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want の後ろは「to不定詞」で enjoyは「動名詞」になる根本理由。~ing のたったひとつの意味

want の後ろは「to不定詞」で enjoyは「動名詞」になる根本理由

みなさんこんにちは、英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」の英語職人・時吉秀弥です。



今回は、主に動名詞のお話をします。~ing の形をとり「~すること」という意味を持つ言葉ですね。試験の英文法でよく問題になるのは、

動詞のあとの目的語の位置に、不定詞を使うべきか、動名詞を使うべきか

ということですね。まずは不定詞から見ていきましょう。

※この連載は2017年に実施しました

不定詞を使う場合:「これから~することに向かう」

以下のふたつの文を見比べてください。

○ I want to go shopping. 「私は買い物に行きたい」
× I want going shopping.

動詞が「まだやっていない。やるのはこれから。」という性質を持っている場合、to不定詞との相性が良くなります。これはto不定詞の to が「→」という意味を持つために、「これから~することに向かう」という意味を出すことが多いからです。

want という動詞は「~したい」という意味を持っています。ということは、「今はしたいと思っているだけで、まだやっていない。やるのはこれから。」という意味を持っていることになります。ですから、後ろに不定詞が来るほうがふさわしい、ということになります。

このような性質を持つ動詞には、hope(これからすることを希望する)、decide(今決めたけど、やるのはこれから)、expect(これから当然こうなるだろうと思う)などがあります。

一方で、動名詞、つまり ~ing はどういう意味を持つのでしょうか。

~ing のたったひとつの意味:「動作の途中」

~ing はたったひとつの意味しか持ちません。それは「動作の途中」ということです。

例えば現在進行形の I am playing tennis. ならば、「今はテニスをしている最中で、まだ終わっていない。」ということです。形容詞として使うときも、a running man なら「走っている最中の男性」ということです。分詞構文で使うときも Walking on the street, I run across Kelly. なら「道を歩いている最中、ケリーに偶然出会った。」=「道を歩いていて、ケリーに偶然出会った。」ということです。

このことは動名詞にも当てはまります。上に挙げた I want going shopping. がなぜダメなのかと言えば、「買い物に行きたいな」と思っているだけで、まだ行っていないことを want が表しているのに、その後ろに「(すでに)行っている最中」を表す going を使っているからです。

逆に以下の例では、to不定詞を使うことが不自然です。

○ I enjoyed talking with Jerry. 「ジェリーとの会話を楽しんだ。」
× I enjoyed to talk with Jerry.

これは、enjoy という動詞の性格に原因があります。私がジェリーとの会話を楽しいと感じる(enjoy)感情は、話している最中(talking)に起きるはずです。話し終わってから突然楽しいと思ったり、ましてや、まだ話していなくて、これから話す(to talk)のに、もうすでに楽しい、などといったりすることは不自然なはずです。ですから、enjoy のあとにto不定詞を持ってくるのは不自然なのです。

~ing のたったひとつの意味:「動作の途中」

to不定詞と動名詞の違いは、「動名詞と不定詞の違いは? 使い分けを例文でチェック!」でも解説しています。forgetやlikeのような、動名詞とto不定詞のどちらも目的語にとれる動詞についてよくわかる内容なので、あわせてお読みください。

動名詞を使うふたつのルール

ここで、動名詞を動詞の後ろに持ってくるときのルールをふたつ紹介しましょう。ひとつめはこちらです。

◆ルール1:動詞の後ろに動名詞を持ってくるときは、「同時発生」の感覚があるとき。

話している最中に楽しいと感じるのですから、enjoy と talk は同時に起きていることです。ほかに同時発生の例をいくつか紹介します。

I finished reading the book last night. 「昨晩その本を読み終えた。」

→ 読んでいる最中に「よし、終わった」という瞬間が来るはずだから reading。これを to read としてしまうと、「終わったけど、読むのはこれから」という感じになってしまう。

He avoided seeing me. 「彼は私に会うのを避けた。」

→ 一見すると「避ける」=「あらかじめ~しないようにする」という感じがするので「これからやる」感があるように見えますが、avoid は「向こうからやってくる最中のものを、体をかわして避ける」というイメージの言葉。つまり、「やってくると同時に、避ける」。

動名詞を使うふたつのルール
He stopped talking. 「彼は話すのをやめた。」

→「話している最中」に会話をやめるのが自然。stop to不定詞という形もありますが、これは「これから~することに向かって、手を止める・体の動きを止める」ということです。例えば、He stopped to talk. ならば「彼は会話をするために立ち止まった・手を止めた。」ということになります。

◆ルール2:「記憶と想像」の動詞には動名詞が続く。

動名詞を動詞の目的語とするときには、もうひとつ重要なルールがあります。それは、「記憶と想像」を表すシーンでは動名詞を目的語に使うということです。

試しに、今朝何を食べたか思い出してみてください。どんな映像が浮かびましたか? 「ご飯を食べている『最中』」の映像が浮かんだはずです。

友達と話すところを想像してみてください。どんな映像が浮かびましたか? 「友達と話している『最中』」の映像が浮かんだはずです。

そうです。「記憶」と「想像」の共通点は、どちらも頭に映像を浮かべる、ということです。そして頭に映像を浮かべる場合、それは進行形の映像、動作の行われている最中の映像になるのが普通です。

人間のこのような心理がそのまま英文法になったと私は考えています。前につく動詞が記憶を扱う動詞、もしくはそれに近い意味を出す動詞なら、~ing は記憶の内容を意味します。そうでなければ ~ing はただ想像しているだけの内容になります

I remember seeing him at the party. 「彼とはパーティーで会ったのを覚えています。」

→ 頭の中に、彼をパーティーで目にしている最中の映像が浮かんでいます。この映像がなぜ「過去の記憶」の意味になるのかと言えば、remember が「記憶」を意味する動詞だからです。I remember to see him tomorrow. ならば「明日彼と会うということに向かうことを覚えている」わけですから、予定の話になるわけです。

I regret saying some stupid stuff. 「くだらないことを言って後悔している。」

→ regret 自体は「悲しい気持ちである」という意味しかありません。頭の中に「くだらないことを言っている最中の自分」を思い浮かべながら悲しい気持ちになっているわけです。ですから過去の自分を後悔していることになります。これが I regret to say that your proposal was turned down. なら、「これから、『あなたの提案は却下された』と言うことに向かって、私は悲しい気持ちである。」と言っているので、「残念ながらあなたの提案は却下されました。」という意味になります。

I’ve forgotten telling him that news. 「彼にそのニュースのこと話したの、忘れてたよ。」

→ forget ~ing は「ああ、そういえばこれってもうやってたんだ! 忘れてたよ!」ということです。~ing を「記憶」と考えれば、forget ~ing は「過去にやったことの記憶が頭から抜け落ちている」ことを意味することになるわけです。一方、forget to不定詞はこれからのことを表すので、「やるつもりだったのに、忘れてた!」ということを表します。 I forgot to tell you this.「これ、君に言うの忘れてたんだけど……。」

I can’t imagine living anywhere else. 「ほかのところに住むなんて想像できないよ。」

→ 住んでいるところを想像する、ということは「住んでいる最中のところを頭に浮かべる」ということです。imagine は「想像する」という意味の動詞で、remember やforget のように「記憶」を意味する動詞ではないので、~ing は「過去の記憶」を意味しません

I don’t mind your staying here. 「あなたがここにいても気にはしないよ。」

→ mind は、ある状況を頭に浮かべたうえで、それを「嫌だと思う」という意味です。したがって、ここにも「想像する」という要素が含まれています。したがって後ろには、動名詞である ~ing が来ます。

***
動名詞であろうと何であろうと、~ing は「動作の途中」という意味しかありません。よく巷で言われる「動名詞は『過去』という意味を持つ、だから remember のあとに動名詞が来れば、それは過去の出来事だ」という言説は、私から見ると ~ing が出す表面的な意味を捉えただけのものに過ぎません。その奥を探ると、人間が映像を頭に思い浮かべるときに出てくる特徴、つまり「動作の途中の状態が浮かぶ」という心理的な理由が隠されているのだ、というのが私の主張です。

このような一見意識にのぼらないような、顕在化しない感覚が、「なぜ言葉はそのように使われるのか」という暗黙知を説明することがあるのです。



→連載第21回「進行形なのに『動作の進行』を表さない!? ~ing が『近い未来』をも表すワケ」

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