目次

  1. はじめに
  2. 概要
    1. 試験日
    2. 試験範囲・試験時間・解答形式
    3. 配点
    4. 出題の傾向
  3. 出題の特徴
  4. 試験対策・勉強法とおすすめ参考書紹介
    1. 教科書内容の振り返り:公式や定理の総復習
    2. 典型的で定番の問題を押さえる
    3. 解法のブラッシュアップ
    4. 応用レベルの演習:数学的な思考力を鍛える
    5. 過去問・模擬試験を用いた演習

1. はじめに

一橋大学の入試問題はどの科目もトップレベル。数学は全国でも最難関に属し、東大や京大に勝るとも劣らないほど。出題範囲は数学ⅠAⅡB(ベクトル・数列)ですが、理系の受験生でも手も足も出ないくらいの難問が出ることもしばしばあります。

一橋大学各学部のアドミッション・ポリシーより引用します:

商学部

企業や市場に関する現象について,理論モデルを使って,あるいは,データに基づいて分析するためには数学の知識が必要です。(中略)高等学校までに数学と外国語をしっかり学習することは,商学部でのより充実した学びの助けになるでしょう。

経済学部

経済学は,さまざまな産業において生産されるモノやサービスが市場で交換,分配,そして消費される循環的なプロセスを広い視点から研究して,そこに現れる特徴や法則性などを見いだそうとする学問であります。経済活動や経済現象の全体は複雑であり,意味のある分析をするためには,さまざまな科学的推論が必要となります。そのために,経済学は数学を必要とします

法学部

論理的思考力の鍛錬は,法学部のカリキュラム全体を通じてはかられるところですが,基礎的な能力は入学時にも求められます。論説文の読解や数学的思考の訓練は,論理的思考力の涵養につながるものと思われます。

社会学部

社会学部は特定の得意科目にとどまらず,幅広く様々な科目に積極的に取り組もうとする姿勢をもった学生を歓迎します。社会学部では第2次試験において国語と地歴,公民の比重が他学部よりもやや高く設定されていますが,全体として特定の科目が突出して重視あるいは軽視されてはいません。

文系でありながらトップレベルの数学力を要求する理由は上の引用文から明らかでしょう。社会科学の総合大学として、国内でも最高峰の研究水準を誇る一橋大学だからこそ、文系の学生の皆さんにも、付け焼き刃ではない、本物の数学力を求めているのです。本記事では一橋大数学の入試問題をひも解き、傾向や特徴、勉強法、対策、おすすめ参考書を徹底的に解説します。

mtp-ec
苦手だった英語でほぼ満点を取って国立千葉大学医学部に現役合格した話。
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2. 概要

2.1. 試験日
2月25日
1限:国語、2限:数学
2月26日
1限:外国語、2限:社会(世界史、日本史、地理、倫理・政経、ビジネス基礎から1科目選択,倫理と政治・経済は合わせて1科目)

2.2. 試験範囲・試験時間・解答形式
(試験範囲)
前期日程:数学ⅠAⅡB(数学Bは「数列」「ベクトル」から出題)
後期日程:数学ⅠAⅡBⅢ(ただし、数Ⅲが含まれる問題は選択問題になるため、ⅠAⅡBだけの学習でも解答可能)

(試験時間)
前期日程:120分、計5問(選択問題を含む)
後期日程:120分、計5問(選択問題を含む)

(解答形式)
いずれの日程も、全問記述式です。解答用紙は2問につき1枚。B4サイズの計算用紙が数枚与えられます。問題はB4サイズの紙1枚にまとめて記載されているため、計算用紙をうまく活用したいところです。

2.3. 配点
(前期日程)
商学部: 250点(合計750点)
経済学部: 260点(合計790点)
法学部: 180点(合計730点)
社会学部: 130点(合計820点)

(後期日程)
経済学部: 400点(合計800点)

2.4.出題の傾向
前期・後期ともに「整数」「平面図形」「空間図形」「微分・積分」「確率」が頻出中の頻出。特に「整数」「確率」は近年では必ず出題されているので、対策は必須でしょう。

ただし、2015年度は「データの分析(数Ⅰ)」や「数列」からも出題されています。頻出分野に絞って勉強するのではなく、どの分野もしっかりと対策していくことが望ましいですね。

条件が具体的な数字ではなくパラメータ(文字)で与えられることも多いため、素早くかつ正確な計算力も必須能力の一つです。日頃から計算を簡略にしようとする工夫を考えるだけでなく、一つ一つの式変形に計算ミスがないかどうかをチェックする習慣をつけましょう。

3. 出題の特徴

3.1 整数
2012年度より施行された新課程では数学Aに「整数の性質」という項目が登場しましたが、一橋大学では、学習指導要領に登場する以前から整数問題が出題されています。教科書にも載るようになったことで一層難しくなることも考えられますので、一橋大学を受験するならば、整数の対策は必須です。

内容を見てみると不定方程式、素数の性質の利用、方程式の整数解など、定型問題を骨太にしたものが多いため、私大型の問題よりも取り組みやすい印象があります。しかしどの問題でも与えられる条件は少ないため、自分で実験しながら法則を見抜いたり、適切に場合分けを行って計算を進める必要があるなど、粘り強い思考力と計算力が求められます。

したがって、検定教科書に登場する定理はある程度証明もできるレベルまで理解した上で、標準レベルの解法は確実に身につけるようにしましょう。

整数は大原則が見えてくれば、他の単元よりも暗記を必要としないというのが面白いところ。つまり、いくつかある公式や定理を覚えてしまえばあとはパズルを解くように問題に取り組めるということです。早めにマスターして演習が楽しくなるレベルまで来れれば最高ですね。

3.2 平面図形
平面図形への対処は、初等幾何・三角比・座標・ベクトルの4つが基本。まずは各単元の典型問題の解法を必ず押さえましょう。

図形の計量(辺や面積の値、あるいはそれらの最大値・最小値を求める)の問題では、とっかかりこそ上記の4つの武器のいずれかになるものの、途中から3次関数を処理することになったり、相加相乗平均の不等式を利用することになることも十分にあります。数学はすべての分野が理論の背後で有機的に接続されているので、図形問題では整数は関係ない、あるいは2次方程式の問題だから確率は関係ないと考えるのは危険ですよ。

また、与えられた条件から、図を大きく丁寧に描くこともポイントの一つです。図が適当になってしまうと隠れた性質が見えにくくなってしまいます。

対称性に着目することも忘れないでくださいね。東大文系の問題は、特にこの点をしっかり押さえられないと解答できない問題が多いので、参考になります。

3.3 空間図形
平面図形と同様に、空間図形の対処も初等幾何・三角比・座標・ベクトルの4つが基本になります。

空間図形の場合は、うまく断面図を切り出したり、座標軸を設定してみたりすると解答の糸口が見えることが多いです。

また、図形の辺や角について、適切に変数を設定し、3つ以上の文字の計算も臆せず取り組みましょう。計算を簡略化するためには、平面図形以上に対称性を利用することが重要です。特に正四面体は対称性を利用するチャンスがオンパレードですよ。

3.4 微分・積分
微分・積分は他の単元に比べ、比較的取り組みやすい内容が多い単元です。過去問だけでなく、阪大や東北大・名大・北大などの旧帝大から東大文系・京大文系と設問の内容も共通する部分が多いため、演習問題も豊富に存在しています。

ただし、与えられる関数や方程式にパラメータ(文字)が含まれることが多いため、計算が煩雑になります。場合分けも多くなりますから、粘り強く捌ききる思考力と計算力が試されます。2つのグラフ(特に放物線と直線)で囲まれる面積に関する問題は頻出ですが、日頃から計算が煩雑にならないように工夫を重ねたいですね。

3.5 確率
2014年まではほぼ確実に大問5に確率の問題が出題されています(2015年は大問4で出題)。「整数」と同様に今後も必須分野であり続けることが予想されます。

「試行をn回繰り返す」「k回目の確率をP(k)とおく」など、パラメータ(文字)が頻繁に登場します。もちろん計算も文字だらけになるので、計算が重たくなることは覚悟しましょう。最低でもnCrやnPrは文字のまま計算を進められるようにしておきたいところです。

また、数列の漸化式と組み合わせた「確率漸化式」というテーマは、東大文系・京大文系を始めとする難関国公立大と同様に一橋大学でも非常に頻繁に出題されます。もちろん漸化式を組むことができても一般項が求められなければ解答は得られませんから、漸化式の解法パターンはしっかりマスターしておきましょう。

場合の数・確率は他の単元に比べ特殊な考え方をする単元のように見られることが多く、苦手とする受験生が多いようです。しかし、似通ったテーマが多いため、コツをつかむのに過去問演習が最も有効な単元ともいえます。最低10年分は取り組んでみましょう。

4. 試験対策・勉強法とおすすめ参考書紹介

4.1 教科書内容の振り返り:公式や定理の総復習

一橋大でもそうでなくても、数学の勉強は教科書レベルの内容のおさらいと典型的な問題のパターンを知るところからスタートします。いくら東大や一橋大といえど、難しい問題も基本の積み重ねで構成されます。ただし、問題集に取り組み始めて最初のうちは解答を見ても「こんなの思いつかない」「どうしてここをxとおくの?」と、着想自体が難しいと思うこともあるでしょう。そういうときはうんうん考えても一向に答えはひらめかないもの。なので、5分から10分ほど考えてもわからないときはすぐに解答を見てしまって構いません。模擬試験や学校の定期テストで、数字の変わった問題が出たら、何も見ずに解くことができるというのがこのステップのゴールです。
このレベルがクリア出来ている方は、次に移ってください。

『4STEP』などの教科書傍用問題集

『数学Ⅰ・A/Ⅱ・B基礎問題精講』

骨太な計算力も必要になりますので計算系の問題集もこのタイミングで始めてみてはいかがでしょうか。

『数学の計算革命』(駿台文庫)

『合格る計算数学ⅠAⅡB/Ⅲ』

4.2 典型的で定番の問題を押さえる

教科書レベルがしっかりと押さえられたら、次はもう少し大学受験で定番の問題の解法を押さえていきましょう。ここではいわゆる「網羅系参考書」というものを使用します。下に挙げる『青チャート』や『フォーカスゴールド』は非常に分厚いものですので、終わらせられる自信がない……。という人は、『標準問題精講』に取り組んでみましょう。例題の解法をしっかり理解して習得できるようになることがゴールです。
このレベルもクリア出来ている方は次に進んで構いません。

『新課程 チャート式 基礎からの数学Ⅰ+A/Ⅱ+B』(数研出版)
(※青チャートと呼ばれるものですね。)

『フォーカスゴールド』

『数学Ⅰ・A標準問題精講』(旺文社)

『数学Ⅱ・B標準問題精講』(旺文社)

4.3 解法のブラッシュアップ

次に、受験本番にもう少し近しいレベルのものを使ってよりハイレベルな解法を押さえていきます。ここで使う問題集は、青チャートレベルの解法をさらにブラッシュアップしてくれる『1対1対応の演習』というものです。扱われているテーマも「逆手流(逆像法)」「ファクシミリの原理(順像法)」「図形量の最大・最小」など一橋大でも頻出のものが多く、ここでの練習がそのまま本番の解答力に結びつきます。ここでも例題の解法をしっかり理解して習得できるようになることがゴールです。

『大学への数学 1対1対応の演習』(東京出版)

4.4 応用レベルの演習:数学的な思考力を鍛える

ようやく準備ができました。一橋大レベルの入試問題の演習に入りましょう(まだ過去問には入りません!)。以下に示した問題集であれば、どれを使用しても同等の実力が得られます。ここで大事なのは、しっかり時間をかけて1問1問考え抜くこと。5分10分で諦めるのではなく、30分から40分程度粘ってみましょう。この思考過程の中に成長の要素がたくさん詰まっています。

また、解答を書くときも本番の答案を書くと思って取り組みましょう。普段の練習で計算結果だけを示したり途中過程を省いたりしていると、いざ本番になったときに解答をどう書けばいいのか詰まってしまうかもしれません。書き方がわからなければ、学校や塾の先生に個別に指導してもらえるとよいですね。

『大学への数学 新スタンダード演習』(東京出版)

『文系数学の良問プラチカ』(河合出版)

『数学Ⅰ・A・Ⅱ・B上級問題精講』(旺文社)

『ハイレベル数学Ⅰ・A・Ⅱ・Bの完全攻略』(駿台文庫)

頻出である整数と確率についてはその単元に特化した参考書兼問題集が出版されています。余力があったりあるいは苦手意識があったりするならば、取り組んでみましょう。

『ハッとめざめる確率』(東京出版)

『大学への数学 マスター・オブ・整数』(東京出版)

4.5 過去問・模擬試験を用いた演習

以上のステップまできっちりこなすことができれば、過去問に入っても十分太刀打ちできる実力がついていることでしょう。
【過去問】
定番の赤本・青本に始まりたくさんの本が出ています。
・赤本(前期・後期)(教学社)
・青本(駿台文庫)
・『一橋大の数学15ヵ年』(教学社)
・『一橋大学数学入試問題50年』(聖文新社)

なお、インターネット上にも一橋大数学の過去問と解説を載せているサイトがたくさん存在します:
・大学入試数学図書館|一橋大過去問ライブラリー|http://www.densu.jp/frhitotsubashi.htm
・京極一樹の数学塾|一橋大 数学入試問題解説|http://www.sid.co.jp/cn138/pg1957.html

【模擬試験の過去問】
駿台予備学校にて年1回実施されている「一橋大実践模試」の過去問が科目別に出版されています。
・「一橋大学への数学」(駿台文庫)

(参考)
一橋大学|平成28年度一橋大学入学者選抜要項
一橋大学|一橋大学の特色