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サイトトランスレーションとは

サイトトランスレーション(以下、サイトラ)とは、英文を「チャンク」と呼ばれる意味のカタマリごとに区切り、前から訳していくトレーニングの方法で、通訳者を目指す人や通訳者の間では、同時通訳の一般的な練習方法の一つとして知られています。

同時通訳は英語の音声を聞いて、瞬時に日本語に訳しながらついていきますが、サイトラは、「聞く」代わりに英文を「読んで」瞬時に訳していくことになります。いわば、紙面上の同時通訳のようなものです。通訳スクールなどでは、授業の始めに英字新聞などをサイトラする時間が設けられているケースが多く、スポーツで言うところのウォーミングアップに当たります。

日本人の多くは中学や高校の授業で、英語を文の後ろから訳して、自然な和訳を作る、いわゆる訳し上げという学習法を習ってきたと思いますが、英語とは異なる語順で英文を処理する習慣がついてしまうという弊害があるとよく指摘されます。

日本語は普通、動詞が文の最後に来るのに対し、英語では、主語の直後に来るのが普通です。また、修飾語に関しても日本語と英語では語順が異なります。例えば、「ベッドで寝ている赤ん坊」を英語にすると、a baby sleeping on the bedとなり、「赤ん坊、寝ている、ベッドの上で」のような語順になります。日本語は名詞の前に修飾語を置くのが一般的であるのに対して、英語では、名詞の後ろに修飾語を添えることが多く見られます。

このように、日本語と英語では言語的な違いがあるので、従来の訳し上げという手法は、後ろから前に逆戻りするような順序で英文を処理することになってしまうのです。

一方、サイトラは、英文を前から区切って訳していくので、英語を英語の語順のまま処理します。確かに日本語の訳出という面では、非常に不自然なものになってしまいますが、処理スピードを優先する場合には、内容が理解できるぎりぎりのレベルであれば問題ありません。

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サイトトランスレーションの効果

サイトラを続けた結果、得られる効果として、リスニング力の向上や、読解速度の向上が期待できます。

①リスニング力の向上

サイトトランスレーションには英語を「聞く」というプロセスはありません。にも関わらず、リスニング力をアップさせる効果があるのはなぜなのでしょう。

みなさんは、リスニングのテストを受けたときに、「何を言っているのかを理解する前にどんどん次の音声が流れてきて、頭がパニックになってしまった」という経験はありませんか?

実はこれこそが、訳し上げに慣れてしまった学習者が陥る問題点なのです。後ろまで聞いて、前の言葉を修飾する習慣がついている人は、読解では何とかなったとしても、リスニングでは音が次々と消えてしまうので、処理が追いつかないのです。

サイトラを毎日続け、英文を前から処理する習慣がつけば、リスニング力が随分向上します。

②読解速度の向上

英文を読むときに、後ろまで読んでから訳し上げているとどうしても速度が遅くなってしまいます。当然ですが、前に戻る分だけ時間的にロスが発生するので、このような人は、英語の試験を受けていても途中で時間が無くなってしまうということがあり得るでしょう。

初めのうちは、意味の区切りをとらえるのが難しいと感じるかもしれませんが、練習を重ねることで、英語の語順のまま理解していくことができるようになります。このレベルまで達すれば、英語の読解速度もかなり上がっているはずです。

サイトトランスレーションの方法

サイトラの練習方法ですが、まずは先ほど簡単に述べたように、意味のかたまりごとに区切っていきます。

この際、ズラッと並んでいる英単語を頭の中だけで区切るのは難しいので、スラッシュ(/)を振っておくと視覚的にわかりやすくなります。初めのうちはどこでスラッシュを振れば良いのかわからないかもしれませんが、明確にこうしなければならないというルールが存在するわけではないので、あまり神経質になる必要はありません。やっていくうちに慣れてくると思います。

一般的には、①前置詞のカタマリの前で区切る、②コンマの直後で区切る、③接続詞や関係詞の手前で区切る、④不定詞や分詞の手前で区切るといったところです。スラッシュが振れたら、意味のまとまりごとに訳しながら、できれば訳を声に出してみましょう。

では、実際にサンプルの英文を使って、サイトラに挑戦してみましょう。

【英文サンプル】
(1999年センター試験より一部抜粋)
Almost everyone tells a lie at one time or another without feeling that he or she has done something terribly wrong. Many people lie without hesitation because they feel that there is good reason for it. For example, a reporter might try to pass as a government official in order to get the information for a story he or she is writing. Doctors, too, lie to patients sometimes when they feel that the truth about an illness would be too much for the sick person to face.

どこでスラッシュを振ればよいか、大体わかりましたか? 先ほど示したルールに従って区切ると、以下のような感じになります。ちなみに、ピリオドの後ろは見やすくするために、ダブルスラッシュ(//)を振っています。

Almost everyone tells a lie / at one time or another / without feeling / that he or she / has done something terribly wrong. // Many people lie / without hesitation / because they feel / that there is good reason for it. // For example, / a reporter might try to pass / as a government official / in order to get the information / for a story he or she is writing. // Doctors, too, / lie to patients sometimes / when they feel / that the truth about an illness / would be too much / for the sick person / to face. //

では、続いて参考となる訳を載せておきます。先ほども述べたように、カタマリで区切るので日本語としては不自然な感じがしますが、あまり気にせず前から意味のカタマリとして処理してみましょう。

ほとんど誰もが嘘をつく / 何かの折に / 感じることなく / 自分が / 何かひどく悪いことをしてしまったと。 // 多くの人が嘘をつく / ためらいなく / なぜなら彼らは思う / うそをつく十分な理由があると。 // 例えば、 / 記者は通そうとするかもしれない / 政府の役人で / 情報を得るために / 自分が書いている記事のための。 // 医者も、 / 時々患者に嘘をつく / 思う時に / 病気についての真実が / あまりあるとき / 病人にとって / 直面するには。//

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最後に

サイトラのやり方はつかめたでしょうか。初めのうちは難しく感じるかもしれませんが、音声も必要ありませんし、スラッシュの書き込みさえできれば素材は何でもできてしまうので、気軽にできる練習だと思います。

英語の試験でいつも時間が足りなくなってしまう人、リスニングを聞いていると、単語ひとつひとつはわかるはずなのに、徐々についていけなくなってしまう人は、サイトラが効果的な練習法になることでしょう。
最初は自分の切り方が正しいのか、訳し方はこれでいいのかと不安になるかもしれません。今はサイトラを用いた参考書も多くでていますので、一冊自分にあったものを購入して取り組むのが初心者にはお勧めです。ただ、サイトラは英語を処理する習慣をつけるものなので、長時間やったからといって、一朝一夕で効果が出るものではありません。筋トレのように毎日10分でも続けていると効果が出てくると言われています。是非、毎日続けてみてください。

監修:田浦 秀幸
シドニー・マッコリー大学で博士号(言語学)取得。大阪府立高校及び千里国際学園で英語教諭を務めた後、福井医科大学や大阪府立大学を経て、立命館大学大学院・言語教育情報研究科・教授。伝統的な言語手法に加えて脳イメージング手法も併用することで、バイリンガルや日本人英語学習者対象に母語や第2言語習得・喪失に関する基礎研究に従事。その研究成果を英語教育現場に還元する応用研究も行っている。


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