アジャイル開発の普及の背景

・ 1990年代までのソフトウェア開発では、事前の計画通りに開発を進めることが正しいとされてきた。しかし、技術の進歩やビジネスの複雑化に伴い、従来の開発手法では、開発終盤になってはじめてリスクが顕在化する例も出てきた。そこで、短い開発期間を反復し、変化に適応しながら開発する手法が登場した。

・ 2001年、アメリカの著名な技術者ら17人が「アジャイルソフトウェア開発宣言」という文書をまとめ、アジャイルソフトウェア開発の原則を公式に定義した。この宣言にのっとった開発を、アジャイル開発と呼ぶ。その後、アジャイル開発は世界に浸透していった。

・ アジャイル開発が、従来のウォーターフォール型開発と比べて成功率が高いというデータがある。2012年に発表されたアメリカの調査によると、2002年~2010年に行われたプロジェクトのうち、ウォーターフォール型開発によるものの成功率は14%、失敗率は29%であったのに対し、アジャイル開発によるものの成功率は42%、失敗率は9%であった。アジャイル開発のほうが3倍成功する確率が高く、ウォーターフォール型開発のほうが3倍失敗する確率が高いという結果が出た。

・ ただし、アジャイル開発のトレンドに乗ろうとして気軽にアジャイル開発に取り組むと、かえって失敗してしまう危険性が高い、という警鐘も鳴らされている。「アジャイルソフトウェア開発宣言」の提唱者の1人であるAndy Hunt氏も、2015年に発表した文書でアジャイル開発の安易な広まりに懸念を示している。

あれから14年が経ち、私たちは行き先を見失っています。”アジャイル”という言葉はスローガン化してしまいました。
(中略)
不十分に生半可に試みるといった”軟弱なアジャイル”を行う人が数多く存在します。本来の目的を忘れて努力を重ねるといった、口先だけのアジャイルの狂信者がたくさんいるのです。
更にひどいのは、アジャイル開発手法そのものがアジャイルではなくなってきているということです。全く皮肉な話です。

(引用元:POSTD|アジャイルの破綻―原因、そして新たな提案

そして、Andy Hunt氏は同じ文書の中で、こうした状況を打開する取り組みとして、新たに「GROWSTMメソッド」というソフトウェア開発概念を打ち出している。

アジャイル開発の成功例

・ FBIのSentinel(センティネル)開発

2006年3月、従来紙に依存していたFBIの操作ファイルを電子化したシステムSentinelの開発プロジェクトが開始した。このプロジェクトは、2001年9月11日の同時多発テロで露呈した、FBIの情報共有における問題を解消するためのもの。

予算は約540億、2009年12月を完成目標としていたが、期限を超過した2010年7月に中止に追い込まれた。その時点でシステムは半分ほどしか完成しておらず、予算はすでに90%消化しており、このままプロジェクトを完了させるにはさらに6年と420億円が必要であることが見込まれていた。ここまでの開発は、ウォーターフォール型開発によって進められていた。

FBIはここからの開発手法をアジャイル開発に切り替え、プロジェクトを再スタートさせた。プロジェクトメンバーは約1/10の45人にまで減らしたが、再スタートから12カ月後である2011年11月にすべての開発が完了し、開発費用は当初の予算の1割にも満たない36億円で済んだ。

(参考)
NEC情報システムズ|アジャイル開発~顧客を巻き込みチーム一丸となってプロジェクトを推進する~ (前編)
SocialChange|アジャイル開発とは:「アジャイル開発」をエグゼクティブサマリにまとめてみた
Wikipedia|アジャイルソフトウェア開発
フロントライン通信|アジャイルを無責任に広めるのはもうやめよう
株式会社ライジングサン・システムコンサルティング|なぜアジャイル開発手法はウォーターフォール手法と比較して3倍の成功率なのか
POSTD|アジャイルの破綻―原因、そして新たな提案
THE WALL STREET JOURNAL.|FBI、捜査ファイルをようやく電子化 12年かけ6億ドル強投入