り出す」というイメージから「ひと切れのケーキ」という意味が出ますし、a student of the school なら「学校全体から、構成要員である学生をひとり取り出す」というイメージから「この学校の生徒」という意味が出ます。

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ここで意識してほしいのが、「A of B」が「Bを構成するA」というイメージを持つということです。a piece は cake を構成する一部ですし、a student も the school を構成する要員のひとりです。the United States of Americaなら州(states)という構成要素が集まってアメリカ全体ができていることを表し、the United Kingdom of Great Britain なら、イングランド、ウェールズ、スコットランドという3つの王国が構成要素として集まり、グレートブリテンができているということになります(*1)。

すると、rice of America と述べたとき、コメはアメリカの構成要素といえるほど、「なくてはならないもの」でしょうか? 例えば Car of the Year とか Man of the Year は、その1年を代表する車や人です。それを抜きにしてはその年を語れないというほど重要だ、というイメージを持ちます。でも単純に「アメリカ産のコメ」を表したいときに、コメにそのような重要なイメージは持たせる必要はないはずです。これが rice of America が不自然である理由です。

American rice が正解である理由:American と America’s が表す「~の」の違い

最後に American rice が正解である理由を説明します。

American は「アメリカの」と訳します。「の」と訳せるので「所有」を意味するのかと思って辞書で引けば、American は「形容詞」と出てきます。つまり名詞(ここでは rice )の様子を説明する言葉です。

American rice なら「コメはコメでも他の国のコメではなくて、アメリカ産のコメだよ」という「コメの種類の限定」を表しています。日本のコメと対比する文脈ですから「種類の限定」を表す American はぴったりです。

一方で America’s rice ではどうでしょうか? これなら所有格の語尾がついたことになり、日本語に訳せばやはり「アメリカのコメ」となります。しかし、この表現は、この問題の文脈では自然とは言えないという意見が多く出てくるはず。

’s は、人を表す言葉の語尾につくことが一般的で(例:Tom’s dogなど)、例えば Japan’s economy と言っているときでも「日本人が集まって作り出した経済」という「日本人の集合体」をイメージさせる使い方をします。その他の例を見てみましょう。

America’s most popular sportアメリカ(人の間)で最も人気のあるスポーツ」
America’s first black presidentアメリカ(人の中で)初の黒人大統領」
America’s futureアメリカの(国民が迎える)未来」

「アメリカ産のコメ」は厳密にはアメリカ人が作り出したコメではありますが、しかし、ここで表したいのは「日本産」「アメリカ産」「中国産」といった、「種類」だと考えられます。したがって、形容詞を使って種類を限定するほうが適切で、American rice のほうが好ましいと考えられるのです。

(*1)のちに北アイルランドが加わって the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland となります。