目次

  1. はじめに
  2. 概要
    1. 試験日
    2. 試験範囲・試験時間・解答形式
    3. 配点
    4. 出題の傾向と特徴(概要)
  3. 出題の傾向と特徴(詳細)
  4. 試験対策・勉強法とおすすめ参考書紹介
    1. 教科書内容の振り返り
    2. 知識の補強
    3. 解法パターンの習得と計算力の増強
    4. 定番問題の習得
    5. 過去問・模擬試験を用いた演習

1. はじめに

京都大学はご存知の通り、東京大学と並ぶ日本トップクラスの国立大学である。京都大学の学力検査の出題方針に「化合物などの個々の性質や反応についての知識を単に蓄積するのではなく、それらに基づいて論理的に思考できること」という記載がある。これは単に覚える(暗記する)能力だけを大学側が知りたいのではなく、それをどう利用できるかを知りたいのである。

化学の試験では、問題文を読み取る、考える、知っているといったすべての要素が求められる。他大学に比べて考察問題が多いのが京大の特徴であり、それだけ考えられる学生を求めているということである。したがって、単に覚える作業を繰り返すのではなく、なぜそうなるかを理解することが日頃の勉強の際に必要となる。この記事では京大化学の入試問題から、傾向や特徴、勉強法、対策、おすすめの参考書について解説していく。

京都大学の学力検査の出題方針より引用:

高等学校で学ぶ化学では、原子・分子と化学結合の概念を正しく捉えた上で、物質の性質や物質の変化に関する基本的な原理・法則の理解を深めることを目標としています。また、それらの原理・法則をただ記憶するのではなく、観察・実験を通して物質の具体的な性質や反応と結び付けて理解し、それらを活用する能力を身に付けることを目指しています。すなわち、無機物質、有機化合物、高分子化合物などの個々の性質や反応についての知識を単に蓄積するのではなく、それらに基づいて論理的に思考できることが重要です。
個別学力検査「化学」では、化学に関する基本的事項の理解度をみるために、本学が指定する出題範囲から、できるだけ分野的な偏りがないように出題します。出題にあたっては、物質に関する基本的な知識が身についているかを問い、化学の基本となる概念や原理・法則を活用する能力を試します。さらに、反応式、構造式を適切に表記し、定性的あるいは定量的な考察を論理的に記述できるかも問います。

(出典:京都大学|入試・高大連携|一般入試|学部入学者選抜要項|平成30年度 学部一般入試選抜要(PDF)

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看護学部を卒業後、医学部受験に挑戦。卒業後わずか1年で合格を勝ち取った「教科書レベル」からの挑戦
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2. 概要

2.1 試験日

(前期)
2月25日 1限:国語、2限:数学
2月26日 1限:外国語、2限:理科
2月27日 医学部医学科のみ面接
(後期)
3月13日(法学部のみ) 

2.2 試験範囲・試験時間

(試験範囲)
『物理基礎・物理』、『化学基礎・化学』、『生物基礎・生物』、『地学基礎・地学』の4科目から2科目選択。
(試験時間)
180分で2科目

2.3 配点

(前期日程、理科必須学部のみ記載)
総合人間学部(理系): 200点(合計700点)
教育学部(理系): 100点(合計650点、1科目)
理学部: 300点(合計975点)
薬学部: 200点(合計700点)
工学部: 250点(合計800点、物理+1科目)
農学部: 200点(合計700点)
医学部 医学科: 300点(合計1000点)
医学部 人間健康科学科: 200点(合計750点)

2.4 出題の傾向と特徴(概要)

大問4題が出題されている。理論から大問2題、有機から大問1題、高分子から大問1題が出題される。無機分野は理論問題とともに問われる。基本的に教科書知識を応用する出題が多い。個人差はあるかもしれないが、有機、高分子の問題は練習により対策がしやすいので、これらの大問で点数を稼げるように準備したい。理科2科目で計180分の試験となるので、180分で解く練習をしておこう。1科目90分とすると、大問1つを20分ぐらいが目安である。

3. 出題の傾向と特徴(詳細)

3.1 理論化学

例年大問2題出題されている。近年では、金属イオンの分離、固体表面への吸着、複数槽での電気分解および電解精錬、ヘンリーの法則、溶解度積、気液平衡、二段階反応の反応速度の温度依存性、電気陰性度の算出、シュウ酸の電離平衡、アミノ酸の電離平衡、ラウリン酸の電離平衡が出題されている。化学平衡、気体についてはよく問われる内容なので、理解の漏れがないようにしておこう。教科書の発展的内容として未知の内容が出題されることが多いが、その場合は必ず文章中に説明がある。近似、電気的に中性などの重要な言葉を見逃さないようにしよう。

3.2 無機化学

理論化学の問題の一部として出題されている。近年では、チタンの特徴、イオン半径比、キレート錯体、ガリウムの結晶が出題されている。イオン結晶のイオン半径比に関する問題はよく出題されているので、問題演習を通してしっかりと理解したい。教科書の表の一部のような細かい知識まで問われることがあるので、教科書欄外も含めて確認しておこう。

3.3 有機化学

例年大問1題が出題されている。近年では、エーテルの切断、ヒドロキシ酸の重合、オゾン分解、アセトアルデヒドの合成、ヘミケタール、二重結合の切断、エステルの加水分解に関して構造推定の問題が出題されている。満遍なく出題されているので、苦手な範囲を作らないようにしておきたい。炭素周りの立体構造は分子模型などを用いて視覚的に理解しておこう。未知の反応の場合は問題文をよく読むこと。

3.4 高分子

例年大問1題出題されている。近年では、糖の推定、環状ペプチド、アルキルグリコシド、アミノ酸の推定、天然有機物の酵素による分解、ペプチドの推定が出題されている。核酸塩基の構造式が問われたこともあるので、教科書、図録などの天然有機範囲の知識はすべてインプットしておきたい。ペプチドの推定は慣れてさえしまえば、ほぼ同じ問題しか出題されないので、得点しやすい。

4. 勉強法とおすすめ参考書の紹介

4.1 教科書内容の振り返り

教科書を用意し、一章ずつ読み込む。入試問題は、原則として教科書から出題される。特に各教科書の参考・発展・コラム・実験などは、入試問題の格好の材料になり、出題頻度も高い。京都大学の入試問題の特徴として、考察問題が多い。内容は教科書内容を発展させた問題、もしくは大学内容を高校知識で理解する問題である。教科書内容の充実が、京大入試対策として実は一番重要である。

ただし、教科書の表現は初学者には少し難しいこともあるので、Step. 1では全てを理解する必要はない。この段階では、各教科書の発展やコラムには触れなくても良い。ざっとどんなことが書かれているか整理していくと良い。読んでもすぐには理解出来ないという人は、下記の紹介されている参考書などを教科書の対応する箇所を合わせて読み込むと良い。また、実験装置や沈殿の色など目で見た方が記憶に残りやすいので、資料集も一冊用意しておくと良い。得た知識をどう使っていくのかについては下記の問題集を利用して、確認していくと良い。

○参考書
『岡野の化学が初歩から身につく-理論化学1-』(東進ブックス)
『岡野の化学が初歩から身につく-無機化学+有機化学1-』(東進ブックス)
『岡野の化学が初歩から身につく-理論化学2+有機化学2-』(東進ブックス)
『フォトサイエンス化学図録』(数研出版)

○問題集
『セミナー化学』(第一学習社)
『リードα』(数研出版)

4.2 知識の補強

京都大学では理論・有機・無機・高分子が満遍なく出題され、いずれも考察問題が中心となる。知識問題ももちろん出題されるので、むしろ得点源とできるように、教科書欄外までおさえておきたい。以下に各単元の注意すべきポイントとオススメの参考書について記載する。

◯理論化学
ほぼ全分野から満遍なく出題されるが、他の難関大と同様に気体、化学平衡は特に出題が多い。京都大学の出題のポイントは立式できるかどうかなので、計算自体はやや複雑なレベルである。化学平衡はどの理論分野とも複合させて問題を作ることができるので、苦手な分野がないような状態に仕上げたい。
『鎌田の理論化学の講義』(大学受験Doシリーズ)

◯無機化学
チタンの特徴、イオン半径比、キレート錯体など満遍なく出題されている。結晶格子やイオン半径比の問題はよく出題されているので、まず対策しておきたい分野である。大問として出題されない場合は、大問の一部として知識問題が問われる。ここは努力で点が取れるところである。教科書の隅々まで理解するとともに、図録収録内容もおさえておきたい。
『福間の無機化学の講義』(大学受験Doシリーズ)

◯有機化学
構造推定の問題が中心であり、構造推定の問題を解くための知識を身につけることが重要である。まずは有機物の名称と構造を一致させること、次に何を加えるとどういう反応が起こるかを理解すること、です。未知の反応を利用する場合もあるが、その場合は問題に書いてある。
『鎌田の有機化学の講義』(大学受験Doシリーズ)

◯高分子
ここ数年で言えば、ほとんど天然有機、天然高分子から出題がなされている。アミノ酸や糖の性質、ペプチドの推定、ペプチド-糖複合体など天然有機範囲からは満遍なく出題されるが、教科書内容を超えた知識が必要なわけではない。よく読めば理解できるように設定されている。シトシンの構造を書けといった知識問題も出題されているので、この範囲に関しては隅々まで理解しておきたい。
『鎌田の有機化学の講義』(大学受験Doシリーズ)

4.3 解法パターンの習得と計算力の増強

Step. 3では、計算問題の解法の習得に向けて学習を進めていく。京都大学で出題される計算問題はやや複雑な程度である。計算自体にそれほどの時間をかけていられないので、スピーディーに計算できるようにしていきたい。下記の問題集や参考書を使い、標準的な計算問題の解法を身に付けていこう。

『化学〔化学基礎・化学〕基礎問題精講 三訂版』(旺文社)

『ゼロから始める化学計算問題』(中経出版)・・・ドリル形式になっているので、苦手な人はこちらを使って練習すると良い。
『化学計算問題の徹底整理』(数研出版)・・・入試レベルの計算問題が良いという場合は、こちらの問題集で練習すると良い。

4.4 定番問題の習得

ここからは実際の大学入試問題を使って、定番の問題の解法を押さえていく。京都大学では難度の高い考察問題が出題される。とはいえ、典型的な問題が解けなければより難しい問題は解けない。まずは典型問題に対する理解を深めていくことが重要である。ペプチドの推定は化学の新演習を用いて解きなれておきたい。

『実戦 化学重要問題集 – 化学基礎・化学』(数研出版)

『化学の良問問題集』(旺文社)

『化学〔化学基礎・化学〕標準問題精講』(旺文社)

『化学の新演習』(三省堂)

○参考書
『化学の新研究』(三省堂)

4.5 過去問演習

4.1-4.44をクリアしたら過去問演習に入りましょう。
『京都大学(理系)』(教学社)
『京大の化学 25カ年』(教学社)
本Stepでは以下の手順に沿って演習・復習に取り組めば、ただ普通に過去問を解くということをするよりも数段効果的であるのでぜひ参考にしてほしい:
1. まずは制限時間内で解いてみる。
2. 制限時間が終了した段階でここまでの出来を採点する。
3. 時間が足りずに解ききれなかった問題を、時間無制限で取り組み、答え合わせを行う
4. 自分に足りなかったポイントを列挙する。知識問題で間違えたなら今まで学習した項目のどの部分が抜けていたのか。考察問題で間違えたならどういった視点が足りないのか。時間があれば解けるもののスピードが足りないならどの部分の理解と練習が足りないのかといった観点を大事にしよう。
5. Step. 4に戻り、該当単元の演習を再度行った上で、周辺分野の知識をすべて整理する。
過去問をある程度進めたら、Step.4の自己分析を元に、同時並行で弱点補強を進めよう。直前期は基礎的な内容に取り組むよりも難しい問題ばかりに手を出したくなるが、大事なことは合格点を取ることである。忘れていた知識を整理したり、計算のスピードや正確性の鍛錬の方がはるかに合格への近道と言えよう。ちょっとした問題に足元をすくわれないようにしっかりと足場を固めたい。
問題の難易度や傾向を考えると他大学の問題よりも京大の化学25カ年を解き進めていく方が望ましい。25カ年を解き切ってしまったら、東大、阪大の問題を解いてみるのもいいだろう。

(参考)
京都大学|入試・高大連携|一般入試|学部入学者選抜要項|平成30年度 学部一般入試選抜要項(PDF)