目次

  1. はじめに
  2. 概要
    1. 試験科目
    2. 試験時間
    3. 配点
    4. 出題の傾向と特徴(概要)
  3. 出題の傾向と特徴(詳細)
    1. 理論化学
    2. 無機化学
    3. 有機化学
    4. 高分子
  4. 試験対策・勉強法とおすすめ参考書紹介
    1. 教科書内容の振り返り
    2. 知識の補強
    3. 解法パターンの習得と計算力の増強
    4. 定番問題の習得
    5. 過去問演習

1. はじめに

東京慈恵会医科大学の前身・成医会講習所は、1881年に学祖・高木兼寛氏が開設しました。慶應義塾大学医学部、日本医科大学と並んで私立医学部御三家に挙げられることが多く、私立医学部の中でもトップクラスの難易度と言えるでしょう。

慈恵医大の化学は総合的な知識力・理解力が問われ、当然高校の教科書以上のレベルを求められます。理科系の科目の中でも頭一つ抜きんでた難易度のため、化学は相当高いクオリティで仕上げなければいけません。

以下、本学に合格するためのプロセスを詳しく解説していきます。

mtp-ec
苦手だった英語でほぼ満点を取って国立千葉大学医学部に現役合格した話。
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2. 概要

2.1 試験科目
1次試験
・英語
・数学
・理科(物理・化学・生物から2科目選択)

2次試験
・小論文
・面接

2.2 試験時間
1次試験
・英語(60分)
・数学(90分)
・理科(120分)※2科目選択

2次試験
・面接
・小論文
2.3 配点
1次試験
・英語(100点)
・数学(100点)
・理科(200点[100×2])

2次試験
・面接
・小論文

2.4 出題の傾向と特徴(概要)
全問記述式で、大問4題から構成されている。理論・無機・有機から総合問題が4題出題される。私大医学部御三家だけあって、私大最難関の難易度を誇っている。有機と高分子を関連させた問題や無機と理論を関連させるなど、総合的な知識力・理解力が問われる。特に有機化学の問題の難易度が極めて高く、誘導付きではあるが、高校の教科書では出てこない未知の物質や未知の反応が当たり前のように登場する。設問数自体はそれほど多くないが、問題文が長く、読解に時間を要するため、読解スピードは必要である。私大最難関の医学部なので当然ながら生物・物理の難易度も高いが、化学と比べると一段劣り、化学が勝負科目となる可能性が高い。そのため、化学に相当な自信がないと合格は厳しいと思われる。

3. 出題の傾向と特徴(詳細)

3.1 理論化学
例年、理論分野から大問2題ほど出題される。ほとんどの問題が融合問題である。例えば浸透圧の問題で、錯イオンや塩の加水分解などの電離平衡などを関連させたかなり複雑な融合問題や、電池と電気分解と熱化学方程式の融合問題にルシャトリエの原理を関連させて考察させるような問題が出題されていた。一つ一つの現象に対する理解力も問われているが、状況を整理する深い洞察力も問われている

3.2 無機化学
他の上位私立医学部と同様に、無機だけで構成される問題はほとんど見られず、出題される場合はほぼ理論との融合問題である。物質の性質について化学反応として理論化学的に捉えて考えさせる問題が多く、暗記重視ではないことが伺える。代表的な漂白剤である次亜塩素酸やケイ素化合物の問題などが出題されており、材料化学については知見を深めておきたい。

3.3 有機化学
有機の問題に関しては、例年2題ぐらい出題される。うち一題は、融合問題であることが多い。どの問題が題材が高校レベルを超え、大学教養課程で習うような未知の物質や未知の反応を扱っている。当然ながら誘導付きの問題であるので、文章読解能力が問われることになる。教科書に載っている基礎知識が抑えてあることは大前提であるが、標準的な問題集のみで対策することは極めて困難であり、国立上位校の過去問で対策していくことになる。

3.4 高分子
合成高分子、天然高分子ともに良く出題されている。単純な知識問題ではなく、ほとんどが思考力を要する問題である。グルコースやアミノ酸、核酸などの立体構造についても理解度を深めておかないと解答できない問題も出ている。生物化学に関する化学的なテーマに関しても良く出題されているので、生物学的な教養があると問題の読解には役に立つ。ただし、問題は化学的な内容が中心である。

4. 試験対策・勉強法とおすすめ参考書紹介

■Step.1 教科書内容の振り返り
教科書を用意し、一章ずつ読み込む。入試問題は、原則として教科書から出題される。東京慈恵会医科大は発展的な内容を多く含んでおり、各教科書の参考・発展・コラム・実験などには必ずを目を通して欲しい。教科書レベルを逸脱するレベルであったとしても基礎になるのは教科書に書かれている内容である。ただ眺めるだけではなく、書かれている内容を自分の中で噛み砕いて説明できるレベルでの理解を目指して欲しい。具体的には、公式を自分の手で導出したり、現象を自分の言葉で説目できるか確認したり、グラフから分かること、なぜそのような概形になるのか考察するなどに取り組んで欲しい。
ただし、教科書の表現は初学者には少し難しいこともあるので、Step.1では全てを理解する必要はない。この段階では、各教科書の発展やコラムには触れなくても良い。ざっとどんなことが書かれているか整理していくと良い。読んでもすぐには理解出来ないという人は、下記の紹介されている参考書などを教科書の対応する箇所を合わせて読み込むと良い。また、実験装置や沈殿の色など目で見た方が記憶に残りやすいので、資料集も一冊用意しておくと良い。得た知識をどう使っていくのかについては下記の問題集を利用して、確認していくと良い。

○参考書
『岡野の化学が初歩から身につく-理論化学1-』(東進ブックス)
『岡野の化学が初歩から身につく-無機化学+有機化学1-』(東進ブックス)
『岡野の化学が初歩から身につく-理論化学2+有機化学2-』(東進ブックス)
『フォトサイエンス化学図録』(数研出版)

○問題集
『セミナー化学』(第一学習社)
『リードα』(数研出版)

■Step.2 知識の補強
東京慈恵会医科大では、理論・無機・有機・高分子いずれも難易度が非常に高く、オーソドックスな問題は少ない。融合問題が多いことが特徴なので、各単元のつながりを意識して知識を身に付けていく必要がある。知っていないと解けない問題は少ないので、暗記することに重点を置くよりは、理解する流れで自然と覚えていくような形が望ましい。以下に各単元の注意すべきポイントとオススメの参考書について記載する。

○理論化学
理論化学のほとんどの問題が融合問題である。このような問題に対する解決力を身に付けるには、一つ一つの化学現象を自分の言葉説明したり、公式を自分で導出するなどの訓練が最も効果的である。知識の鵜呑みにするのではなく、アウトプットできるかどうかをしっかりと確認しながら進めて欲しい。気になったことは、化学の新研究などを使い、まずは調べるという学習姿勢も必要であろう。

『鎌田の理論化学の講義』(大学受験Doシリーズ)

『化学一問一答』(東進books)

○無機化学
化学物質の色やにおいを聞く問題のような単純知識で解く問題は少ない。無機は、理論と関連させて出題されるパターンが多いので、知識を身につける段階から無機の反応を理論と結びつけて知識を身に付けて欲しい。

『福間の無機化学の講義』(大学受験Doシリーズ)

○有機化学
一般的な構造決定の問題はあまり出題されていない。未知の物質や反応についての設問を誘導文を利用して解いていくようなスタイルが多い。未知のことを問われることが多いと言っても有機化学では基礎知識の積み重ねが大前提にあるので、まずは一般的な構造決定の問題がしっかりと解けるようにこのStepでは準備して欲しい。

○高分子
高分子に関しては、合成高分子・天然高分子共によく出題されるが、融合問題であることが多いのが特徴である。合成高分子については、基本的な計算方法をしっかりと身につけて欲しい。天然高分子に関しては、アミロースの立体構造が聞かれるなど見慣れない難問も登場している。構造化学的な理解を身に付けるためには、自分の手で構造が書いてみるなどして、イメージを身に付ける必要がある。ただの暗記に留まらない学習が必要である。

『鎌田の有機化学の講義』(大学受験Doシリーズ)

■Step.3 解法パターンの習得と計算力の増強
Step.3では、計算問題の解法の習得に向けて学習を進めていく。東京慈恵会医科大の計算問題は、問題分の文章が長く、思考力が必要な問題が多い。ただし、思考力が必要な問題も標準的な問題をいくつか組み合わせて作られているので、まずは標準的な解き方や考え方をしっかりと身につけて欲しい。また、全て難しい問題から構成されている訳はないので、標準的な問題を落とさないことも重要である。計算分量や設問数は決して多いわけではないので、一問一問正確に答えを出す計算力が欲しい。下記の問題集や参考書を使い、標準的な計算問題の解法を身に付けるとともに、計算の正確性やスピードを向上させて欲しい。

『鎌田の理論化学の講義』(大学受験Doシリーズ)

『基礎問題精講』(旺文社)

『ゼロから始める化学計算問題』(中経出版)・・・ドリル形式になっているので、苦手な人はこちらを使って練習すると良い。

『化学計算問題の徹底整理』(数研出版)・・・入試レベルの計算問題が良いという場合は、こちらの問題集で練習すると良い。

■Step.4 定番問題の習得
ここからは実際の大学入試問題を使って、定番の問題の解法を押さえていく。東京慈恵会医科大では、難易度の高いテーマから出題されるため、重要問題集や良問問題集のような標準的な問題集一冊に加え、標準問題精講や化学の新演習などの難易度の高い問題集にもしっかりと取り組んでおきたい。その際に、解法の暗記ではなく、なぜそのように考えたのかしっかりと振り返りを行って欲しい。

○問題集
『化学重要問題集』(数研出版)
『化学の良問問題集』(旺文社)
『化学の新演習』(三省堂)
『化学標準問題精講』(旺文社)

○参考書
『化学の新研究』(三省堂)

■Step.5 過去問演習
Step.1-4をクリアしたら過去問演習に入りましょう。
『東京慈恵会医科大学』(教学社)

本Stepでは下記のように過去問演習を進め、現時点での自分の学力を自己分析することを忘れないこと。時間を計って解き、解き切れなかった問題は時間を計らずに最後まで解く。採点後、解説を読み、解き方を理解する。自分には何が足らなかったのか自己分析を行う。自己分析を元に基礎の補強(Step.4)を行い、次年度に進む。

過去問をある程度進めたら、Step.4の自己分析を元に、同時並行で弱点補強を進めましょう。この時期に赤本や難しい問題ばかりに手を出したくなりますが、大事なことは難しい問題が理解できることではなく、合格点を取ることです。忘れていた知識を整理したり、計算のスピードや正確性を磨くことが意外と合格への近道だったりします。ちょっとした問題に足元をすくわれないようにしっかりと足場を固めましょう。

過去問を全て終えたら、東大や京大を始めとする上位国立の入試問題に挑戦しましょう。難易度は高いが、差も付きやすく合格への勝負科目となる。本学に合格したければ化学では誰にも負けないぐらいの実力を目指しましょう。