目次

  1. はじめに
  2. 概要
    1. 試験日
    2. 試験範囲・試験時間・解答形式
    3. 配点
    4. 出題の傾向と特徴(概要)
    5. 合格得点
  3. 出題の傾向と特徴(詳細)
  4. 試験対策・勉強法とおすすめ参考書紹介
    1. 物理を知ろう:教科書レベルの知識の確認・復習
    2. 物理という名の道具を手に入れよう:教科書のより深い理解・公式の証明
    3. 解法のブラッシュアップ
    4. 物理という名の道具を使う職人になろう:応用・発展レベルの問題演習
    5. 過去問・模擬試験を用いた演習

1. はじめに

京都大学入試における物理の出題方針より

高等学校で学ぶ物理では、物理学の基本的な概念や原理・法則の理解を深め、体系化された知識に基づいて自然の事物・現象を分析的かつ総合的に考察する能力を身に付けることを目標としています。
(中略)
個別学力検査「物理」においては、物理学に関する基本的事項の理解度をみるために、本学が指定する出題範囲から、できるだけ分野的な偏りがないように出題します。出題の形式においては、知識の確認、物理的思考、計算力を総合的に判断できるように問題を配置します。さらに、思考の過程と論証力を測る目的の記述式問題も出題します。そして、知識の羅列のみでなく、物理的思考、論証力、計算力を総合的に評価します。

(出典:京都大学|入試・高大連携|一般入試|学部入学者選抜要項|平成30年度 学部一般入試選抜要(PDF)

京都大学の物理は全国の物理入試の中でも最難関に属するため、京都大学を目指す受験生は、正しい勉強法で確実な実力を養成することが求められます。物理の諸法則の表面的な理解では解答することはできず、深い知識と思考が必要です。解答形式は空所補充形式が多くを占めていますが、だからと言って答案を書く訓練を怠ってよいわけではありません。解答を導くためには論理的に考える力が必要で、論理的に考える力は答案をきちんと書く訓練を積むことによって養われます。普段から問題を解く際には解答の筋道を論理的に筋道立てて書くことを心掛けて下さい。また、グラフを作図する問題も出題されているので、普段の学習の段階から現象をグラフ化することも意識しておくと良いでしょう。

「物理の解法には、微積分を利用したくない」という受験生もいるようですが、京都大学を受験するには、微積分を利用する習慣を早めに身に着けたほうが有利だと思います。特に電磁気学の問題を解くにあたって微積分を使った方が分かりやすく、京都大学の過去問題集(駿台文庫から出版されている「青本」)は、解説に微積分を使っています。

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苦手だった英語でほぼ満点を取って国立千葉大学医学部に現役合格した話。
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2. 概要

2.1 試験日

(前期)
2月25日
1限:国語 9:30-11:00
2限:数学 13:30-16:00(理系)
2月26日
1限:外国語 9:30-11:30
2限:理科 13:30-16:30
2月27日 医学部医学科のみ面接

(後期)
3月13日(法学部のみ)

2.2 試験範囲・試験時間

(試験範囲)
『物理基礎・物理』、『化学基礎・化学』、『生物基礎・生物』、『地学基礎・地学』の4科目から2科目選択。
(試験時間)
180分で2科目

2.3 配点

(前期日程、理科必須学部のみ記載)
総合人間学部(理系): 200点(合計700点)
教育学部(理系): 100点(合計650点、1科目)
理学部: 300点(合計975点)
薬学部: 200点(合計700点)
工学部: 250点(合計800点、物理+1科目)
農学部: 200点(合計700点)
医学部 医学科: 300点(合計1000点)
医学部 人間健康科学科: 200点(合計750点)

2.4 出題の傾向と特徴(概要)

・毎年必ず出題される分野・・・力学・電磁気学
・よく出題される分野・・・波動・熱力学
・今後出題が予想される分野・・・原子(新課程になり出題範囲に追加されたため)

2012年の相対性理論に関する問題をはじめ、他の大学の過去問や、問題集には無いような目新しい問題がよく出題されるのも特徴です。だからと言って高校の範囲を超える知識がなくては解けない訳ではなく、物理の各単元を深く理解しているかを試す問題が出題されています。

京大理科は180分で2科目解くので、単純に考えて物理にかけられる時間は90分です。また大問3題なので、1題あたり30分が目安の時間となります。過去問などを使って1題あたり30分で解くという時間感覚を身に付けましょう。その上で、他のもう1つの科目との兼ね合いを見て調節できるようにしていきましょう。一般的に物理は化学や生物に比べてリード分が短いので、90分よりも短い時間でできた方がいいかもしれません。1問当り25分が目安でしょう。

2.5 合格得点

2-5%e5%90%88%e6%a0%bc%e5%be%97%e7%82%b9

3. 出題の傾向と特徴(詳細)

3.1 力学

摩擦を及ぼしあう2物体の運動や、鉛直面内の円運動、ばね付き2物体の運動など典型的な設定の問題から、ワイパーのモデルや重力による時間間隔の変化に関する問題などの目新しい設定の問題が出題されています。いずれも、運動方程式や力学的エネルギー保存則、仕事とエネルギーの関係などの基本法則を元に解いていきます。また、重心系から見た運動など観測者の視点を意識することも重要です。
京都入試における力学では、円運動に関する出題が運動量保存や単振動と同じぐらいの割合で出題されています。

3.2 電磁気学

電磁気学は直感的に理解しにくい分野ですので、電磁気現象とキルヒホッフの法則や電磁誘導の法則などをしっかりと結び付けておくことが重要です。
京大入試における電磁気学では、他大学と同じように電磁気学の出題が多く、次いでコンデンサーが多く出題されています。コンデンサーに関しては、極板間引力やばね付きコンデンサー、つなぎ替えや直流・交流回路に関する問題など、出題パターンのバリエーションが豊富です。仕事とエネルギーの関係や電荷保存など、各問題で成り立つ関係式を適切に見抜くことが重要になってきます。電磁誘導に関しては、電流にはたらく力や仕事とエネルギーの関係などの成立する関係にも気を配らなくてはなりませんが、電磁誘導の法則をいかに適用するかという視点が重要になってくるでしょう。

3.3 波動

出題される割合はあまり多くありませんが、出題された場合には「群速度や位相速度」、「電波の反射による音速測定」などの発展的な問題も出題されています。
ホイヘンスの原理や平面波、ドップラー効果や干渉条件などの基本的な考え方を自分で一から説明できるような深い理解をし、誘導に乗って答えられるような応用力を身に付けましょう。

3.4 熱

気体の分子運動論や、状態変化とP-Vグラフに関する典型的な問題が多く出題されています。その一方で、ブラウン運動に関する問題が出題されたりしています。圧力、温度、体積の微小変化による近似式を考える場合が良く出てくるので、微小近似の扱いには慣れる意味も含めて、ポワソンの関係式は導出できるようにしておきましょう。

3.5 原子

原子分野は、物理の分野の中で一番直観的に理解しにくい分野です。まずは教科書に書いてある現象や実験を「どのようなことが明らかになったのか」、「どのようなことを明らかにしたい実験なのか」ということも十分意識しながら関係式を理解していきましょう。
原子分野で出題されやすい分野はボーアの水素原子モデルと核反応に関する分野です。水素原子モデルにおいては、基本的な考え方やスペクトルの波長の導き方などは確実に押さえておきましょう。実際の入試問題では、誘導付きではあるものの電子が2つ以上ある原子の場合などに応用されることが予想されます。東大の過去問なども用いて演習すると良いでしょう。

4. 勉強法とおすすめ参考書の紹介

4.1 物理を知ろう:教科書レベルの知識の確認・復習

まずは、物理の各単元の内容の大筋をつかみます。以下の本などを利用することをお勧めします。
『橋元の物理基礎をはじめからていねいに』(東進ブックス)
『橋元の物理をはじめからていねいに【改訂版】力学編』(東進ブックス)
『橋元の物理をはじめからていねいに【改訂版】電磁気編』(東進ブックス)
『橋元の物理をはじめからていねいに【改訂版】熱・波動・原子編』(東進ブックス)

「はじめからていねいにシリーズ」は多くの図が使われており、物理現象をイメージしやすくなるような工夫がなされています。また、理解できた現象を実際の問題にどのように適応するのかという演習問題も掲載されているので、解法の基本を学ぶのに適しています。

京大を目指す人といえども基礎基本の重要性は変わりません。学校などで一度学習した人も基本の確認という意味でも見ておくべきでしょう。特に自分が理解している以外の方法で解説されている場合は、自分の理解を深めるためにも丁寧に読み込んでおきましょう。

「物理のエッセンス」(河合出版)
物理の基礎分野における定番問題集。問題ベースで物理における解法の考え方を学ぶことができます。各分野における基本的な問題の考え方が余すところなく掲載されています。

この「教科書レベルの知識の確認・復習」の範囲の学習は、なるべく早く終わるのが望ましいです(できれば高3になる前に)。学校での授業が高3までに終わっていない人は、既習単元についてはどんどん学習を深めていきましょう。

4.2 物理という名の道具を手に入れよう:教科書のより深い理解・公式の証明

教科書に出てくる公式を自力で、説明、証明出来るようにしましょう。すべての法則、公式がなぜ導かれるかを説明出来るようにならなければ、京都大学の入試問題を解く学力は身に付きません。

これが理解できたら、教科書の演習問題を解いてみましょう。記述式の問題だと思って途中過程もあわせて解答してみて欲しいのですが、この段階では、答えが合っていればよいでしょう。このレベルがクリアー出来ている方は、センター試験の過去問演習をしてみて下さい。センター試験が80点以上とれた方は、次の4.3に移って下さい。

センター試験との兼ね合いですが、京大を目指す人であればセンター物理の特別の対策をする必要はないはずです。センター試験は基本的な問題から出題されるので、基本的な学習段階が終わった時点でマーク模試の物理で9割以上が取れない人は、理解できていない事項があるということなので、しっかりと復習してください。また、知識問題で失点してしまう人は、教科書や図説などの読み込みが甘いということです。2次試験にも大きく影響しますので教科書や図説の隅々まで読み込んで、理解を深めてしておきましょう。直前の対策としてはセンター対策の実戦演習に5回分ほど取り組めば十分でしょう。

4.3 解法のブラッシュアップ

教科書レベルがしっかりと押さえられたら、大学受験の定番の問題集により演習を積みましょう。

『良問の風 物理 頻出・標準入試問題集』(河合出版)
「物理のエッセンス」に続く標準問題の定番問題集。物理のエッセンスで学習した考え方を大学受験の定番の問題で使うことができるようになるのが目標です。現役生でも7月末までには終わらせたいところです。

『実戦 物理重要問題集 – 物理基礎・物理』(数研出版)
この問題集は「入試標準~応用レベル」で、A問題が標準レベル、B問題が応用レベルとなっています。京大入試レベルの問題を解く前段階として用いるのが良いでしょう。ただし、解答がそこまで詳しいわけではないので、答案や考え方などを学校の先生などに確認してもらうのが良いと思います。現役生でも、A問題は最低限7月末までには終わらせたいところです。

この段階では、ただ答えが合っていればよいのではなく、わかりやすい記述答案になっているかどうかも意識してください。そのためには、解説と照らし合わせて確認することをおすすめします。このレベルの問題は、全問自力で解けるまで、解きなおしをしてください。
出来なかった問題で、解説を読んでもわからないものがあれば、その単元が完全には理解出来ていないということ。教科書を再度よく読み、その単元をしっかり理解することに努めてください。そして、「なぜ、解説はこのように解いているか」が本当にわかるまで、粘り強く考えましょう。「よくわからないから、この解法を覚える」というのは、一番良くない勉強法です。
この問題集で出題された問題は、すべて人に説明出来ると自信をつけられたら、次の4.4に移って下さい。

4.4 物理という名の道具を使う職人になろう:応用・発展レベルの問題演習

この段階で、実際の京都大学の入試問題のレベルと同等のレベルの問題を演習します。以下の問題集による演習をお勧めします。

『名問の森 物理』(河合出版)
「物理のエッセンス」、「良問の風」に続く入試レベルの問題集です。実際に京大入試で出題された問題も掲載されています。各分野バランスよく演習をすることで入試応用レベルの問題に慣れていくことができます。「物理のエッセンス」、「良問の風」を使って学習した人はこの名問の森で入試レベルの足固めをしましょう。現役生であっても9月末には例題を解き終えておきたいところです。

『難問題の系統とその解き方』(ニュートンプレス)
京大入試レベルの問題が合計300題以上掲載されています。問題量をとにかくこなしたいという人にはおすすめです。300題も解く時間がない人は、例題だけ解くという方法もあります(それでも100題以上ありますが)。また、苦手分野の克服に使用することもよいでしょう。応用・発展レベルの問題演習をこの「難問題の系統とその解き方」で始める人は、現役生であっても9月末には例題を解き終えておきたいところです。また、応用・発展レベルの問題演習を「名問の森」や「標準問題精講」などの別の問題集で演習した人は、10月以降の過去問演習を行う際の苦手単元を補う補助教材としても利用することができるでしょう。

「特ゼミ 坂間の物理」(旺文社)
(著者が亡くなっており古い本の為、書店では購入不可。インターネットの万能書店というサイトにて通信販売にて購入可能です)

この問題集で扱っている問題は京大の入試問題と同レベルなので、全問自力で正解出来なかったとしても、落ち込む必要はありません。じっくりと解説を読みましょう。
解説を読むと、物理の諸法則の理解が浅かったと気づかされるのではないでしょうか。このように、物理の各単元の表面的な理解では歯が立たないことを理解し、つまづいた問題をしっかり考えることが京大物理の対策には欠かせません。
この問題集の解説をしっかりと理解して自力で問題が解けるようになれば、あなたの物理の学力は、京大の入試に十分通用するレベルです。

本問題集の解説を理解する際に、以下の参考書を利用すると良いと思います。
『新・物理入門』(駿台文庫)

数ある物理参考書の中でも最高レベルの難度です。微分積分の考え方を使い、物理現象をより高い視点から学ぶことができます。ただし、いくら東大物理といえども、学習指導要領による拘束を考えると微分積分の考え方を使わなくても解ける問題(微分積分が必要な問題は誘導があったり、但し書きがついていたりする)なので、読み進めるのが困難な人、時間的な余裕がない人は無理をして取り組まなくても良いかもしれません。

4.5 過去問・模擬試験を用いた演習

(過去問)
本の形式であれば、定番の赤本・青本に始まり沢山出ています。
・赤本(教学社)
・青本(駿台文庫)
・「京大の物理25カ年」(教学社)

教学社の赤本は直近7年分の入試問題が収録されています。青本は上下2冊で合計10年分の入試問題が収録されています。『京大の物理25ヶ年』は物理のみが25ヶ年分収録されています。物理のみを学習することを考えるのであれば、『京大の物理25ヶ年』を使いましょう。問題が分野ごとに配列されているので、『名問の森』などの応用問題を解き終わった単元から解いていく、といった使い方もできます。

問題を解く時間の目安は1題30分です。これは京大の入試が理科2科目で180分、物理が大問3題あることによるものです。もちろん、30分を超えて解いても構いませんが、30分を大幅に超えて演習するのはあまりおすすめしません。30分ぐらい考えて分からない問題は、それ以上考えてもわからないことがほとんどなので、時間の浪費になってしまう可能性が高いからです。

(模試の過去問)
また、過去問だけでなく京大模試の過去問を解くということも2次試験対策になります。具体的には、河合塾が主催する「京大即応オープン」、駿台予備校が主催する「京大実戦模試」は、過去問が市販されているので良い練習となるでしょう。

(模試)
京大模試には、河合塾が主催する「京大即応オープン」、駿台予備校が主催する「京大実戦模試」、代々木ゼミナールが主催する「京大入試プレ」、東進ハイスクールが主催する「京大本番レベル模試」などがあります。

河合塾が主催する「京大即応オープン」は、8月と11月に実施されます。
駿台予備校が主催する「京大実戦模試」は、8月と11月に実施されます。
代々木ゼミナールが主催する「京大入試プレ」は、7月と11月に実施されます。

東進ハイスクールが主催する「京大本番レベル模試」は、第1回が6月、第2回が10月、第3回が1月に実施されます。東進模試は、第3回のみが2日間にわたって実施されます。

東進模試の大きな特徴は、センター試験後にも京大本番レベル模試が実施されることで、実際の入試に向けてさらに意識を高めることができます。また、第1回と第2回は模試実施後11日で、第3回は模試実施後最短10日で成績が返却されることも大きな特徴です。

また、河合塾の「京大即応オープン」、駿台予備校の「京大実戦模試」は過去問が市販されており、模試対策や実戦演習を積むことができます。

いずれの模試を受験するかですが、日程の許す限り受験することをお勧めします。各予備校が近年の京大入試の傾向を分析して出題するので、予想問題としての側面もあるからです。

特に第1回目の模試は平均点も低く、目標の点数を設定するのは難しいと思います。私がおすすめする京大模試での目標点数の決め方は、実際の入試で自分が各科目で何点を取って合格をするかというところから逆算するという方法です。

理学部を例に考えてみます。「2.5.合格得点」で紹介した表を参考にしながら、1200点満点中750点を取って合格するという戦略を立てたとします。

センター試験で9割を取れば225点中200点が取れるということなので、2次試験で975点満点中550点を取ることが目標になります。そのうえで、例えば、数学が得意で国語が苦手、化学よりも物理が得意な人であれば、

英語 225点満点中 130点 (58%)
数学 300点満点中 210点 (70%)
国語 150点満点中 50点 (30%)
物理 150点満点中 90点 (60%)
化学 150点満点中 70点 (47%)

などという得点の目標が立てられるでしょう。模試を受験するごとに自分の目標とどれだけギャップがあるのかを確認すると同時に、目標得点そのものの戦略も見直すということを繰り返していきましょう。

(参考)
京都大学|入試・高大連携|一般入試|学部入学者選抜要項|平成30年度 学部一般入試選抜要(PDF)