目次

  1. 大学受験の物理について ~化学や生物との違い~
  2. 大学受験までの計画
    1. 現役生について
    2. 既卒生について
  3. 単元別に見る攻略のコツと勉強法【物理基礎編】
    1. 【運動とエネルギー】
    2. 【熱】
    3. 【波】
    4. 【電気】
    5. 【物理学と社会】
  4. 単元別に見る攻略のコツと勉強法【物理編】
    1. 【力と運動】
    2. 【熱と気体】
    3. 【波】
    4. 【電気と磁気】
    5. 【原子】
  5. 物理の勉強におすすめの参考書・問題集
    1. 基礎固め
    2. 標準レベル
    3. 難関大学向け
  6. 過去問の取り組み方
    1. 志望大学の過去問に取り組もう
    2. 志望大学以外の過去問に取り組むのも効果的
  7. 最後に

大学受験の物理について ~化学や生物との違い~

物理は、化学や生物と比べて暗記する量が圧倒的に少ないというのが特徴です。少ない関係式から多様な現象を理解できるため、応用力がある人に向いている科目と言えるでしょう。三角関数など数学の知識を使う場面も多いため、数学な得意な人にも向いています。逆に暗記が得意な人は、化学や生物を選択したほうがよいかもしれません。

大学進学後のことを考えると、物理系の学部を志望している人は必ず学習しておいたほうがよいでしょう。医学部に進学したい人は進学してからは生物を勉強しなければなりませんが、入試で物理を受験した人の方が国家試験の合格率が高いという調査結果もあるため(「医師国家試験合格率と入試科目選択」参照)、「生物を選択したほうがよい」とは一概には言えません。

また、受験科目に指定がある場合があるので、志望校・学部学科が決まっている人は必ず確認してください。志望校が決まっていない人も、受験科目に指定があるかもしれないということを念頭に科目選択をしなければならないので、大学・学部学科研究と志望校決定は、なるべく早い段階で行なうようにしましょう。

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大学受験までの計画

■現役生について

高校3年生になった段階で学校の授業で物理を全範囲終わっている人、終わる予定の人は、次の既卒生と同じステップに進んでください。

高校3年生になった段階で物理の授業が全範囲終わっていない人、終わる予定のない人は、学校の授業進度に合わせて各単元入試レベルの問題まで解けるよう、深く勉強するようにしましょう。私大志望の人は10月から、国公立志望の人でも遅くとも11月からは、学校の進度にかかわらず志望大学の過去問に取り組んでください

■既卒生について

ひと通り物理の学習をしたことがあるというのが前提です。

まずは基本的な問題を解いて各単元の復習をしましょう。当たり前のように解ける問題でも、「なぜその関係式が成り立つのか」「別解はほかにないだろうか」といったように、現象をより深く理解するように解いていってください。

基本的な問題が載っている問題集としては、『入門問題精講』『基礎問題精講』『物理のエッセンス』『良問の風』などが挙げられます。『入門問題精講』は『基礎問題精講』とセットで、『物理のエッセンス』は『良問の風』とセットで演習するとよいでしょう。取り組むのはどちらかのセットだけでかまいません。問題演習をしていて疑問が残った部分は、どんな些細なことでも教科書に戻るなどして解決しておくことを心がけましょう。この基礎段階を終わらせる目安は6月末です。

次の段階ですが、上位校を目指す人はさらに一段階上の問題集を演習します。例えば『標準問題精講』や『名問の森』などです。『入門問題精講』『基礎問題精講』を演習した人は『標準問題精講』を、『物理のエッセンス』『良問の風』を演習した人は『名問の森』を演習するのがよいでしょう。この段階で意識することは、問題文をどのように解釈し、自分の知っている解法に結びつけるかということです。応用問題や入試問題といっても、基本問題と解法が大きく変わるわけではありません。9月末までにこれらの問題集をひと通り終わらせるのが理想です。

10月からは過去問に移りましょう。赤本や25ヶ年シリーズ、実戦問題集などで志望校対策を行ないます。応用レベルの問題をもう少し解きたいという人は、並行して『難問題の系統とその解き方』などを必要に応じて行なうとよいでしょう。

単元別に見る攻略のコツと勉強法【物理基礎編】

ここからは、各単元ごとに攻略のポイントや勉強法を細かく解説していきます。まずは物理基礎の単元です。

【運動とエネルギー】

まず始めに物理の中で大きな柱となっている力学です。

タイトルにもなっている「運動とエネルギー」という部分に焦点が当てられており、円運動や単振動などの様々な形の運動は、この「物理基礎」ではなく「物理」で取り扱うことになります。力学は、どの大学入試でも大問で1題以上、全得点の3割を占めます。単元的にも現象が目に見えやすいので理解するのに大きな苦労はありませんが、運動方程式と「エネルギー」という概念をしっかりと理解して使いこなせるかが重要なポイントです。

■運動の表し方

この単元は、力学の基本となる物理量である「速度」「加速度」「変位」の定義とこれらの関係がポイントとなります。

まずは、語句の定義についてです。まずは速度が向きを含む「単位時間当たりの位置の変化」だということ、加速度が向きを含む「単位時間当たりの速度の変化」だということ、またこれらが文字を使ってどのように表されるのかを理解しましょう。併せて「変位」という語句の定義や、変位と移動距離の違いも理解しましょう。

語句の定義をしっかり理解したあとに、これらの関係について理解していきます。まずは「距離=速さ×時間」というすでに知っている関係式を文字で置き換えると「x=vt」となること、これは「等速直線運動」における関係式であること、これがv-tグラフにおいてt軸と平行な直線で表されること、グラフの直線とt軸で囲まれた四角形の面積が距離であることを理解しましょう。

次に、加速度の定義式において、時刻0(t=0)での速度をv0、時刻tでの速度をvとすると v=v0+at となることを理解しましょう。そして、この v=v0+at という式をv-tグラフ上で表すと、切片が v0 、傾きが a のグラフになり、さらにこのグラフの直線とt軸の台形の面積を出せば x=v0t+1/2at2 という変位を求める式が出てくることを理解しましょう。そして、加速度が負の場合や、グラフがt軸を下回る場合に変位や移動距離がどのようになるか、教科書にも詳しく書いてあるので、これらも見ながらしっかりと理解しましょう。

これらの理解が済んだら、自由落下、鉛直投げ上げ、鉛直投げおろしについて、それぞれの運動をしっかりと等加速度運動の公式を使って考えられるように実戦演習していきます。

■運動の法則

前単元で等速直線運動、等加速度直線運動における運動の表し方について理解しました。次の単元では、運動が変化するもとになる「力」の表し方や性質、力と運動の関係を理解します。

まずは力を表すのに「向き」「大きさ」「作用点」に注目すること、これらが変化すると物体の運動がどのように変化するのか(力の向きを変えると運動の方向が変わる、など)を理解しましょう。また「作用線」の定義も理解しておくことが重要です。

これらを理解したら、具体的な力である「重力」「張力」「垂直抗力」「摩擦力」「弾性力」「浮力」について、何が及ぼす力なのか、力の3要素はどうなっているか、力の大きさはどのように表されるのか、をそれぞれしっかりと理解しましょう。特に、摩擦力には静止摩擦力と動摩擦力があります。これらの違いはしっかりと理解しておきましょう。また浮力に関連して、圧力や水圧についても理解しておきましょう。

力をどのように表すのかを理解したら、次は物体にはたらく力の関係についてです。具体的には「力の合成・分解」「力のつり合い」「作用・反作用の法則」です。力の合成・分解についてはベクトルの考え方を用います。力のつり合いと作用・反作用の法則は、同じ大きさの力が逆向きにはたらいている関係ですので、違いをしっかりと理解しておく必要があります。

以上のことを理解したら、教科書の例題や問題集で、力のつり合いが正しく理解できているか確認してください。各物体にはたらく力やそれらの関係を適切に考えられないと、次の運動方程式の単元に進めません。

力の三要素、いろいろな力、合成・分解、作用・反作用の法則を理解したら、これらの考え方を総合して考える運動の法則(運動の第一法則、運動の第二法則)に進みましょう(ちなみに、運動の第三法則は作用・反作用の法則です)。運動の第二法則は、ma=F と表わされ、「物体に生じる加速度はその物体に加わる力の大きさに比例し、物体の質量に反比例する」という直感的にも理解できる内容です。ただし、力と加速度には向きがあるベクトル量であるということ、力はその物体にはたらく力の合力であるということは押さえておきましょう。

そして実際の問題演習を通して、物体にはたらく力を運動方向と運動に垂直方向に分解して、運動方向に運動方程式、運動方向と垂直な方向はつり合いの式を立てるということをまず理解しましょう。さらに、物体にはたらく力を全て挙げることや、力の向きをプラスマイナスで向きを考えることなどを確認してください。

特に最大摩擦力や動摩擦力は、運動方向の力を考えるのに運動と垂直な垂直抗力も考える必要があります。運動方程式を立てるということは力学においても非常に重要な部分なので、反復練習をして最短時間で正確に行なえるようにしておきましょう。

■仕事と力学的エネルギー

この単元は、運動方程式以上に重要である「エネルギー」の概念、「仕事とエネルギーの関係」を理解します。

まずは、物理における「仕事」というものの概念を理解しましょう。概念を理解すれば、運動方向と力の向きが違う場合は力を運動方向に分解するということも理解できるはずです。次に、仕事率の定義を理解し、物体の運動が等速直線運動であれば仕事率が「力×速さ」で書けることまで理解しましょう。さらに仕事の原理という部分も、実体験に即せば理解するのにそれほど難しくはないかと思います。

ここまで来たらいよいよエネルギーについてです。
「物体がE[J]の仕事をする能力をもつとき、物体はE[J]のエネルギーをもつという。」
この文章は教科書からの引用ですが、これがエネルギーの全てです。運動エネルギーや重力による位置エネルギー、弾性力による位置エネルギーの例を参考にしながら、エネルギーの概念と仕事とエネルギーの関係を理解してください。

また、これらのエネルギーの具体的な形(運動エネルギーであれば 1/2mv2など)も覚えておきましょう。重力による位置エネルギーや弾性力による位置エネルギーは基準の位置があるということも必ず確認して理解しておいてください。力学的エネルギーが何を指すか、力学的エネルギーが保存されるとはどういうことか、といった内容は、ここまでの単元がしっかりと押さえられていれば、理解に大きな問題はないはずです。

【熱】

物理基礎における熱の単元は、物質の状態変化と熱量保存の法則が大きなテーマです。その他にも可逆変化、不可逆変化、内部エネルギー、熱力学第一法則など、知識として知っておくべきことはあります。教科書のすみずみまで読みこみ、持っているのであれば図説にもしっかりと目を通しておきましょう。

■熱とエネルギー

まず「熱(熱エネルギー)」と「温度」というものの概念、特に両者の区別を、教科書をよく読んで理解しましょう。現実では「熱」という言葉と「温度」という言葉はそれほど区別がされていないかと思われますが、物理では厳密な区別がなされています。まずはその区別をしっかりと行ないましょう。そしてそれに付随する「ブラウン運動」「熱運動」「セルシウス温度」「絶対温度」「熱平衡」などの用語の定義も理解しておきましょう。

次に、熱量保存の法則に関係する「熱量」「比熱」「熱容量」の定義を理解します。その際は単位に注意してください。これらの定義をしっかり理解したうえで、熱量保存の法則を理解しましょう。熱量保存の法則はエネルギー保存の法則の一部なので、力学的エネルギー保存則を理解したあとでは特に難しく感じることはないはずです。

熱量保存の法則の次は、物質の三態と状態変化についてです。ここでは各状態変化と潜熱についての理解が主になります。これらが終わったら、「内部エネルギー」「熱力学第一法則」「可逆変化・不可逆変化」「熱機関」「熱効率」などについて理解しましょう。これらには複雑な計算はありませんが、コジェネレーションなど実際の装置や事象などとの関連を意識することが大切です。

【波】

波というのは「ある点で生じた振動が次々と伝わる現象」であり、波を理解するということはすなわち、媒質の振動の様子や変化を理解するということです。波は様々な性質を持っており、日常生活にも大きく関わっている現象です。ひとつひとつ丁寧に理解していきましょう。

■波の性質

まずは波の特徴を表す物理量である「波長」「振幅」「振動数」「周期」の定義を理解しましょう。振動数と周期の関係、波の速さと波長、振動数との関係など、基本的な関係式を押さえるのも重要です。また、波には縦波と横波の2種類あります。縦波、横波の違い、それぞれ具体的にどのような現象があるのか、縦波を横波のように表す方法、縦波における媒質の疎密について理解しましょう。

次に、波の性質である反射と重ね合わせについて理解していきます。最初に波の反射についてです。光でよく知られているように、全ての波には反射の法則が成り立ちます。自由端反射と固定端反射について、それぞれ反射の前後で波形がどのようになるか、確実に描けるようにしておきましょう。さらに波の性質としての重ね合わせと独立性についても理解してください。

■音

典型的な縦波で、実生活においても身近な音(音波)についてです。

まず音を特徴づける音の三要素が、波を表わすどの物理量に対応するのかを理解しましょう。そして音における反射、屈折、回折、干渉の各性質が実生活においてどのようなものか確認してください。また、音の干渉における特別な場合としての「うなり」について、どのような原理でうなりが起こるのか、1秒間に聞こえるうなりの回数について理解しましょう。

次に弦の振動についてです。弦の振動がどのように伝わり、どのように反射し、どのように干渉するのか、干渉した結果どのような定常波ができるのかという原理的な理解をまずはしっかりと行ないましょう。その次に定常波の形状と様々な物理量の関係などを、問題演習を通して学んでください。

弦を伝わる波の速さの公式 v=√S/ρ(Sは弦の張力、ρは弦の線密度)は、問題文に書いてあることが多いのですが、覚えておいて損はありません(単位を考えればわかりやすいと思います)。気柱の共鳴は、縦波で考えるということが弦の振動と異なる部分です。また、閉管と開管の違いや開口端補正など、細かく考えなければならない部分が多くありますので、区別して確実に理解しておきましょう。

【電気】

電気分野は力学と同様、多くの大学で大問1題が出題される単元です。物理基礎の分野では複雑な概念や計算はなく、例えばオームの法則のような高校までに学習する事項のほか、半導体や電磁波など知識として知っておくべき事項も多くあります。「物理」まで入試で必要な人は物理基礎の電気は疎かになりがちなので、細かな部分まで気を抜かずに学習してください。

■物質と電気抵抗

まずは電気に関する現象は正負2種類の電気が起こすこと、これらは原子核中の陽子と電子によって担われていることを理解しましょう。そのうえで、これらの電気の性質や静電気、導体と不導体の違いとその理由などを理解してください。

電気の流れである電流についてです。まずは電流の定義である I=Q/t の意味するところを完全に理解してください。次にオームの法則ですが、ここで電圧の定義は正確に理解しようとすると物理基礎の範囲を超えてしまうので、この時点では教科書の図を参考に中学校までの理解でかまいません。

この単元で新たに理解することは、抵抗値と抵抗の長さや断面積との関係、抵抗率とは何かということと、 R=ρ l/S という関係式です。この部分は物理でさらに詳しく学習します。抵抗というものがこれまでより深くできたところで抵抗の接続を考えてみると、抵抗を直列に接続することは抵抗の長さを長くすること、抵抗を並列に接続することは抵抗を並列につなぐことに相当することがわかり、先ほどの R=ρ l/S という関係式との対応がよく理解できると思います。

ジュール熱と電力についても詳しくは物理で学習しますが、現段階では少なくとも教科書に書いてあることを理解し、問題が解けるようにしておきましょう。

■交流と電磁波

交流は「物理」でも学習する単元で、「物理」における交流の単元を完全に理解するには数式を使う必要があります。まずはこの物理基礎の交流の単元で、知識や現象を覚えておきましょう。

まずは交流と直流の違い、交流における周期、周波数、実効値などの各用語と関係式を理解しましょう。次に、交流発生の原理について理解しましょう。これは中学校で学習する電磁誘導の法則が深く関係しており、「物理」においても重要な考え方なので確実に理解してください。

電磁誘導の法則を使って交流発生の原理がわかれば、交流の発生による変圧器の原理も理解できると思います。変圧器におけるコイルの巻き数と交流電圧の関係式の導出は「物理」の範囲なので、この単元では結果だけ覚えておきましょう。また、変圧器に関連して送電線による電力損失に関してもしっかりと自分で導出できるように理解しましょう。電力損失に関しては、入試においても知識問題や計算問題として出題されます。

【物理学と社会】

この単元は特別に取り上げて学習することではないと思う人が多いかもしれません。しかしながら、ここで取り上げられている「エネルギーとその利用」「物理学が拓く世界」の2単元とも物理学における重要なテーマであり、関連する問題が入試でも出題されることはあります。また、力学、熱力学、波動、電磁気学、原子の各分野に通底する概念や考え方なので、この単元を学習することによって単元ごとの理解がいっそう深まることでしょう。

■エネルギーとその利用

「エネルギー」という概念は力学で初めて学習し、力学分野だけでなく熱分野、電気分野でも出てきました(「物理」においては原子分野でもエネルギーの概念は出てきます。波動分野においては高校物理の範囲でエネルギーという概念を使うことはほとんどありません)。各分野で学習した力学的エネルギーや熱エネルギーのほかにも、化学エネルギーや光のエネルギーなど様々な形態のエネルギーが存在します。これらのエネルギーに関する事項を教科書や図説も用いて理解しましょう。

また太陽の光エネルギーは太陽電池を通して電気エネルギーに変換されるといった、エネルギーの変換についても理解しましょう。

■物理学が拓く世界

この単元では物理学という学問が実生活とどのように関わっているかを学習します。入試での状況設定に使われる場合もありますし、例えば特殊な医療機器が題材にされる場合は、その医療機器について予備知識があるかどうかが、問題の解きやすさを左右します。教科書や図説などで幅広く知識を身につけましょう。

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単元別に見る攻略のコツと勉強法【物理編】

次に物理の単元です。

【力と運動】

■平面内の運動

この単元では、物理基礎で学習した等加速度直線運動である自由落下や鉛直投げ上げ運動などの1次元の運動を2次元(平面)の運動に考え方を拡張します。そのためにはベクトルの考え方が身についていないといけません。数学で学習したベクトルの考え方をまずは復習しましょう。

1次元の運動では速度の向きはプラスとマイナスで単純に表されましたが、2次元の運動ではベクトルの足し算、引き算になるため、大きさを求めるときには単純に大きさの足し算にはならない、ということを明確に意識しましょう。あとに出てくる運動量保存の法則の単元などでも出てきます。以上のことを理解して、速度、加速度、相対速度の項目を改めて見直しておきましょう。

次に水平投射、斜方投射です。「平面内の運動は、垂直方向と鉛直方向に分けて考える」という大事な考え方を理解しましょう。なぜそのように分けて考えるかというと、重力がはたらく方向である鉛直方向は、それと垂直な水平方向に力を及ぼさないため、水平方向と鉛直方向を独立して考えることができるからです。そして、水平方向は等速運動、鉛直方向は重力による加速度運動(自由落下、鉛直投げ上げ、鉛直投げおろし)となります。

これらの基本を理解したあとは問題演習を繰り返して、問題が解ける形で身につけましょう。

■剛体

物理基礎の力学や前節の平面内の運動では、物体の運動を考える際に物体の大きさを考慮することはありませんでした。しかし、物体の大きさは、物体の「回転」というものに大きく関わってきます。同じ向き、同じ大きさの力を加えても、物体のどこに力を加えるのか(作用点がどこか)によって物体の運動(物体の回転の度合い)が変わってきます。この物体の回転に関わる量が「力のモーメント」です。

考え方は「てこの原理」と同じなので理解するのに苦労はしないでしょう。しかし、物体にかかる力が、物体の回転中心と作用点を結んだ直線と直角でない場合は、力を分解したり、「力を作用線上で平行移動してもその物体に与える効果は変わらない」という作用線の性質を使ったりして適切に処理する必要があります。効率の良い処理の仕方は問題の状況によって異なるので、演習で確認しましょう。

力のモーメントの考え方を理解したら、次は「重心」です。重心という概念が何か、重心を扱うことによる利点などを理解しましょう。その上で重心の位置を導出できるようになりましょう。物体の形状や配置によっては重心が物体の外部にある場合があります。このことに違和感を持つ人がいますが、重心の概念をちゃんと理解していれば何の不思議もありません。

■運動量の保存

この単元では、物体の運動を特徴づける物理量である「運動量」と「運動量保存の法則」を理解します。物理基礎で力学的エネルギー保存の法則というものを学習しましたが、力学的エネルギーが成り立たない場合でも運動量保存の法則が成り立つ場合があるなど、物体の運動を考えるときに「運動量」という概念を導入することによって、物体の運動をより深く理解できるようになります。

運動量を理解する第一段階として「力積」という考え方を理解しましょう。さらに、加速度の定義式から、力積が運動量の変化量で表されるということも理解しましょう。この導出は次の運動量保存の法則を理解するうえで非常に大事なので必ず自分で導出できるようにしておいてください。運動量保存の法則を導出する過程で「2物体にはたらく力が作用・反作用の関係にある」ということを用います。これが運動量保存の法則において決定的に重要なことで、実際に問題を解く場合にも2物体にはたらく力が作用・反作用の関係にあるのかを見極めることが重要です。

また、運動量保存の法則が成り立つ場合に物体の衝突があります。この物体の衝突を考えるときに反発係数という概念が導入されます。反発係数の定義は「衝突前後の2物体の相対速度の比の絶対値」です。この定義と、反発係数の値によって運動の様子が衝突前後でどのようになるのかも併せて理解しましょう。

■円運動と万有引力

円運動は加速度が常に速度と垂直は方向にはたらく運動です。「物体にはたらく力を考えて運動方程式を立てる」という大枠は変わりませんが、「角速度」や「周期」という考え方が新しく導入されたり、加速度の大きさが見慣れない形であったりと、これまで学習したものとは異なります。まずは各用語の定義と関係式の導出をしっかりと理解しましょう。

「遠心力」という言葉を聞いたことがあると思います。これは円運動している物体にはたらく「慣性力」です。慣性力というのは加速度運動している観測者から見た、物体にはたらく「見かけの力」です。慣性力は円運動している物体のみで考えるわけではないのですが、円運動の単元で扱うことが多いので、遠心力のイメージをもとに理解するとよいでしょう。また、慣性力は見かけの力なので、「どの観測者から見ているのか」ということが非常に大事になってきます。加速度運動をしている2物体を扱う場合は特に観測者のことを意識しましょう。

円運動についてひと通り理解をしたら、次は単振動の学習に移りましょう。ばねにつながっている物体の運動が代表例で、物体にはたらく力が位置によって異なるため等加速度運動ではありません。単振動は円運動をスクリーン上に射影した運動なので、円運動を基本として理解していくとよいでしょう。

単振動においては、「振幅」「周期」「振動数」「角振動数」が運動を特徴づける物理量で、これらに加えて「振動中心」というものも特に問題を解くうえでは重要になってきます。単振動における変位、速度、加速度がそれぞれ円運動とどのような対応関係にあり、具体的にどのように表されるかを理解しましょう。単振動の加速度がどのように表されるかが分かれば、水平ばね振り子や鉛直ばね振り子など具体的な状況設定に応じて運動方程式がどのように表されるかも確認していきましょう。

また、鉛直ばね振り子についてはつり合いの位置を基準とした力学的エネルギー保存則についても理解しておきましょう。このつり合いの位置を基準とした力学的エネルギー保存則は、問題をなるべく間違いが少なく短時間で解くために必要な考え方です。

そして、単振動を理解したら単振り子まで一緒に理解しておきましょう。単振り子は近似を用いますが、難しいものではないため、教科書の記述を読めば理解できるかと思います。

円運動の単元の総仕上げは「万有引力」です。惑星や衛星の運動は万有引力を向心力とする円運動なので、基本的には万有引力の式の形と円運動の運動方程式を立てることが大きな柱ですが、それに加えてこの単元では万有引力定数と重力加速度の関係やケプラーの3法則など、この単元独自に理解しておく事項があります。また、人工衛星に関する問題では相対速度や運動量保存の法則を用いる場合もありますので、問題演習をこなして様々なパターンに慣れていきましょう。

【熱と気体】

物理基礎での熱の単元は、「熱エネルギー」という観点が主でした。「物理」では熱エネルギーという観点も大きな柱ですが、「気体の分子運動」というミクロな視点から熱エネルギーをとらえるという考え方をします。ボイル・シャルルの法則や状態方程式など気体をマクロ的にとらえる見方と、気体の分子運動論というミクロ的にとらえる見方を結びつけて考えるようにしましょう。

■気体のエネルギーと状態変化

まずは、化学でも取り上げられる「ボイル・シャルルの法則」と「理想気体の状態方程式」の定性的な理解から始めましょう。温度を下げると体積や圧力が減るといったイメージは問題を解くときにも重要です。次にこれらの関係式をミクロな視点から導出していきます。その際には力積と運動量の変化や反発係数が1である弾性衝突の考え方を使います。これを機会に復習もしておきましょう。そして最終的に理想気体の状態方程式や二乗平均速度、内部エネルギーなどが導出されます。この導出過程自体が問題として出題されることもよくあるので、導出は必ず自力でできるようにしておきましょう。

次に気体における仕事とエネルギーの関係である熱力学第一法則について理解しましょう。熱力学第一法則を「⊿U=Q+W」と表現する場合と「Q=⊿U+W」と表現する場合がありますが、前者は「気体の内部エネルギーの増加は、気体に加えた熱量と気体にした仕事の和である」、後者は「気体に加えた熱エネルギーは、気体の内部エネルギーの増加と気体がする仕事の和である」という意味になり、Wの正負が異なってきます。「仕事とエネルギーの関係」という視点があれば特に難しくはないのですが、混乱してしまう人がいるので気をつけましょう。自分が理解しやすいほうでかまいませんので、どちらで表現するのかあらかじめ決めておきましょう。

気体が状態変化をする特別な場合として、定圧変化、定積変化、等温変化、断熱変化があります。これらの変化がどのようなものかを理解し、各場合において熱力学第一法則がどのように書き換えられるかを理解しましょう。また、気体における比熱に対応するものして「モル比熱」というものがあります。モル比熱の定義と特別な場合としての「定積モル比熱」「定圧モル比熱」を理解し、これらの関係も導出できるようにしておきましょう。

気体の状態変化を理解するのに「P-Vグラフ」をよく使います。定圧変化、定積変化、等温変化、断熱変化がそれぞれP-Vグラフ上でどのように表現されるのか、それはボイル・シャルルの法則からどのように導かれるのかをしっかりと理解しましょう。ボイル・シャルルの法則とP-Vグラフの関係をしっかりと理解できれば、P-VグラフをV-Tグラフに変換するということは特に難しくないと思います。また、P-Vグラフにおける「気体がする仕事」「気体がされる仕事」の関係も理解しましょう。

最後に、熱機関と熱効率についても理解しておきましょう。気体の状態変化に関する問題が出題される場合には、最終的に熱効率まで計算させられることがよくあります。熱効率は定義が少し紛らわしいので確実に理解しておいてください。

【波】

「物理」での波動分野は、屈折やドップラー効果、光の干渉などの様々な現象を、式を扱って理解していきます。このため、現象を式と結びつけて考えることが非常に重要になってきます。また、特に光の干渉では近似を頻繁に使いますので、近似の考え方についてもしっかりと理解しましょう。

■波の伝わり方

この単元では、最初に正弦波を式で表します。位置xの時刻tにおける正弦波の式が、原点の振動との時間差を用いて表すということを理解しましょう。数学におけるグラフの平行移動の考え方を使えばわかりやすいと思います。平行移動の考え方を使えば、正の向きに進む波の式と負の向きに進む波の式の違いも理解しやすいでしょう。

波の式が理解できたら、逆向きに進む2つの進行波が定常波を作ることを実際に計算してみましょう。ここでは三角関数の和積の公式を使います。そして、位置xの時刻tにおける定常波の式から節の位置などを求める考え方まで理解してください。

次に波の干渉ですが、干渉の原理は比較的容易に理解できると思います。しかし実際に問題を解いていくと様々なパターンが出てきますので、問題を通して干渉の原理にいかに当てはめるのかを演習してください。特に水面波の干渉に関しては波源と節線や腹線の数と波源の距離、波長との関係や、干渉の様子をある直線上で見たときの波形がどうなるかということが問題の中でよく問われます。

■音の伝わり方

この単元は、主に音に関して身近な物理現象であるドップラー効果についてです。ドップラー効果は、音源や観測者が運動することによって、本来出している音の振動数と違って聞こえる現象です。公式さえ覚えておけば多くの問題が解けてしまいますが、それでは本質的な理解ではありませんし、導出過程そのものが出題される場合もあります。

音源が動く場合は、音源が停まっている場合と比べて音波の波長が変化します。観測者が動く場合は、音波の波長は変化しませんが、観測者が停まっている場合に比べて観測する音の範囲が変化します。音源と観測者が両方運動している場合は、両方停まっている場合に比べて音波の波長も観測する音の範囲も違ってきます。このような現象の理解からドップラー効果の公式を必ず導出できるようにしておきましょう。

また、導出過程をしっかり理解していればわかりますが、ドップラー効果は光や水面波など波全般に関する現象です。光の単元でもドップラー効果の問題が出題されることはあるので、音だけの現象ではないことは理解してください。そして、ドップラー効果の基本が理解できれば、斜め方向のドップラー効果や円運動する音源によるドップラー効果など、応用的な考え方も問題演習とセットで進めていきましょう。

■光

光は電磁波という波の一種で横波です。光も波なので反射、屈折、回折、干渉などのこれまで学習した波の性質を持っていますが、例えば「光学的距離」という考え方など、光分野独自の考え方もあります。これまでに学習した波の性質を思い出しながら、さらに光独自の考え方について理解を深めていきましょう。

はじめは、光に関する諸性質です。まずは反射の法則ですが、光についても入射角と反射角が等しいという反射の法則は成り立ちます。そして光が反射するときは、光が入射する媒質と反射面との絶対屈折率の大小関係によって固定端反射になったり自由端反射になったりします。なぜこのようなことが起きるのかというのは高校物理の範囲を超えた部分ですので、理屈は抜きにして結果を覚えるようにしましょう。

次は屈折の法則です。屈折の法則を自分で導出できるようにしておくのはもちろんですが、絶対屈折率と相対屈折率の定義などもしっかり理解しておきましょう。また、屈折の法則に関連して「光路長(光学的距離)」という考え方も理解しておきましょう。この光路長は光の干渉において非常に重要になってきます。また、波面と波の進行方向の関係、入射角と波面の関係など、細かい定義や関係も見逃さないようにして下さい。

回折については、特に数値的に何か求めるということはないので、どのような現象でどのような特徴を持つのかを理解して下さい。また、反射、屈折、回折についてはホイヘンスの原理を使っても説明できるようにしておきましょう。

最後に光の干渉についてです。波の伝わり方で学習したように、光の干渉についても波源(光源)からの距離の差が半波長の偶数倍か奇数倍によって光が強め合ったり弱めあったりします。しかし、光が進む経路の媒質が異なっている場合は光路長を用いて考えなければいけません。光が反射する場合は、反射面との絶対屈折率との関係によっては、固定端反射になったり自由端反射になったりしますので注意が必要です。

このように、光の干渉は注意しなければならないポイントが複数あるので、そのぶん出題されやすい単元といえます。光の干渉に関しては「ヤングの実験」「回折格子」「薄膜による光の干渉」「くさび形空気層による干渉」「ニュートンリング」など様々なパターンを理解しましょう。その際には近似の使い方にも注意して下さい。

次はレンズについてです。凸レンズについては学習したことがあり、作図なども知っていると思います。高校の物理では、これらの関係を数式(レンズの公式)で表します。レンズの公式の導出は図形的に求めるので、図中における三角形の相似に注目する見方を身に着けましょう。凸レンズの関係式が理解できたら、次は凹レンズです。凹レンズと凸レンズとの性質の違いに注目しながら、凹レンズの公式も導出できるようにしましょう。そして、余裕のある人は球面鏡についても理解しましょう。

【電気と磁気】

「物理」における電気分野は、静電気的な力や位置エネルギーについて理解を深めます。電気的な力は目に見えないため、電場や電位という概念を導入します。その中で電気力線や等電位線というような可視化を行ないますが、目に見えない電気現象をいかにイメージして理解するかということが重要になります。また、磁気現象は電気現象と密接に関連しているので、それらの関連をしっかり意識しながら電磁気現象を理解しましょう。電磁気現象においても仕事とエネルギーの関係は重要になってきます。

■電場

この単元では、電気的な力を伝える「電場」と力と密接に関係がある位置エネルギーとしての「電位」という考え方を理解します。

電場という考え方を理解する手始めとして、静電誘導と誘電分極について理解しましょう。電気的な力が導体や不導体でどのようにはたらき、どのような結果に結びつくのかを理解します。そして電場、電場を可視化した電気力線という考え方を理解し、クーロンの法則から電場の強さを求める考え方、ガウスの法則という電気力線と電場の強さの関係を理解しましょう。さらに、一様な電場の場合と点電荷が作る場合の考え方の違いについても理解しましょう。

次に電位という考え方を理解します。電位というものは静電気力による位置エネルギーに関連する量で、重力による位置エネルギーmghにおける高さhに相当するものです。この重力による位置エネルギーの考え方との対比をしてください。そして、一様な電場中の電位、点電荷が作る電位について違いを意識しながら理解しましょう。さらに、導体や不導体が電場中に存在するときに内部の電場や電位がどうなるのかということも理解しましょう。

最後に、この単元の応用としてコンデンサーを理解します。ここまで学習した電場、電位の考え方を理解できていれば、コンデンサーの極板間の電場、電位、電気力線の本数、コンデンサーの電気容量と極板間隔や極板面積、極板間に誘電体を挟んだ場合の電気容量の関係などは比較的容易に理解できると思います。

また、コンデンサーに蓄えられる静電エネルギーに関しては、W=QV という仕事がQ-Vグラフ上でどのように表されるのかということをもとに理解していけばよいでしょう。さらに、コンデンサーの電気容量と極板間隔や極板面積の関係からコンデンサーを直列につないだ場合、並列につないだ場合の合成容量の考え方を理解しましょう。

■電流

この単元では、電流というものを電子の運動から理解し、回路上において電流がどのように流れるのかという法則を理解します。

まず始めに金属中における電子の運動から電流の式を導出することを理解し、自分でも導出できるようにしましょう。電場、電位というものが理解できていれば特に難しくはないと思います。この導出過程でオームの法則が導かれ、さらに抵抗と抵抗率、抵抗の長さ、抵抗の断面積の関係が導かれます。

次に回路を流れる電流についてですが、キルヒホッフの法則というものが非常に重要な考え方です。電流に関するキルヒホッフ第一法則と、電圧に関するキルヒホッフ第二法則というものがあります。概念自体はそれほど難しいものではありませんが、実際の問題にどのように適応するのかということは演習を通じて理解してください。コンデンサーやコイル、非直線抵抗を含む回路でも成り立つので、法則の根本原理をしっかり理解して各回路に関する問題を解いていきましょう。

また回路の問題には、ホイートストンブリッジ回路、「スイッチを閉じた瞬間」にどのようになるか、「スイッチを開いた瞬間」にどのようになるか、コンデンサーを含む回路におけるスイッチを切り替えるとどうなるか、コンデンサーを充電する際に電流と電圧の時間的変化はどのようなグラフになるか、など様々なパターンがあります。この単元の問題演習をする際には、パターン毎に問題演習をして、自分が解ける問題のパターンをひとつずつ増やしていくような取り組み方をするとよいでしょう。パターンが多いため、まとめてやろうとすると考え方がごちゃ混ぜになってしまうことがありますので注意しましょう。

また、この単元の周辺知識として電流計、電圧計、分流器、倍率器、半導体についても理解しておいてください。

■電流と磁場

この単元では磁気についての性質と電気と磁気(電流と磁場)の関係について学習します。

最初に、磁気についての諸性質を理解します。磁気の種類とどのように力がはたらくか、磁場、磁力線、磁力線と磁気的な力がはたらく力の向き、透磁率、比透磁率、磁束密度、磁束など磁気を理解するための様々な考え方と定義を理解しましょう。

次に、電流と磁場の関係について理解します。直線電流が作る磁場、円形電流が作る磁場、ソレノイドの電流が作る磁場について、それぞれ電流と磁場の強さと向きについての関係を理解しましょう。電流が作る磁場の向きについては、これまで学習したことのある「右ねじの法則」で理解できます。強さについてはよく似た式の形をしているので、区別をしっかりしておいてください。また、この関係式の導出は、高校物理の範囲を超えているので結果だけ覚えるようにしてください。

電流が磁場から受ける力の向きは、すでに学習した「フレミングの左手の法則」で求められます。力の大きさは直感的に理解できるかと思いますので、イメージとセットで覚えるようにしてください。

さらに電流が受ける力の大きさを、「ローレンツ力」という運動している荷電粒子が磁場から受ける力という観点から理解できるように、ローレンツ力についても理解しましょう。ローレンツ力に関連して、サイクロトロンという加速器についても勉強しておくとよいでしょう。さらに、この単元の周辺知識としてホール効果についても理解しておきましょう。

■電磁誘導と電磁波

この単元では、コイルを貫く磁場が変化した場合やコイルが磁場中を運動する場合に、コイルに電流が流れる現象である電磁誘導について理解していきます。

まずはレンツの法則を理解しましょう。レンツの法則を理解できたら渦電流という現象も理解できるので、併せて渦電流の現象を理解しておきましょう。次に、レンツの法則に基づいて電磁誘導の法則の式の意味と形を理解しましょう。

これを理解したら、磁場中を横切るコイルに生じる誘導起電力を電磁誘導から求めてみましょう。同じ現象を、磁場中を運動する荷電粒子にはたらくローレンツ力という観点から誘導起電力を求め、電磁誘導の法則から導いたものと同じになることを確認しましょう。磁場中をコイルが通過すると誘導電流が流れますが、コイルに電流が流れるということはエネルギーが発生しているということです。エネルギー保存則を考えると、このエネルギーはどこかから供給されているはずです。このように、誘導起電力や誘導電流を考える場合はエネルギーという観点を必ず持つようにしましょう。

入試問題でこの単元が取り上げられる際は、エネルギーに関する設問が出題される場合がほとんどです。また、電磁誘導の法則から導出される自己誘導の関係式と相互誘導の関係式も自分で導出できるようにしておきましょう。さらに自己誘導に関連して、コイルに蓄えられるエネルギーに関しても理解しておきましょう。

続いて、電磁誘導の法則からの発展として交流について学習していきます。交流電流は直流電流と違い電流(電圧)の向きが周期的に変化しますが、この交流電流は磁場中のコイルの回転によって発生します。まずは電磁誘導の法則から磁場中のコイルの回転によって交流電流が発生することを理解しましょう。この際に交流電流で導入される電流や電圧の「実効値」という考え方と、電流や電圧の最大値と実効値の関係についても理解しておきましょう。

交流は発電所で発生させた電流を各家庭などに送電する際に使用されています。このときに変圧器を用いていますが、この変圧器における電圧と巻き数の関係は電磁誘導の法則から理解できます。変圧器の関係式を自分で導出できるようになるとともに、送電におけるエネルギーロスを少なくするためには送電する電圧を大きくすればよいということも、消費電力の式から導出できるようにしておきましょう。

次に抵抗やコンデンサー、コイルを交流電源につないだときにどのようになるのかを理解しましょう。交流電源に抵抗をつないだ場合、交流電源の電圧の大きさの変化と同じように交流電流の大きさが変化します。しかし、交流電源にコイルやコンデンサーをつないだときには振る舞いが異なります。具体的には交流電圧が最大になるときには、電流がゼロになります。

この現象を直感的に理解するには、コンデンサーに蓄えられる電荷が最大(コンデンサーにかかる電圧が最大)のとき回路に流れる電流がゼロ、コイルにかかる電圧が最大(電圧の変化がゼロ)のとき、自己誘導による電流がゼロとなることから理解できます。式の上でも電磁誘導の法則から導出できますが、微分の考え方を使いましょう。もちろん、微分の考え方から導出できるほうがよいのですが、実際の試験では導出する時間はないので関係式は覚えるようにしてください。

その際にリアクタンスという量が出てくるので、抵抗の場合、コイルの場合、コンデンサーの場合とそれぞれ区別して覚えてください。抵抗、コイル、コンデンサーをそれぞれ理解したら、直列回路や並列回路において組み合わさった場合も理解して下さい。その際には、直列につないだ場合の電流が極大になる現象、並列につないだ場合は電流が極小になる現象、コンデンサーとコイルによる振動回路など特徴的な現象は自分で導出できるようになりましょう。

最後に電磁波についても理解しておきましょう。電磁波は電場と磁場の振動が伝わる横波で、波長によって様々な種類の名前がついています。これらの種類と現象をしっかりと結びつけておきましょう。

【原子】

この単元では、原子の構造だけでなく、原子核の中でどのような物理法則が成り立っているのか、それによってスペクトルなどの現象をどのように理解できるのかということを学習します。原子内部における物理法則は、これまで学習した運動方程式などの考え方に量子条件のような原子物理独自の考え方をプラスします。

■電子と光

この単元では、物質の粒子と波動の二重性について学習します。原子サイズ以下のミクロな世界では全く違う物理現象が起こっていることの最たる例です。実験結果からそのような二重性は確かめられていますが、その結果は覚えておくしかないでしょう。全然違う法則が成り立っているのだと割り切って覚えてください。

まずは、原子物理学が発展するきっかけになった陰極線、トムソンの実験、ミリカンの実験について理解しましょう。これらについては、これまで学習した考え方を使って理解できるので復習にもなると思います。

次に、光の粒子性についてです。これまで学習した光は波動として扱ってきました。ここでは光を光子という粒子として考えなければ説明できない「光電効果」という現象について学習していきます。光電効果がどのような現象で、光を波として考えると説明できないのはなぜなのかということを理解しましょう。光を粒子として考えた場合においても質量はゼロなので、エネルギーもこれまで学習した運動エネルギーのように考えることはできません。光のエネルギーをどのように表すのか、プランク定数や仕事関数、阻止電圧などの量の定義や実験によってどのように求めるのか丁寧に理解していきましょう。

すでに学習したように光は電磁波の一種で、そのひとつにX線があります。光の粒子性に関する現象として、X線のコンプトン散乱についても理解しましょう。この現象から、なぜX線が粒子性を持つといえるのか、運動量をどのように定義するのか、散乱後のX線の波長の変化をどのように表すのかなどポイントとなる部分は多いので、確実に理解していってください。X線に関しては、X線の発生原理や特性X線、最短波長やスペクトル、X線回折など周辺知識も多くありますので、漏れのないようにしてください。

最後に物質の波動性についてです。ここでは、ド・ブロイ波長という考え方を理解しましょう。このド・ブロイ波長の考え方は、次の単元の水素原子モデルを考えるときに重要になってきます。

■原子と原子核

この単元では、原子核の内部構造や原子核反応について理解していきます。化学でも学習していますが、原子は中心に原子核があり、その周りに電子が存在しています。この構造を実験的に解き明かしたのがラザフォードです。このラザフォードの散乱実験の概要とそれによって原子核の構造がどのようにわかったのかを理解しましょう。

次は、水素原子模型について理解していきましょう。水素原子は原子核である陽子1つのまわりを電子1つが回っているという単純な構造です。これをクーロン力が向心力となる円運動と考えて運動方程式を立てます。さらに「量子条件」という新たな考え方を適応することで電子の半径やエネルギーを求めます。電子が存在する軌道半径が変化することによってエネルギーが放出されたり吸収されたりし、その放出されたエネルギーに相当する波長が水素原子に特有の線スペクトルになるという一連の流れを理解し、自分で導出できるようになってください。

このあとは原子核反応について学習していきます。原子核の構成や同位体について再確認したあと、統一原子質量単位で原子の質量を考えること、アルファ崩壊などの原子核崩壊、放射線とその性質について定義や現象を理解しましょう。

また、原子核崩壊を定量的に考える方法である半減期や原子核崩壊における運動量保存則やエネルギー保存則を理解しましょう。エネルギー保存則を理解する際には「質量とエネルギーの等価性」という原子分野特有の考え方を理解する必要があります。

最後に、この単元における周辺知識として、原子核反応における反応の種類、陽子や中性子のさらに内部構造である素粒子についても理解しておきましょう。

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物理の勉強におすすめの参考書・問題集

それではここからは、物理の学習を進めていくうえでのおすすめの参考書や問題集を、段階別に紹介していきましょう。

■基礎固め

『入門問題精講』

『入門問題精講』(旺文社)

ひとつの解法パターン毎に1問で、全117問という構成になっています。少ない問題数で基礎的な解法パターンを身につけることができます。

『物理のエッセンス』

『物理のエッセンス』(河合出版)

解説→例題→問題という構成で、物理の考え方や問題の解き方を丁寧に学ぶことができます。丁寧に学ぶことができるぶん、読んで理解し問題を解くのには少し時間がかかるかもしれません。

『面白いほどわかる』シリーズ

『大学入試 漆原晃の 物理基礎・物理が面白いほどわかる本シリーズ』(KADOKAWA)

参考書兼問題集。問題を解くときの考え方を丁寧に筋道立てて説明してくれています。参考書として使うのも可です。問題の難易度も高くないため、まずはこのシリーズを読破してから別の問題集に取り組んでみるのもよいでしょう。

■標準レベル

『基礎問題精講』

『入門問題精講』と同じように、ひとつの解法パターンに対してひとつの問題となっています。基礎固めを『入門問題精講』で行なった人は、この『基礎問題精講』で演習するとよいでしょう。その際にはぜひ、入門問題精講のどの問題に対応しているのかを意識してみてください。

『良問の風』

『良問の風 物理 頻出・標準入試問題集』(河合出版)

全148問の問題集です。『物理のエッセンス』の姉妹本ですので、物理のエッセンスで学習した人は次にこの問題集で演習していくのがよいでしょう。また、巻末に論述問題がついているのも特徴です。この論述問題も演習することで、物理現象に対する理解がより深まるでしょう。

■難関大学向け

『標準問題精講』

『標準問題精講』(旺文社)

『入門問題精講』『基礎問題精講』の姉妹本で、全90問の問題集です。入門問題精講、基礎問題精講で演習した難関大学志望の人は演習してみるとよいでしょう。解説もしっかりしているため、難関大対策としてじっくりと演習することができます。

『名問の森』

『名問の森 物理』(河合出版)

『物理のエッセンス』『良問の風』の姉妹本です。物理のエッセンス、良問の風で学習した人は、次にこの問題集で演習するとよいでしょう。問題を見て解き方がわからなければ、まずは「Point & Hint」を見てみてください。また、さらに演習したい人は、一部の問題の解答の末尾にある「Q」の設問も解いてみるとよいでしょう。一段と実力がつきますよ。

『難問題の系統とその解き方』

『難問題の系統とその解き方 物理』(ニュートンプレス)

入試レベルの問題を数多くこなしたい人には特におすすめです。例題が118題と、各単元に演習問題が20題程度ついています。例題だけでも十分な演習ができます。演習問題は解答が詳しくないということがありますので、演習問題を解く場合は学校の先生など質問できる人が身近にいる環境のほうがよいかもしれません。

その他の使い方としては、『標準問題精講』や『名問の森』を演習した人が、違うタイプの問題を演習するために取り組むのもよいでしょう。

『実戦物理重要問題集』

『実戦物理重要問題集』(数研出版)

入試問題から出題され、毎年少しずつ更新されています。近年の入試の傾向も踏まえた問題選定がされているといえるでしょう。

ただし解答があまり詳しくなく、なぜこのような解き方をするのかという考え方の部分が不足しています。演習問題を解く場合は、学校の先生など質問できる人が身近にいる環境のほうがよいでしょう。

『入試の核心』

問題数は113問で、標準問題とハイレベル問題に分かれています。特にハイレベル問題は、「描図力」「計算力(処理力)」「計算力(近似)」「論述力」「読解力」といった、ほかの問題集では特別に取り上げない部分に注目しているので、このハイレベル問題だけでも演習しておくと役立つでしょう。

過去問の取り組み方

■志望大学の過去問に取り組もう

私大志望の人は10月から、国公立志望の人でも遅くとも11月からは、赤本などを用いて志望大学の過去問を演習しましょう

演習する際は、実際に本番と同じ時間を計りながら取り組んでください。その後、自己採点で自分が間違えた問題だけでなく、時間配分や問題を解く順番が適切だったかも吟味しましょう。自分が間違えた問題を見直す場合は、解答を理解するだけでなく、自分がはじめてその問題を見たときにどのように考えるべきだったか、ということを常に意識しながら見直しましょう。

例えば、解答で運動方程式を立てていたとしても、なぜその問題で運動方程式を立てなければならなかったのか、ということを考えるということです。立式には根拠があるはずなので、その根拠を意識しながら解答を見直してください。また、学校の先生など身近にアドバイスをもらえる人がいるのであれば、ぜひとも自分の答案を見てアドバイスをもらいましょう。

最低でも過去3年分、できれば5年分を3回演習しましょう。過去問演習を行なうなかで、補強しなければならないタイプの問題や単元が明らかになれば、演習してきた問題集や、場合によっては教科書に戻って再確認することも必要になります。

■志望大学以外の過去問に取り組むのも効果的

自分が受験する大学の赤本を演習してさらに時間があるようであれば、志望大学以外の過去問演習もしてみてください。どの大学の問題を演習するかは「同じ難易度の問題を出題する大学」「同じ傾向の問題を出題する大学」のいずれかが適切ですが、応用力を身につけるためにあえて「全く違う傾向の問題を出題する大学」の過去問を演習することも考えてもいいかもしれません。いずれの場合を選択するにせよ、しっかりとした目的意識がない場合は、志望大学の過去問演習を何度も繰り返したほうがよいでしょう。

最後に

冒頭で、物理は化学や生物と比べて暗記する量が圧倒的に少なく、応用力がある人に向いている科目といえる、と書きました。問題の解法パターンもそれほど多くはなく、実際の入試問題はいくつかの解法パターンの組み合わせである場合がほとんどです。教科書や基本的な問題集で解法のパターンを知り、応用問題集や赤本で問題を解法のパターンに当てはまるように解釈することやパターンの組み合わせを身につけましょう。そうすれば物理が得点源になるはずです。