立命館大学 第二言語習得の研究者 田浦教授インタビュー
第3回 英語を科学的に勉強するということ。

科学的根拠にもとづいた英語学習、英語指導のメソッドが広まってほしい。

僕はこういった研究科にいるので、研究者仲間だとか、知り合いとか、日本全国にたくさんいて「サイトラ(サイト・トランスレーション)」とか「シャドーイング」とか、科学的な根拠に基づいたものを使って指導した方が良いですよという人は多いんですね。大学で実践している人は多いし、最近では中・高の先生の中にも実践されている方はいらっしゃいます。ただ、全体的に言うとそういう指導者は日本の1%以下です。

第二言語習得、英語教育の研究者の中ではもはや「あたりまえ」のことが学校の現場ではそうじゃないし、研究会に来られる先生はほんの一握りです。
「学校に20人の英語の先生がいますが、これをやろうというのは僕一人だけです」みたいなことばかりです。

是非こういう、科学的根拠に基づいたものが広がって欲しいと思います。

わけのわからない、ちょっと英語のできる人の考えだけにもとづいた方法、「どうして?」と言われたら「自分がうまくできたから」と答えるようなサンプル数1の経験則、それだけでやっているものが多いですよね。

もちろん、一人一人に最適な方法は違うんだけれど、共通して言えることもあって、たとえば文法をしっかりはじめに教え込まないとあるところから先に行けないので、それを乗り越えるための動機付けが大事だとか、そういうことは言えますね。

手っ取り早く英語をうまくする、みたいな方法はありませんが、これまでみたいに「この参考書がいいよ」とか経験知に頼るのはもうナンセンスです。

日本でも第二言語習得研究を学べるようになってきています。

一昔前までは、英語教育を専門にやろうと思えば、海外の大学にいくしかありませんでした。ここ20年くらい日本でも勉強できるようになってきましたが、学部レベルではまだまだ少なくて、英語教員養成とかで、概論的な第二言語習得をやるくらいですね。専門的に勉強しようとするなら大学院になります。

以前、大阪府立大学に勤めていたときに、夏休みのオープンキャンパスで高校生を数名実験室にいれて、脳の実験をみせたことがあるんですが、もうものすごくびっくりして「言語って科学なんだ!」となるわけですよ、それで必ず入学してくれました(笑)
それくらいインパクトあるんだなと思って。

発話することが「動機づけ」になります。

どれだけうまい、帰国子女みたいな人でも4年間日本にいるとスピーチがスローダウンしてしまいました。大事なことは"use"、必ず毎日使う。それから、"exposure"必ず毎日聞く。それは10分でも30分でもいいのです。固めて2時間を1週間に1回やってもだめですよね。いまはiPhoneとかすごく便利なものがあるから、自分が飽きなくて好きなものを、映画でも歌でも見ていくといいですね。

あとは、どういう風にproduceするのか、しゃべるのか、これがいちばん大事です。しゃべろうとした時に、「わあ、この単語しらない」「これはどういう言い方をすればいいんだろう」と知らないことに気がつくわけですね。発話することで、noticing(気づき)が起こります。この気づきも第二言語学習の動機付けになります。自分で考えて書くことも同じ効果がありますね。

分からなかったことについて、どこかで見たとき、聞いたときに「あ、こう言えば良いのか」とわかりますね。これは必ず頭に残ります。

英語力の向上に、あたりまえに役に立つと思う方法もあります。ただし文法知識が大前提。 僕は大学に移る前、移ってからも、シャドーイング、リピーティング、サイトラを一緒にした手法で指導をしていました。聞いたものあるいは、読んだものをproduceする。

これは、僕は万人に対して、ある程度までは必ず上がると思います。少なくとも時間をかければだいたいのレベルの英語ができる、というくらいの文法と語彙の知識があることが前提にはなります。

文法は不可欠です。それ抜きでは考えられない。単語は星の数ほどあるけれども、文法のルールは数える程しかありませんよね。しかも一回身につけると、なかなか忘れません。

たとえば、「進行形」はみんな使えますよね、一回覚えたら。そこが分からない人がいるんですよ。ただ、他のスキルで補ってなんとなくできてる人もいますよね、そういう人は文法をやり直すことで更にできるようになります。
文法が前提だということは、うちの教授もみんな同意していることです。

ここでいう文法というのはそんなに多くなくて、せいぜい10くらい。「不定詞」「分詞」「動名詞」「関係詞」とか、そのあたりです。そんなの本気になったらすぐできる量ですよ。

前へ 次へ
2015 STUDY HACKER