目次

  1. はじめに
  2. 入試の概要
    1. 試験日
    2. 試験範囲・試験時間・解答形式
    3. 配点
    4. 出題の傾向
  3. 出題の傾向と特徴(詳細)
    1. 力学
    2. 電磁気学
    3. 熱力学
    4. 波動
    5. 原子
  4. 試験対策・勉強法とおすすめ参考書紹介
    1. 教科書内容の確認
    2. 基礎問題で解法をインプット
    3. 標準問題でアウトプットの練習
    4. 過去問を用いた演習

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看護学部を卒業後、医学部受験に挑戦。卒業後わずか1年で合格を勝ち取った「教科書レベル」からの挑戦
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1. はじめに

慶應義塾大学医学部は、難関私立医科大学の1つ(東京慈恵会医科大学、日本医科大学と並び、俗にいう私立医学部御三家に挙げられる)であり、私立医学部の中でもトップクラスの難易度の問題が出題されることで知られています。問題集や他大学で見かけないような設定の問題が出題されているので、物理現象の本質的な理解と様々な状況に適応できるような応用力が必要となります。

2. 概要

2.1 試験日
一般入試
1次試験:平成29年2月19日(日)
2次試験:平成29年3月2日(木)
※2017年度の一般入試は終了しました。

2.2 試験範囲・試験時間・解答形式
(試験範囲)
英語:コミュニケーション英語I・コミュニケーション英語II・コミュニケーション英語III・英語表現I・英語表現II
数学:数学I・数学II・数学III・数学A・数学B
数学Aからは「場合の数と確率」・「整数の性質」・「図形の性質」を出題範囲とする。
数学Bからは「数列」・「ベクトル」を出題範囲とする。
理科:物理(物理基礎・物理)、化学(化学基礎・化学)、生物(生物基礎・生物)のうち2科目選択
(試験時間)
1次試験
・英語(90分)
・数学(100分)
・理科(120分)※2科目選択

2次試験
面接・小論文(50分)

2.3 配点
1次試験
・英語(150点)
・数学(150点)
・理科(200点)

2.4 出題の傾向と特徴(概要)
解答時間は理科2科目で120分です。大問3題で構成されており、多くの場合、第1問は小問集合になっています。直近10年では、電磁気学、波動、原子分野は必ず出題されています(小問集合のみを含みます。力学は2011年度には出題されていません)。詳しくは次節以降で紹介しますが、問題集に載っていないような様々な状況設定の問題が出題されています。いずれも難易度が高く、知識を問う問題、論述をする問題、グラフを書く問題、数値計算をする問題など様々な問い方がされています。

3. 出題の傾向と特徴(詳細)

3.1 力学
近年出題されたテーマは「2輪車のモデル」「ばねの性質」「水圧」「水平な床面上を動く台上での物体の運動」「振動子の運動」「クレーン車のモデル」「摩擦」「大気圧の変化」「ばねによって発射された小球の運動」「2本の柱の間に張られたロープ」「腕立て伏せのモデル」などです。典型的な問題はほとんど出題されず、様々な現象に物理法則を当てはめて考察をする形式の問題が多く出題されています。論述をさせたりグラフを書かせたりと、1つの現象を多角的にみる視点が求められています。

3.2 電磁気学
近年出題されたテーマは「クーロン力を使ったリニアモーターカー」「金属の電子運動論」「サイクロトロン」「コンデンサー」「磁場中を運動する導体棒」「ダイオードを含む回路」「点電荷が及ぼす力」「抵抗、コイル、コンデンサーを含む直流回路」「ミリカンの実験」などです。2016年度に出題された「クーロン力を使ったリニアモーターカー」は珍しい設定でしたが、それ以外は比較的典型的な設定の問題が出題されています。とはいうものの難易度は応用レベルで決して易しいものばかりではありません。2016年度は小問集合でAEDのモデルが出題されているので、今後も様々な装置や現象をモデル化する問題が出題されることが予想されます。

3.3 熱力学
出題されている割合はあまり多くありません。直近10年では2013年度に気体の状態変化に関して、2011年度にタイヤに空気を入れるモデルに関して、2010年度に比熱の測定実験に関して、2007年度に気体の状態変化に関して出題されました。大部分は典型問題で完答が求められるものでした。2011年度のタイヤに空気を入れるモデルの問題だけは、他分野同様実際の現象に物理法則を当てはめる問題で、誘導に従っていけば解けるものの数値計算があったり、複雑な文字式の計算があったり、考察をさせる設問があったりと解答を導き出すにはなかなか骨が折れる問題でした。あまり出題がなされていない分野とはいえ、十分に対策しておく必要があります。

3.4 波動
近年出題されたテーマは「ドップラー効果」「薄膜による干渉」「うなり」「波の性質」「音の性質」「音速」「気柱の共鳴」「音の回折格子」などです。直近10年では2008年度にニュートンリングに関する問題以外は全て小問集合の形式で出題されています。ニュートンリングに関する問題も発展的な問題ではありますがよくある設定の問題でした。傾向としては解きやすい問題が多く出題されていますが、他大学の入試問題なども使って様々な設定の問題を解いておいた方がいいでしょう。

3.5 原子
新課程になる2015年度以前から小問集合や大問で出題されています。近年出題されたテーマは「核分裂」「核反応」「X線」「光電効果」「レーザー光によるルビジウム原子の冷却」「ボーアの水素原子モデル」「放射性同位元素」「原子核崩壊」「コンプトン散乱」などです。

2016年度に出題された核反応に関する問題では、ニュートリノを含む核反応について問われました。2015年度に出題されたX線に関する問題では、X線が確実に発生する現象を選択するという問題でした。同じく2015年度に出題された核反応に関する問題では、サイクロトロンから核反応を起こす一連の流れを解いていく問題で、放射線に関してBqやGyの単位についての知識が身についていないと解けない設問もありました。2013年度に出題されたレーザー光によるルビジウム原子の冷却に関する問題は、誘導に従っていれば解けるものの、熱力学との融合問題で2つの分野を正しく結びつけることが要求された問題でした。2012年度に出題された放射性同位元素に関する問題では、放射線に関する単位の知識だけでなく、内部被ばくに関する知識(放射性同位元素が体内では甲状腺に蓄積されやすい)が必要でした。

特に放射線関連は医療と結びつく単元なので、これからも出題が予想されます。他大学ではあまり出題されない放射線の単位や素粒子の種類なども含めてもれなくカバーしておく必要があるでしょう。

4. 試験対策・勉強法とおすすめ参考書紹介

4.1 教科書内容の確認

教科書で扱われている現象の理解し、語句の定義を正確に覚え、公式の導出が確実にできるようになることが第一段階です。グラフや図などがある事項については、現象とグラフ、グラフと式の関係も自分のものにしましょう。公式の導出は自分でできるようになって下さい。その過程で物理現象をより深く理解でき、問題を解くうえで必ず大きな力になります。そして、自分で導出ができるようになったら答案を書くつもりで書いてみて、添削してもらうと良いでしょう。教科書以外にも例えば、

『橋元の物理をはじめからていねいに(力学編)』(東進ブックス)

『橋元の物理をはじめからていねいに 熱・波動・電磁気編』(東進ブックス)

などの参考書が、現象や公式の成り立ちについての理解を助けてくれるでしょう。

慶應義塾大学医学部では、知識問題が多く出題されています。教科書のコラムや探究活動なども含めて隅々までしっかりと読み、図録を持っている場合は併せて図録もしっかりと読んでおきましょう。2015年度にはLEDの正式名称を問う問題が出題されています。今後も知識問題として出題される可能性はありますので、英単語の学習もかねて意味をしっかり理解して覚えましょう。

4.2 基礎問題で解法をインプット

教科書で学習した内容を実際の問題に使う練習です。基礎的な問題は解ける人にはこの段階は飛ばしても構いません。ただし、次段階以降で少しでも不確かであったり不安だったりする分野、単元、問題のタイプがあれば、必ずこの段階に戻って解消するようにして下さい。この段階は、基礎的な典型問題をできるだけ短時間で解けるようになるのが目標です。問題演習には、

『物理のエッセンス 力学・波動』(河合塾)

『物理のエッセンス 熱・電磁気・原子』(河合塾)

『入門問題精講』(旺文社)

などを用いるのが良いでしょう。この段階では自分で問題を解く必要はありません(もちろん、解けるようであれば解いても構いません)。まずは「どのような状況設定の時にどのような解法を使うのかをインプットする」というところに重点を置きましょう。

『為近の物理1・2解法の発想とルール 力学・電磁気』(Gakken)

『為近の物理1・2解法の発想とルール 波動・熱・原子』(Gakken)

などもどのように問題を解くのかを丁寧に解説しているので参考になると思います。解答・解説をしっかり読んで、別解などもしっかりインプットしましょう。問題を見た瞬間に正しい解法が思い浮かぶようになればこの段階は終了です。

4.3 標準問題でアウトプットの練習

次の段階は、大学受験における定番の問題で実際に問題が解けるかを演習していきます。この段階の問題演習には、

『良問の風』(河合塾)

『基礎問題精講』(旺文社)

などを用いると良いでしょう。基礎段階でインプットした解法を、入試標準レベルで正しく使うことができるようになることが目標です。この段階では必ず自分の手で解いてみて下さい。その時には基礎段階で身に付けた解法をどのように活用するのかを意識しながら解きましょう。問題を見た瞬間にどのような解法を使うのか最低1つは思い浮かべられない場合は前段階に戻った方が良いかもしれません。自分が思い浮かべた解法で解けない場合もあるでしょう。その時には解答を見て自分の考えに何が足りなかったのかをしっかりと分析してください。学校の先生など身近にアドバイスをくれる人がいるのであれば、ぜひ聞きに行きましょう。
 
これらの問題集が一通りきちんととけるようになれば応用問題に取り組む基礎が身についたと考えられます。以下のような問題集に取り組んで、応用問題を解いてみましょう。

『名問の森 力学・熱・波動1』(河合塾)

『名問の森 波動2・電磁気・原子』(河合塾)

『標準問題精講』(旺文社)

『難問題の系統とその解き方』(ニュートンプレス)

『新体系物理Ⅰ+Ⅱ』(教学社)

4.4 過去問を用いた演習

最終段階は、実際に過去問を解いてみることです。赤本などを利用して時間を測りながら実際の入試のつもりで解いてみましょう。この段階のポイントは「時間を意識すること」、「問題を解く順番を意識すること」、「問題文を適切に解釈して自分が知っている解法に当てはめること」です。

実際の入試には制限時間があるので、まずは制限時間内に解くスピードを身に付ける必要があります。次に、問題を解く順番も意識しましょう。実際の入試では「解ける問題から先に解く」というのが鉄則です。慶應義塾大学医学部の入試問題は問題の難易度も含めて制限時間に対する問題量は圧倒的に多いので、戦略的に解いていく必要があります。時間をかけて難しい問題を1問解くよりもまずは簡単な問題を短時間で5問解きましょう。実際に入試問題を解いた後に、問題の解く順番も最適だったかどうか確認してみましょう。

「問題文を適切に解釈して自分が知っている解法に当てはめること」に関してですが、特に見慣れない設定の問題の場合、問題文を解釈して自分が知っている解法に当てはめるということが問題になってきます。現象の理解、設問の意図の理解などが正しくできていたかのチェックは時間をかけて行いましょう。解答や解説に書いてあることを理解するだけでなく、問題文を読んだ時に設問の意図をどのように理解するのか、自分はどのように考えるべきだったのかをしっかりと吟味して下さい。
 
時間がある人は、実戦力と応用力を身に付けるために他大学の入試問題にも挑戦してみましょう。東京慈恵会医科大学は見慣れない設定で難易度の高い問題を出題しているので、応用力を試すいい練習となるでしょう。さらに時間があるのであれば、学部にこだわらず様々な大学の入試問題にもチャレンジしてみて下さい。

この記事があなたの慶應義塾大学医学部合格の手助けになれば幸いです。成功を祈っています。