目次

  1. はじめに
  2. 概要
    1. 試験科目
    2. 試験時間
    3. 配点
    4. 出題の傾向と特徴(概要)
  3. 出題の傾向と特徴(詳細)
    1. 理論化学
    2. 無機化学
    3. 有機化学
    4. 高分子
  4. 試験対策・勉強法とおすすめ参考書紹介
    1. 教科書内容の振り返り
    2. 知識の補強
    3. 解法パターンの習得と計算力の増強
    4. 定番問題の習得
    5. 過去問演習

1. はじめに

慶應義塾大学医学部は、東京慈恵会医科大学、日本医科大学とともに、私立医学部御三家の1つに数えられている。私立医学部の中では授業料が比較的安いこともあって、2016年度には倍率がおよそ25倍と、非常に難易度の高い大学であると。
化学の場合、かなりマニアックな部分にまで及んで出題される可能性があるため、難関国公立大学の対策をするくらいの気持ちを持って取り組みたい。難易度の高い問題から標準的な問題まで、幅広く対応できるようにしておけることが望ましい。
以下、本学に合格するためのプロセスを解説していこう。

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看護学部を卒業後、医学部受験に挑戦。卒業後わずか1年で合格を勝ち取った「教科書レベル」からの挑戦
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2. 概要

2.1 試験科目
1次試験:
・英語
・数学
・理科(物理・化学・生物から2科目選択)

2次試験:
・小論文
・面接

2.2 試験時間
1次試験:
・英語(90分)
・数学(100分)
・理科(120分)※2科目選択

2次試験:
・面接、小論文(50分)

2.3 配点
1次試験:
・英語(150点)
・数学(150点)
・理科(200点[100×2])

2次試験:
・面接
・小論文

2.4 出題の傾向と特徴(概要)
全問記述式で、例年大問3題から構成されている。理論1題・有機1題は毎年出題されているが、年度によって出題傾向がかなり変わる。理由を記述する問題や用語問題が多い年度もあれば、計算問題で難易度の高い問題を出している年もある。理論・有機ともに年度によって難しい年もあれば標準的な問題を出す年もある。用語問題は難易度が高いものばかりではないが、教科書に載っていないようなかなりマニアックな単語も聞いてくることがあるので、模擬試験や過去問演習で気になったものは『化学の新研究』などで出来る限り調べていく学習が望ましい。
総合的な内容を含む穴埋め問題が出題されており、当てはまる単語自体は易しくとも、その単語を問題文から読み当てることが困難な問題も多い。どの分野も難しい問題を想定して、難易度の高い問題演習をするだけでなく教科書の行間を読むような学習を心がけたい。
また、計算問題は有効数字が指定されていないので自分で考える必要がある。計算過程を書かせる問題も多い。
さらに、記述・論述問題も良く出題されているので、国公立大学のような記述式の解答に慣れておかないといけない。有機化学から2題出している年度もあり、全体的には有機重視の傾向が強い。

3. 出題の傾向と特徴(詳細)

3.1 理論化学
鉛蓄電池、二酸化炭素と生体内pH、水の構造、COD、結合エネルギー、二段階滴定などが出題された。小問などを含めればかなり幅広い分野から出題されている。抽出の原理について計算問題も出題されており、総合的な理解が求められるような問題も多い。標準的な問題と難しい問題の落差が激しいので、難易度の高い誘導問題などを想定して対策していないと難しい問題が出た場合に差が付いてしまうだろう。

3.2 無機化学
他の上位私大医学部同様に、無機単独の大問が出題されることはほとんどない。だいたいの問題は理論と関連させるような問題であるが、感光性とか潮解性などの単純な用語を聞いてくることもある。空所補充などの単純な知識問題を出してくることも多いので、基礎事項の知識が抜け落ちてしまうような事態はなんとしても避けたい。

3.3 有機化学
年度によって難易度がかなり変わっており、全国屈指の難問が出題されるときもある。したがって、有機化学に関しては東大・京大のような国公立大学の上位校を想定して問題演習に取り組んでいく必要がある。分子量が大きく、かなり複雑な構造を出してくることもあるので、ある程度推測しながら適切な構造を探し出していく訓練が必要である。構造決定の年度が多いが、油脂の知識問題や、有機物質の分離などの問題が出題されている年度もある。

3.4 高分子
ペプチドの推定やデンプンと酵素の知識問題、アミノ酸の脱炭酸、血漿タンパク質と浸透圧などの問題を作っている。GABAやアルブミンなど生物を履修していない受験者にとっては馴染みにくい題材を扱ってくることがある。深い知識を問われる問題もあるが、難しそうに見えて内容は教科書レベルの設問も出題されている。また、何を聞かれているのか問題の意図を理解しにくい問題も多いので、過去問演習で慣れておきたい。合成高分子は近年あまり出題されていないが、ゴムの耐油性に関する設問が出たことがある。

4. 試験対策・勉強法とおすすめ参考書紹介

■Step.1 教科書内容の振り返り

まずは「化学基礎」と「化学」の教科書を用意しよう。特に数研出版のものがおすすめである。
入試問題は、原則として教科書から出題されるので、まずは教科書を1章ずつ丁寧に読み、高校化学の全体像あるいは大まかな流れを掴もう。慶應義塾大学医学部では難易度の高い問題が多いものの、教科書太字レベルの知識問題も実は頻繁に出題されている。しかし、無論、発展的な内容も多く出題されるため、太字をさらうだけでなく、各章にある参考・発展・コラム・実験といったコーナーにも必ず目を通してほしい。

ただし、このStep.1では全てを理解しようと意気込む必要はない。余力があれば全ページを読破するように心がけたいが、まず一周目は太字内容だけ理解してざっとどんなことが書かれているか整理していくということから始めるのでももちろん構わない。

また、教科書の表現は初学者には少し難しいこともあるので、以下に紹介されている参考書あるいは図説(資料集)を、教科書の対応する箇所と合わせて読み込むということも。また、実験装置や沈殿の色など目で見た方が記憶に残りやすいので、資料集も一冊用意しておくと良い。得た知識をどう使っていくのかについては下記の問題集を利用して、確認していくと良い。

○参考書
『岡野の化学が初歩から身につく-理論化学1-』(東進ブックス)
『岡野の化学が初歩から身につく-無機化学+有機化学1-』(東進ブックス)
『岡野の化学が初歩から身につく-理論化学2+有機化学2-』(東進ブックス)
『フォトサイエンス化学図録』(数研出版)

○問題集
『セミナー化学』(第一学習社)
『リードα』(数研出版)

■Step.2 知識の補強

本学では、空所補充問題や用語問題なども良く出題されており、知識問題も確実に解くことも重要である。記述問題や実験関連の問題も良く出ているので、教科書欄外も意識を向けて学習してほしい。以下に各単元の注意すべきポイントとオススメの参考書について記載する。

◯理論化学
難問が出ることもあれば、受験定番問題が出題されることもある。まずは、標準的な問題が解けるように化学現象や化学用語の定義などを中心に学習して欲しい。難易度の高い問題はその場で考える問題の多い。化学現象や用語の定義がしっかりと押さえられていれば、あとは問題文に従って解き進めることが出来るようになっているので、まずは基本をしっかりと押さえて欲しい。また、実験関連の問題も良く出ているので、実験手順や内容を化学的に説明できるようにしていくとより良い学習になるだろう。

『鎌田の理論化学の講義(大学受験Doシリーズ)』(旺文社)

『化学一問一答』(東進books)

◯無機化学
理論と関連させて問題を作っていることが多いので、物質の性質と化学反応を理論と繋げて理解を深めていく学習が基本である。ただし、単純な知識問題も多いので、教科書に登場する知識はもちろん、化学の新研究の参考書も使って貪欲に知識を入れていくことも忘れずに行って欲しい。

『福間の無機化学の講義(大学受験Doシリーズ)』(旺文社)

◯有機化学
構造決定の問題が多いので、有機物質の名称と構造、性質、反応をひとつひとつ丁寧に押さえていくという王道の学習方法で行こう。有機の学習では知識を一通り身に付けてから問題を解くというよりは、問題演習を通して、使える知識に整理していく方が効率的である。逆に言えば入試演習に入ってからも、積極的に参考書や教科書に振り返り、使える知識に昇華させていって欲しい。

◯高分子
生物履修者でないと知らないような物質を題材に扱うこともあるが、問題を解く知識が難しいわけではない。ただし問題文中の難易度の高い用語にも振り回されないように教科書欄外の知識、特にタンパク質の名称などの生物系の知識なども積極的に習得して下さい。

『鎌田の有機化学の講義 三訂版 (大学受験Doシリーズ)』(旺文社)

■Step.3 解法パターンの習得と計算力の増強

Step.3では、計算問題の解法の習得に向けて学習を進めていく。慶應義塾大学医学部では、計算問題の比率が年度によってかなり変わる。問題量の多い年は、中々ハードな計算量になる。下記の問題集や参考書を使い、標準的な計算問題の解法を身に付けるとともに、計算の正確性やスピードも向上させて欲しい。また、有効数字を自分で判断することになるので、有効数字の扱いもしっかりと訓練して身につけて欲しい。

『鎌田の理論化学の講義(大学受験Doシリーズ)』(旺文社)

『基礎問題精講』(旺文社)

『ゼロから始める化学計算問題』(中経出版)・・・ドリル形式になっているので、苦手な人はこちらを使って練習すると良い。

『化学計算問題の徹底整理』(数研出版)・・・入試レベルの計算問題が良いという場合は、こちらの問題集で練習すると良い。

■Step.4 定番問題の習得

ここからは実際の大学入試問題を使って、定番の問題の解法を押さえていく。慶應義塾大学医学部では、問題によって難易度の差が大きく、標準的な問題とかなり難易度が高い問題の両方が出題される。まずは標準的な問題を完答できるようにすることを目標として、一冊の問題集を仕上げていこう。2周以上繰り返し、しっかり仕上げることができたら、難易度の高い問題集にも挑戦して欲しい。色々なパターンの問題が出題されているので、一冊に留まらず様々なバリュエーションの問題に取り組む必要がある。特に、有機の構造決定の問題は難易度が高い問題が出題されやすいので、重点的に学習して欲しい。

○問題集
『化学重要問題集』(数研出版)

『化学の良問問題集』(旺文社)

『化学の新演習』(三省堂)

『化学標準問題精講』(旺文社)

○参考書
『化学の新研究』(三省堂)

■Step.5 過去問演習

Step.1-4をクリアしたら過去問演習に入りましょう。

『慶應義塾大学医学部』(教学社)

本Stepでは以下の手順に沿って演習・復習に取り組めば、ただ普通に過去問を解くということをするよりも数段効果的であるのでぜひ参考にしてほしい:
1. まずは制限時間内で解いてみる。
2. 制限時間が終了した段階でここまでの出来を採点する。
3. 時間が足りずに解ききれなかった問題を、時間無制限で取り組み、答え合わせを行う
4. 自分に足りなかったポイントを列挙する。知識問題で間違えたなら今まで学習した項目のどの部分が抜けていたのか。考察問題で間違えたならどういった視点が足りないのか。時間があれば解けるもののスピードが足りないならどの部分の理解と練習が足りないのかといった観点を大事にしよう。
5. Step.4に戻り、該当単元の演習を再度行った上で、周辺分野の知識をすべて整理する。

過去問をある程度進めたら、Step.4の自己分析を元に、同時並行で弱点補強を進めよう。直前期に赤本や難しい問題ばかりに手を出したくなることもあると思うが、大事なことは難しい問題が理解できることではなく、合格点を取ること。忘れていた知識を整理したり、計算のスピードや正確性を磨くことが意外と合格への近道だったりする。ちょっとした問題に足元をすくわれないようにしっかりと足場を固めよう。

過去問をすべて終えたら、大阪医科大や関西医科大など、傾向の近い他の私大医学部の過去問で演習していこう。また国公立大学(医学部含む)の過去問演習も有効である。