36協定とは

・ 36(サブロク)協定とは、労働基準法第32条で定められている法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて企業が労働者を働かせる際、企業と労働者が締結しなければならない協定。36協定さえ締結すれば、実質的に労働者を無制限に残業させられるとして、36協定の運用を見直すべきだとする声が高まったため、政府は法改正の準備を進めている。

・ 2017年3月28日、首相官邸で第10回働き方改革実現会議が開かれ、長時間労働の是正や賃金の引き上げなどが話し合われた。会議で配布された「働き方改革実行計画(案)」では、時間外労働の限度は「原則として、月45 時間、かつ、年360時間」であり、臨時的で特別な事情があったとしても上回ることができない時間外労働については「年720 時間(=月平均 60 時間)」と記載されている。さらに、「一時的に事務量が増加する場合」においても「単月では、休日労働を含んで100 時間未満を満たさなければならない」などの条件が加えられた。法律の改正案は2017年の国会に提出される予定で、2019年度からの実行が目指されている。

36協定の「抜け穴」

・ 上述したように、「法定労働時間は1日8時間、週40時間」と労働基準法第32条で定められているものの、労働基準法第36条で例外が定められている。

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。(後略)

(引用元:e-Gov|労働基準法

・ 上記の労働基準法第36条に基づいて企業と労働者が結ぶ協定は、36協定と通称されている。そして36協定を締結しても、厚生労働大臣の告示によって、時間外労働の限界は月 45 時間かつ年360 時間と定められている。しかし、「臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情が予想される場合」には、「特別条項付き協定」を締結することによって、時間外労働をさらに延長することができる。これによって実質的に労働者を無制限に残業させられるとして、36協定には「抜け穴」があると批判されてきた。

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「働き方改革実行計画(案)」への反応

・ 上述した36協定の「抜け穴」を是正するため、政府は法改正を視野に議論を進めてきた。政府は日本経済団体連合会(経団連)および日本労働組合総連合会(連合)との調整を経て、時間外労働の限度は年720時間かつ月100時間未満とする案を作成した。

・ 特別条項付き協定を結んだ場合での時間外労働に上限が設けられるのは初めてであるため、この決定を重要な一歩だと評価する声もある一方、「月100時間未満」は長すぎると批判する人も多い。2015年12月に過労が原因で自殺した会社員・高橋まつりさんの母親である幸美さんは、「ほぼ100時間の労働を認めるという法律には、過労死遺族の1人としてまったく納得できない」とコメントを発表した。

・ 労働者が脳・心臓疾患を発症した際、「1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合」には労働と疾患との関連性が強いと、独立行政法人労働政策研究・研修機構によって認定されていることを根拠に、月80時間の時間外労働はいわゆる「過労死ライン」だと考えられている。そのため、働き方改革実現会議で提唱された「月100時間未満」は、過労死ラインを大幅に上回っていることになる。今回の決定は「過労死の合法化」であるとして、批判の声が上がりつづけている。

(参考)
日本経済新聞 電子版|政府、働き方改革へ実行計画 残業上限や同一賃金
日本経済新聞 電子版|電通社員の母「残業100時間 納得できぬ」 政府計画、「一歩前進」評価の声も
労働基準監督署対策相談室|絶対に見られる36協定
労働基準監督署対策相談室|36協定の限度時間に注意!
東京労働局|時間外・休日労働に関する協定届(36協定)
コトバンク|36協定
コトバンク|労使協定
ハフィントンポスト|第7回働き方改革実現会議 政府案、残業上限月平均60時間のポイントは?
e-Gov|労働基準法
首相官邸|第10回働き方改革実現会議
厚生労働省|時間外労働の限度に関する基準
労働政策研究・研修機構|脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について
厳選 労働問題弁護士ナビ|過労死ラインは80時間|労働時間の減らし方と労災認定の基準