読書にも勉強にも! “高速大量回転” のやり方とは?——「高速大量回転法」生みの親・宇都出雅巳さん特別インタビュー【第2回】

■インタビュー第1回はこちら “ざっくり&繰り返し” こそが最強の本の読み方である——「高速大量回転法」生みの親・宇都出雅巳さん特別インタビュー【第1回】

超効率的な速読術『高速大量回転法(KTK法)』を生み出した宇都出雅巳(うつで・まさみ)さんをお迎えしてのインタビュー、第2回です。

今回はいよいよ、宇都出さんが開発された高速大量回転法の具体的なやり方を探ります。読書にも勉強にも使える、“学びの効率が大きくアップする” メソッドです。

高速大量回転法の手順

——高速大量回転法を行なう手順について、詳しく教えていただけますか?

宇都出さん: 基本はもくじから読みます。もくじは、見出しという非常に集約された情報が固まっているところなので、本の全体構造をつかみやすいんですね。それに、ページ数も少ないので読むハードルも低い。だから、まずはもくじを何回転かさせましょう。戻ると、自分がいかに忘れていたかに気づかされます。5回転、10回転。とにかくもくじを読みましょう。

もちろん、本文を読めるのであれば本文を読んでしまってもよいのですが、そこで「うっ」と詰まったらもくじです。「困ったらもくじ」「止まりそうになったらもくじ」と、私は言っています。

もっと言ってしまうと、本のカバーは外しましょう。さらに、厚い表紙がついているハードカバーの本の場合は、表紙を切り落とします。分厚い本の場合は、薄くばらしてしまいましょう。これだけの読書のハードルは一気に下がりますよ。

立派な本や分厚い本って、手に取るだけでエネルギーを使ってしまうんですね。認知科学の世界では「ウィルパワー」と呼ばれていますが、本を手に取るのに頑張ってしまって、ウィルパワーが消費されてしまうんです。読もうと思った瞬間にすっと読み始められれば、時間もウィルパワーも無駄にすることなく、回転の効率が高まります。それに、そもそも厚い表紙がついていては、ぱらぱらとページをめくれないから回転もさせづらいですしね。

もくじを読んで全体構造がだいたい把握できたら、次はまえがきあとがきを読みましょう。まえがきでは本の全体像が解説されていたりしますし、あとがきでは著者の核心が書かれてありますから。

そして本文に入っていくのですが、ここでも最初は見出しを中心に読んでいきます。見出し以外も読めそうであれば読んでもいいのですが、「うっ」と詰まってしまったら、その時点でワーキングメモリはいっぱいになっています。無理に頑張って読み進めようとせず、もくじに戻ったり、見出しを再度ざっくり読んだりしていきましょう。

そうすると、本がだんだんとなじんでくるんですね。新しい情報がストックとなり、ワーキングメモリに余裕が出てきます。すると、さっきは見出ししか読む気がしなかったのが、「ここってこういうことが書いてあるんだ」ってわかってくる、「もうちょっと先を読んでみよう」って思えてくるんです。

もくじや、まえがき・あとがきから始めて、見出しや本文の読めるところから読んでいく。わからないところは飛ばして、読む気がするところを読む。詰まったらもくじに戻る。また見出しだけ読んで、読みたい部分を読む。とにかくせわしい読み方ではあるんですが、止まらずに回転させ続けるんです。

「ストックをためる→読む→ストックをためる→読む」の “良い循環” に持っていきましょう。そうすれば、細かい部分にもだんだんと入っていけるようになりますよ。

——特別なテクニックが必要、というわけではないんですね?

宇都出さん: そうですね。読むときにいちいち音にしないとか、文章をかたまりごとに読むとか、そういう速く読むためのテクニックはありますが、やっていること自体は非常にシンプルですよね。ざっくり繰り返して読む、これだけです。

私の読み方と近いことを言っているのが、マインドマップを提唱したトニー・ブザンという人です。彼は「ジグソーパズルのように本を読め」と言っています。

ジグソーパズルって、まずは四隅や外枠などから組んでいきますよね。そのあとどうするかというと、上から2段目を組んでいくなんてことはせず、わかりやすい模様があるところを攻めていきますよね。そうやって埋めていくと、わからなかった部分もだんだんとはまっていきます。

高速大量回転でざっくり繰り返して読んで、だんだんと細かいところに入っていくというのは、まさにこれなんです。階層構造に整理された本を、大枠の部分から細かい部分へとトップダウンで読んでいく。脳も楽だし、とても効率的な読み方ですよ。

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読書だけにあらず。勉強にも “高速大量回転” を

——1回で無理にわかろうとせず、繰り返す。勉強にも通じる部分があるのではないでしょうか?

宇都出さん: 勉強のときに “わからないものを飛ばす” となると、きっと多くの人が気持ち悪さを感じると思うんです。「わからないものは飛ばせ」なんて言う学校の先生はいませんからね。学校で植えつけられてしまった考え方だと思います。

それに、速く勉強しようとして、1回でなんとか仕上げようとみんな思いがちです。結局、わからないことがあると飛ばせずに、いちいち止まってしまう。そして、ストックが少ないなかでわかろうとする、もしくはどんどん細かいことを調べてはまり込んでしまう。まじめな人ほど、この傾向は強いと言えるでしょう。

でもそれは報われない努力。ワーキングメモリの容量が小さいこともあり、脳の記憶は大雑把であいまいです。また、脳の学習原理は繰り返しが原則なので、ざっくり繰り返しをしながら、だんだんと細かいところに入るということが、理解のためにも、記憶のためにも効率的なんです。

理解できないから、理解するためにじっくりゆっくり読む。でも、じっくりゆっくり読むから理解できない。理解できないから、またじっくりゆっくり読む。この悪循環にはまってしまっては勉強は進まないので、繰り返しも起こりません。頑張って読んで理解したつもりになったとしても、それこそ流暢性の幻想に陥っているだけ。時間が経てば最初のほうの内容は忘れていることでしょう。

だから繰り返しなんです。1回ではわからなかったとしても、繰り返してまた再会できると思ったらバイバイって言えますよね。今はわからないことを怖がらずに、とにかく繰り返しに持っていく。これが勉強の基本原則ですよ。

——勉強のときのテキストの読み方・使い方について、何かポイントはありますか?

宇都出さん: 先ほど述べたように、分厚いものはばらしてしまうというのももちろんありますが、勉強の場合はよりシビアな記憶が求められるので、記憶への残りやすさも徹底的に追求したいですよね。だから、次に読むときに読みやすくなるように、どんどん書き込むことをすすめています。

見出しが小さくて読みづらいと思ったら、太いペンで大きく書いてしまう。キーワードがあったら、マルで囲む。ここで段落が切れるなあという箇所があれば、横線を引っ張って区切ってしまう。そうすれば、次に読むときに “引っかかり” があって楽になるから、脳のワーキングメモリにも負荷がかかりませんよね。そうやってどんどん加工しながら、テキストを繰り返しましょう。

加えて言えば、勉強では「思い出す」ことが非常に重要です。例えば、学校の授業を聞いているときはわかった気になりますが、授業が終わってから、今の授業の内容を語れるかというと、語れないですよね。でも、勉強ができる人とできない人との差って、授業が終わってから「今日の授業は〇〇だったなあ」と思い出して繰り返しているか、それとも終わった瞬間に「ああ、終わった!」と自分を解放してしまうか、といった部分にあると思うんです。

思い出すことで、自分は何がわかっていて何がわかっていないのか、そこの現実に気づけるかどうかなんですね。ただ授業を受けただけでは、わかったつもりのままで終わってしまいます。だから、思い出すことは大切なんです。

思い出すクセをつけると、繰り返しの量は一気に増えます。全部思い出せなくてもかまいません。脳の記憶は大雑把であいまいですから、いきなり完璧に思い出せるわけないんです。思い出せないところがあっても落ち込まずに「何だっけ?」と問いに変えれば、また繰り返すきっかけになります。このサイクルをどんどん回していきましょう。

【プロフィール】 宇都出雅巳(うつで・まさみ) トレスペクト教育研究所代表。1967年生まれ。東京大学経済学部卒。 出版社、コンサルティング会社勤務後、ニューヨーク大学留学(MBA)。外資系銀行を経て、2002年に独立。30年にわたり、心理学や記憶術、速読を実践研究し、脳科学、認知科学の知見も積極的に取り入れた独自のコミュニケーション法・学習法を確立。企業研修やビジネスマン向けの講座・個別指導を行う。 主な著書に『どんな本でも大量に読める「速読の本」』(だいわ文庫)、『仕事のミスが絶対なくなる頭の使い方』(クロスメディア・パブリッシング)、『ゼロ秒勉強術』(大和書房)、『サクッと読めてアウトプット力を高める 集中読書術』(総合法令出版)などがある。

*** 「本を読む」というと、私たちはつい身構えてしまいがちですよね。でも “今すぐわかろうとしなくてもいい” と聞かされれば、もっと気楽に取り組めるような気がしてきませんか?

実際、過去に宇都出さんが教えた受講生でも「気軽に本を手に取れるようになった」「勉強や読書の取っかかりが楽になった」という方が多くいらっしゃるのだそう。なかには、1ケ月で1,500冊もの本を読めるようになった方もいらっしゃいます。

読書は “情報のダウンロード” ではなく “本と読み手とのコラボレーション”。自分が持つ記憶(=ストック)と結びつくことで、理解は進んでいきます。

気軽に本を読めれば、それだけストックがたまる。そのストックが、次の本を読むときの手助けになってくれる。『高速大量回転法』の真髄は、こういうところにあるのかもしれませんね。

■インタビュー第1回はこちら “ざっくり&繰り返し” こそが最強の本の読み方である——「高速大量回転法」生みの親・宇都出雅巳さん特別インタビュー【第1回】

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サクッと読めてアウトプット力を高める 集中読書術

宇都出雅巳

総合法令出版 (2017)

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