6次産業化とは

・ 6次産業化とは、第1次産業である農林水産業が、農林水産物を収穫・漁獲するだけでなく、加工食品にして販売するなどして第2次・第3次産業にまで多角化することにより、農林水産業者としての経営体質を強化すること。第1次産業が食品加工・流通・販売までを手掛けている状態を6次産業と呼ぶ。

・ 6次産業化とは、1990年代半ばに、農業経済学者で東京大学名誉教授の今村奈良臣氏が提唱した概念。当初は、それぞれの産業につく数字を足すと、1+2+3=6になることから6次産業という造語になった。しかし、第1次産業が衰退しては6次産業そのものが成り立たないということや、各産業を寄せ集めるだけではなく有機的に結びつける必要があるということから、のちに今村氏自身が、1×2×3の掛け算による6次産業となるべきだと再提唱している。

・ 第1次産業の6次産業化は、国を挙げて推進されている。2010年前後に6次産業化を推進する法律が整えられ、農林水産省が6次産業化する事業を認定し、補助金や情報提供などの面で支援するようになった。第二次安倍内閣が掲げる成長戦略「日本再興戦略」の一環としても6次産業化の推進が挙げられており、2020年までに6次産業化の市場規模を現在の10倍である10兆円に増やすことが目標とされている。各地方自治体でも6次産業化を推進する取り組みがされており、都道府県を越える広域での6次産業化の取り組みをサポートする組織も作られている。

6次産業化の目的

・ 6次産業化の必要性が説かれるようになったのには、消費者が加工食品を購入したり外食したりすることが一般的になり、食料品に費やされる金額が増えてきたという時代背景がある。しかし追加でかけられるようになった金額は、加工や調理、流通などにかかる費用であり、原材料価格とは別の付加価値の部分。第1次産業の市場規模の拡大には貢献していなかった。6次産業化は、別の業者に支払われている付加価値の部分を、第1次産業者自身が得ることによって、第1次産業を活性化させようというものである。

・ 農家が直売所(インターネットを含む)やレストランを運営したり、特産品を開発して売り出しブランド化したりする手法がとられることが多い。加工や流通、サービスまでを複合化することになるので、第1次産業者の所得向上のほか、新たな雇用の創出や、近隣の商工業者(食品加工機械メーカーなど)との連携などに繋がり、地域全体の活性化にもなると考えられている。

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6次産業化の具体例と課題

・ 岩手県盛岡市、有限会社サンファーム:
耕作放棄地を有効活用するため、従来の稲作経営に加えて新たに果樹栽培を開始。加工用果樹品種に着目し、2008年から生・冷凍果実の出荷およびジャムやコンポート、ジュースなどの加工品を製造・販売。果実加工品の売上高は、50万円(2011年)から250万円(2014年)に増え、雇用者数も5名から27名に増えた。

・ 東京都八王子市、磯沼ミルクファーム:
益から徒歩5分の住宅街にある牧場で、乳牛約100頭を飼育。消費が伸びるチーズ市場への参入を目指し、チーズ製造技術を習得してチーズの新製品の開発に取り組んだほか、ショッピングモールへのイートインスペースの開設による販売強化も行った。売上高は2010年から2014年で11%向上し、雇用者数も7名から14名に倍増した。

・ 6次産業は着実に成果をあげているが、一方で懸念点や6次産業化を目指すうえでの注意点も指摘されている。フリーライターの松永和紀氏(京都大学大学院農学研究科修士課程修了)は、病原性微生物の制御が不十分な浅漬けが原因で食中毒が起きた事件などを例に、6次産業化とは食品衛生やリスク管理に対しても責任を持つことだと強調する。

よい加工食品を開発できて当たれば、農産物の販売に比べて飛躍的に大きな儲けにつながる。だが、その裏側で必要な衛生管理、設備投資、責任の重さ……。そんなことは伝えられず、力ある生産者の成功事例だけが新聞やテレビで報じられ、農水省がPRする。生産者のだれもができそうな雰囲気が作られ、冷静な見方が表に出なくなってしまっている。
本気で産業化を推し進めるのなら、食品のリスクに対する知識をしっかり持ってほしい。指導する側も、縦割りを飛び越え情報収集し、しっかりと伝えてほしい。生産者も、食品事業者としての自覚を持たなければならない

(引用元:FOOCOM.NET|無責任な「6次産業化」が、心配

・ また、農業事業支援などを手掛けるエムスクエア・ラボ代表加藤百合子氏は、6次産業化への淡い期待だけでは成功は難しく、農地は簡単には転用できないことから6次産業化には土地や建物なども必要であると指摘したうえで、次のように述べている。

規制をクリアし初期投資のかなりの部分を補助金で賄うとしても、「レストランでもやってみるか」という気持ちでは成功しないと思います。
(中略)
逆の話も成立します。流通業など第3次産業の方が「農業でもやってみるか」という気持ちで第1次産業に参入しても、やっぱりうまくいきません。兼業ではなく起業として取り組んで、初めて成功するようです。

(引用元:NIKKEI STYLE|アベノミクス農業6次産業化は至難の業

(参考)
コトバンク|六次産業化
Wikipedia|6次産業
農林水産省|6次産業化の取組事例集(平成28年2月)
農林水産省|6次産業化をめぐる情勢について平成28年9月
第一次産業ネット|6次産業について
政府広報オンライン|生産・加工・流通販売を一体化して農林漁業の可能性を広げる。農林漁業者の「6次産業化」を資金面等で支援!
千葉県|千葉県6次産業化サポートセンター
日本経済新聞|中小の食品機械、6次産業化下支え 農業・漁業と連携 
Business Journal|期待の6次産業育成、なぜ成功例出ない?生産、販売、規制…立ちはだかる多数の壁
FOOCOM.NET|無責任な「6次産業化」が、心配
NIKKEI STYLE|アベノミクス農業6次産業化は至難の業