目次

  1. はじめに
  2. 入試の概要
    1. 試験日
    2. 試験範囲・試験時間・解答形式
    3. 配点
    4. 出題の傾向
  3. 出題の傾向と特徴(詳細)
    1. 細胞と分子
    2. 代謝
    3. 遺伝情報の発現
    4. 生殖と発生
    5. 遺伝
    6. 動物の反応と行動
    7. 植物の環境応答
    8. 生物の多様性と生態系
    9. 生命の起源と進化、生物の系統
  4. 試験対策・勉強法とおすすめ参考書紹介
    1. Step.1 用語、定義の確認
    2. Step.2 実験、考察問題に取り組む
    3. Step.3 計算問題への取り組み
    4. Step.4 過去問・模擬問題を用いた演習

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看護学部を卒業後、医学部受験に挑戦。卒業後わずか1年で合格を勝ち取った「教科書レベル」からの挑戦
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1. はじめに

慶應義塾大学は福沢諭吉の蘭学塾を母体とする大学であり、医学部としては1917年に開設された。通称、私立医学部御三家の一つに数えられており、非常に難易度の高い大学の一つとなっている。ちなみに、アドミッションポリシーには以下の記載があり、入学者に期待するレベルの高さがうかがえる。

「基礎臨床一体型の医学・医療の実現」の理念の下、患者中心の医療を実践し、医学・医療に貢献してきた本学医学部は、次世代を先導し、豊かな人間性と深い知性を併せ持つ医学生を強く求める。そのために、創立者 福澤諭吉の「一身独立(自ら考え実践する)」の教えを理解し、世界に雄飛し、患者中心の医療を実現できるphysician scientist(科学的思考力を備えた医師)となりうる医療人としての資質、目的意識、モチベーションを重視し、選抜する。

(引用元:慶應義塾大学|各学部における3つの方針

また、私立医学部の中では授業が比較的安いということもあり倍率が非常に高く、2016年度はおよそ25倍にも上がっている。合格最低点は例年6割前後で推移しており、試験の難易度を考えると厳しいと言える。上述したように、高度な力が要求される上に試験の形式が国公立大学に似ているため、合格に向けた対策を立てる際には、難関国公立大学の対策をするというくらいの気持ちで臨むべきであろう。以下、試験の特徴について詳しく解説していく。

2. 概要

2.1. 試験日
一般入試
1次試験:平成29年2月19日(日)
2次試験:平成29年3月2日(木)
※平成29年度の一般入試は終了しました。

2.2. 試験範囲・試験時間・解答形式
(試験範囲)
英語:コミュニケーション英語I・コミュニケーション英語II・コミュニケーション英語III・英語表現I・英語表現II
数学:数学I・数学II・数学III・数学A・数学B
数学Aからは「場合の数と確率」・「整数の性質」・「図形の性質」を出題範囲とする。
数学Bからは「数列」・「ベクトル」を出題範囲とする。
理科:物理(物理基礎・物理)、化学(化学基礎・化学)、生物(生物基礎・生物)のうち2科目選択

(試験時間)
1次試験
・英語(90分)
・数学(100分)
・理科(120分)※2科目選択

2次試験
面接・小論文(50分)

2.3. 配点
1次試験
・英語(150点)
・数学(150点)
・理科(200点)

2.4.出題の傾向
慶應義塾大学医学部の入試問題の特徴は、問題集に掲載されていないような珍しいタイプの問題が多い。大問は3つと少ないが、全て考察問題主体の出題形式になっている。そのため、60分程度で攻略することが非常に難しい。小問集合のような出題は比較的少なく、かつ市販の参考書には載ってないような考察実験が出題される。考察実験の内容は、覚えようと思えば大学1年生の教養程度の知識が必要とされるものが多く、その内容を知っている必要はないものの、リード文が長く、理解するために非常に長い時間を要することになる(リード文が2ページに及ぶこともある)。加えて、論述問題が出題の軸となっているため、比較的高い論述力が必要とされる。基本的には見たことのない図が与えられている場合が多い。基本的知識の習得は当たり前であるが、設問の意図を素早く読み取る読解力も試されている。

出題範囲には偏りがあり、医学部らしく生体からの出題が多い。一方、生態系や植生からの出題は少なく全く出題されない年度もある。特に、タンパク質や恒常性、ホルモンがよく出題されており、生体に関する問題がややハイレベルに作られている。非生体関係の出題では、例外的に進化と系統が出題されている。

毎年、出題数3題、試験時間は理科2科目で120分である。難しいのは、字数指定のない論述問題であり、記述の分量が全体的にやや多い傾向にある。

全体的に7割を取れれば十分であるが、英数の難易度を考えると生物では8割以上を得点しておきたいところである。

3. 出題の傾向と特徴(詳細)

3.1 細胞と分子
細胞の大きさや顕微鏡の使い方など差のつく分野ばかり出題されるため、非常に学習がやりにくい。また、緑色蛍光タンパク質や細胞分裂の阻害剤による考察問題が多く出題される。

3.2 代謝
代謝経路などの基本的なことは聞かれず、化学浸透圧説などのような高度な問題が多くなっている。近年あまり出題はないが、今年出題されないとも限らないのでしっかり対策しよう。

3.3 遺伝情報の発現
他の大学と異なり、頻出の単元とは言えないかもしれないが、数年に一度レベルの高い問題が出題されている。特に、バイオテクノロジーに関する出題が圧倒的に多く、これまでもクローンや核の分化、iPS細胞、細胞融合が多く出題されている。一般的な遺伝子の発現のみならず、トランスジェニック生物やノックアウトマウス、キメラなどあまり馴染みのない分野も学習しておくべきである。

3.4 生殖と発生
発生は新課程から新出単語がかなり増えた単元でもある。母性効果因子やBMP、中胚葉誘導と誘導タンパク質の関係、間充織と上皮の分化などを重点的に再確認しておこう。

3.5 遺伝
慶應義塾大学医学部の遺伝の計算は非常に簡単なので、遺伝に苦手意識のある人もしっかり対策しておくことをお勧めする。胚乳遺伝や自家不和合性など難度の高い遺伝が聞かれるわけではなく、伴性遺伝や連鎖と組み替えといった基本的なものがほとんどだが、いずれにせよ転写、翻訳などその他の分野との融合問題として出題されるため、計算力よりも読解力が試される作りになっている。

3.6 動物の反応と行動
慶應義塾大学医学部では、最も多く出題されている単元である。題材としては様々だが、ホルモンのシグナル伝達やヘモグロビンの構造、高血圧などあまり馴染みのないものが取り扱われている。医学部用のテキストを用いて、大学1年生程度の知識を詰め込んだほうがよい場合もある。もう一つ特徴的なのが、学習や本能行動に関する問題が多いという特徴があげられる。その他、免疫、受容器、神経、筋肉とこの単元だけで出題の1/4を占めている。

3.7 植物の環境応答
過去10年のうちで出題されている年が最も少ない単元である。時間のない受験生は後回しにしてしまっても構わないだろう。

3.8 生物の多様性と生態系
食物連鎖や種間(内)競争からの出題が多く、設問のリード文が毎年短くなっている。しかしながら、多くの問題が恒常性や遺伝と関連させて出題されているため、生態系の分野のみでの出題はほとんどないといってよいだろう。

3.9 生命の起源と進化、生物の系統
五界説からの出題が多いが、動物界のみならず菌界や植物界からの出題も多いのが特徴的である。生態系と同じく、リード文自体は短めで知識を聞かれることが多い。

4. 試験対策・勉強法とおすすめ参考書紹介

■Step.1 用語、定義の確認

慶應義塾大学医学部の場合、資料集の片隅に載っているような知識も問われることがある。時間が有り余っている受験生以外は基本用語と標準的な考察問題に的を絞った方が効率的である。急いでマニアックな単語を詰め込む必要はなく、そのような単語に本番で出会ったとしても落ち着いて消去法で対処できればそれでよい。基本単語は、問題を見た瞬間にアウトプットできるまでにブラッシュアップしてほしい。しかし、それ以上に重要なのは正確な定義の暗記であるので、単語の丸暗記ができたら、そのまま点数に反映するとは限らないことをしっかり覚えておこう。

〇参考書
『チャート式 新生物、生物基礎』(数研出版)

『大森徹の最強講義』(文英堂)

『大学入試の得点源(要点)』(文英堂)

『生物 知識の焦点』(Z会)

『理解しやすい生物、生物基礎』(文英堂)

『田部の生物基礎をはじめからていねいに』(東進ブックス)

『生物基礎が面白いほどわかる本』(中経出版)

初学者は、いきなり問題を解き始めるよりも参考書や教科書を使って生物現象や用語の定着に努めるほうが効率的である。用語が定着した後は、問題集でアウトプットしていこう。リードやセミナーを使う際の注意点としては、いきなり発展問題などはやらずに、セミナーのプロセスやリードにあるリードBなど基礎問題の反復練習に努めるほうが効率がよい。

〇問題集
『基礎問題精講』(旺文社)

『らくらくマスター 生物・生物基礎』(河合出版)

『生物用語の完全制覇』(河合出版)

『セミナー 生物』(第一学習社)

『リードα 生物』(数研出版)

『リード light 生物 生物基礎』(数研出版)

■Step.2 実験、考察問題に取り組む

ここからは、標準問題を軸に実際の考察問題を解いていくことになる。近年の大学入試では、医学部にかかわらず考察問題を中心に問題が構成されることが多いが、慶應義塾大学では考察問題がメインとなっている。したがって、対策としては標準的な問題を数多くこなし、実験概要と結果をしっかり記憶しておくことである。時間の短縮につながるだけでなく、予測しながら解答をしていくことができるようになるため精神的にも安定する。ニワトリの真皮の誘導や、中胚葉誘導の実験結果など、普段から考察問題をこなしていく上で、ノートなどに実験結果をストックしていくとよいだろう。

1周目の取り組み方としては、しっかりリード文を読んで自分で考えて答えを導き出しで見ることである。この時点で完璧な答案を作る必要は全くなく、わからなかった問題は解答解説を理解することを心がけよう。また、最終段階として重要問題集などのリード文が長めの問題集を1冊こなしておきたい。時間のある受験生は、お医者さんになろうシリーズや100選のどちらかを使ってみるとよい。教科書に載っていない詳細な医学用語などを学べる構成になっており、総仕上げに役立つだろう。

『セミナー 生物』(第一学習社)

『リードα 生物』(数研出版)

『生物の良問問題集』(旺文社)

『基礎問題精講』(旺文社)

『生物重要問題集』(数研出版)

『生物標準問題精講』(旺文社)

『お医者さんになろう 生物』(駿台受験シリーズ)

■Step.3 計算問題への取り組み

計算問題は、個別に対策しておく必要がある。セミナーやリードαなどの網羅系問題集にも計算問題は含まれているが、計算問題に対する網羅性はあまりよくない。

『大森徹の生物 計算・グラフ問題の解法』(旺文社)

『大森徹の生物遺伝問題の解法―合格点への最短距離』(旺文社)

慶應義塾大学医学部は基本的であるが毎年、計算問題が数問出題されるため、必ず個別に対策しよう。特に、遺伝、神経の伝導速度、ミクロメーター、浸透圧、塩基対数の計算、ハーディー・ワインバベルグの法則、系統樹、生体系に関する計算などを抑えれば十分である。 独立して出題されるため、大問ごと失点する恐れはないだろう。公式を暗記することも大切であるが、公式の導出過程を理解し、忘れないような学習をしていくことが重要である。また、計算問題に関する注意点であるが、計算問題も記述であることが多いため、選択肢に頼ることができず、自力での完答が求められる点に注意しておこう。

■Step.4 過去問・模擬問題を用いた演習

Step.1~3が終了したら、過去問を解き始めよう。過去問は、できれば夏明け辺りから始めたいところである。もちろん、もっと早い段階で実力がついていれば、過去問に着手してもよい。よく直前期になるまで過去問を解かずに取っておくという話を聞くが、step.1を終えたころに一度過去問を解いてみるといいかもしれない。どういった単元が頻出しているのか、難易度はどのくらいか、ということがイメージしやすくなるだろう。また、過去問を解くときには時間を計るようにしよう。いくら正答率が高くても時間内に解ききれなければ意味がないからである。

(参考)
慶應義塾大学|各学部における3つの方針