立命館大学 第二言語習得の研究者 田浦教授インタビュー
第4回 これまでの方法、自己流の学び方を再考する。

これまでの英語教育とは別のアプローチを試してみること。

英語の学習方法については、日本人の大人はみんな英語を勉強したことがあるから、それぞれ自分で「この方法はいい、この方法は悪い」と判断しがちなんですよね。特に、英語がちょっとできると思っている人たちは、僕らの研究をみて「こんなことではダメだ」と言ってくることもあります(笑)

それについては、科学的にこういう検証をしたらこういう結果ですよ、ということを説明していくしかないですね。

また、良い先生を養成する。うちで学んだ先生が教えた生徒の英語の力が高くなるという事例を増やすこともたいせつです。いま、うちの中で大学の先生になった人達の評価は高いので、続けていくことで認められていくと思っています。

別のアプローチの効果を体感してもらうこともまた、意味あることだと思います。たとえば、シャドーイングはもともと通訳養成、つまりもともと英語ができる人が特別な職業に就くためのトレーニングメソッドだったんですが、あれは誰にでも効果があるのではないか、ということで科学的に検証されました。

母語の習得は必ず音声言語からはじまりますね?お母さんから聞いて、できるようになっていきます。その後、6歳くらいの段階で文字を学ぶことになります。この母語の習得について研究する中で、実は第二言語についても母語と同様に、音韻ループと呼ばれるシステムを使っているということがわかってきました。このようなことから、シャドーイングの有効性は、科学的に証明されている、理に適っていることなんです。

大学受験とか高校受験の時に、とにかく英語をがんばらなかったら良い学校にいけないという現実がありますよね。だから僕はもう、英語を「使うもの」としては全然意識してなかったんです。テストの点数のためのものでした。だからもういやだなと、大学生になったときはうれしかったんですけど。でも今は英語の先生になってるから、変なものですね(笑)

でもこれ、ほとんどの人はそうでしょう?「使いたいんだけど、英語は苦手だなあ……。勉強嫌だなあ……。」というのがあるから、(受験勉強的な方法とは)ちょっと違うアプローチをすると、「あれ、僕もできるのかな」となりますよ。

楽しく、自分に向いている方法に出会えると次のステップに行きやすくなります。

学習のできるだけ早い時期に、これは大人でもそうですが、楽しい・自分に向いているなと思える方法に出会えると次のステップに行きやすいですよね。「うわ、これを半年もやるのか……。」みたいに感じてしまう方法ではなかなか続きません。また、教室など学習の物理的な環境を楽しくするということも、とてもだいじなことだと思います。

第二言語習得研究や脳科学は新しい学問で日進月歩で進んでいます。たとえばシャドーイングなんて10年前にはまだ新しいことだったものです。いまではもうそれはあたりまえになっていて、さて次はどうするかということになっています。

みんなやっぱり早くうまくなりたいと思いますよね、それならやはり科学的にやった方が、全部は無理にしても分かっている部分についてはそうするに越したことがないと思います。もちろん科学的だからといって、必ずしも全員にうまくいくとは限りません、ただ、こういうアプローチをやったことがない人は多いんですよね。きっと多くの人はのびると思うんですよ。そうすると「伸びた、じゃあもっとがんばろう」という良いサイクルに入りますよね。

科学的にトレーニングしよう。

いまジョギングブームとかで、走っている人も多いですが、ほんとに科学的な方法でトレーニングをしている人は少ないと思います。英語教育も含めてなんでもそうだと思うんです。人気がでても、ほんとにプロが指導をして、というのは少ないと思うので。

たとえば、シャドーイングがいいのは、そのバックグラウンドにnoticing(気づき)がないと伸びないという第二言語習得の知見があるんですね。シャドーイングは、音声を聞いてからそれを真似するという方法ですから、聞けないものは言えないということですよね。そこで先生がたとえば、「ここは “going to”が “gonna” になったから、聞けなかったんだよ」と言う。それで「ああ、そうだったんだ」と、そうなるともう忘れません。SLAの知見を指導に入れていくというのはそういうことです。

逆に、丸暗記みたいなものは、もうひとつ効果がうすいということがわかったりします。単語の覚え方にしても、わかっていることを使っていく、非効率なやり方を除いていくということができますね。

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いかがでしょうか。先生の熱意ある研究のお話に、時間の経つのを忘れて聞き入ってしまいました。英語を身につけたいと思っている方は、ただやみくもにやるのではなく、科学的な根拠をベースにした方法を試してみてはいかがでしょうか。

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