立命館大学 第二言語習得の研究者 田浦教授インタビュー
第2回 日本の英語教育について、これからの英語教育について。

教育をテーラーメイドしたい。

僕らは毎年100人くらい脳の実験をしているんですけれども、顔や声色が一人ずつ違うように、言語習得にも個人差があるということを感じます。画一的な英語教育ではどうしても合わずに付いてこられない人がでてくるということですよね。こういう研究をすることによって、服をテーラーメイドするように、一人一人にあった英語教育というものが10年後、20年後にはできるのかもしれないと思っています。

画一的な方法ではどうしても落ちこぼれる人がでてしまいます。
実技である、という点ではピアノの習得などと同じなんですね。同じように練習しても、どんどん上達する人もいれば、途中でつまずく人、最初からうまい人などがいます。英語の先生だけ「10年英語をやっても全然できない」と責められますが、数学や体育の先生も責められてもいいのではないかなと思います(笑)

僕は日本人の訛りがたくさんある英語で外国人としゃべるのはOKだと思うんですけれども、あまりにも下手だと通じないから、そこのレベルをクリアしないといけませんね。ということで、発音はすごくだいじなので、単語を覚えるときに中学校、小学校の先生がきれいな発音で教えてあげる、英語は発音の方法が日本語とはちょっと違うから気をつけないとだめだよというのを、日々実践・模範を示すことができる先生が教壇に立たないとダメだと思います。

時々僕も付属の小学校を見に行くのですが、小学生はすごいですよね。正確にネイティブの先生の真似ができます。「Lはね…」という説明をしなくても、きれいに真似しています。だから初期の段階でこそ、発音をきれいにできる先生がいないといけないなと思います。

大学生対象に行った実験ですが、TOEICの点数が低い人、中くらいの人、高い人に同じタスクをさせたときに、低い人は脳全体を使います。言語活動は通常左脳のみを使って行われますが、右脳を言語活動のくせにつかっているということですね。だんだんテストの点数があがってくると、左脳を主に使うようになってきます。
なにか早く右脳を脱出して左脳に英語中枢が移るような活動があれば、と思って研究をしています。

日本の英語教育、3つの問題点。

ひとつめ。
「コミュニケーション重視」と言っていて、心理的なフィルターみたいなものはだいぶ薄くなっています。ネイティブの人と対してもあまり動じない人も増えました。一方で、正確さということはやっぱりだいじで、だから文法がやっぱりたいせつなんですね。あたりまえなんですけどね。
地道な練習なくてスポーツがうまくならないのとおなじです。

ふたつめは、言う内容を持っていないということです。外国人と話をするときに、あなたの意見は?尖閣諸島どうなの?と聞かれても答えられない。学生を連れて中国に言ったときに、中国の人はすごい意見を言うんですけど、日本の学生は知らないのか、遠慮しているのかあんまり言いませんね。国語とか社会の授業で自分の意見を言うような教育をせずに、英語だけ「コミュニケーション」というのはおかしな話ですね。できるわけがありません。

最後に、小学校3年生からの英語を2020年にはやろうといっているのに、お金を全然かけていなくて、小学校の先生に講習会をして「がんばってください」と、そんなの無理にきまっています。小学校での英語をきちんと成功させるには、しっかりと小学校向けの教員養成を大学に作って、お金を出して、良い先生を養成する必要があります。
発音がきれいで、楽しくできる先生。たくさんの教授法の知識があって、レベルにあった興味づけができればいいんですね。必ずしも、TOEFLのスコアが高い必要はありません。

いまの英語教育で特にこの3つがだいじなのかな、と思います。

学習には興味づけ、動機づけがたいせつです。

学習には動機(motivational factor)がたいせつです。
たとえば理工学部に行く人と、文学部に行く人では英語学習の動機づけ要因が異なるんですよね。ですから人によって指導のストラテジーを変えるべきなんです。たとえば僕が医学部で教えていた時には、アメリカのドラマのER(救急救命室)を使っていました。すごい速さで専門用語がバラバラバラっと出てくるんですけれども、医学部の学生はちょっと易しめのものでやるよりも、ほんとうに食いついてきました。
他にもいくつかの学校で教えましたが、同じ学校でもクラスによって違いますよね。

文法の、たとえば「三単現のs」とか「完了形」というのは、覚えなくてはならないものですよね。これ自体はある種無味乾燥な、つまらない作業かもしれませんが、それをするときに、自分の好きな歌の歌詞を使いながらやればやろうと思うじゃないですか。教科書よりも。

ただ、そこは40人いたら40人分テーラーメイドできないし、教科書を使わないといけないという決まりもあったりするので、専門的な知見をもった人が、よりカリキュラム自由度の高い民間の教育機関で活躍することにも意義があると考えています。

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