文庫Xとは

・ 文庫Xとは、手書きの文字が印刷された手作りのブックカバーがかけられ、タイトルや著者名など本を特定できる情報はふせられた状態で売られている文庫本。価格が税込810円であること、ノンフィクションであること、500ページ以上であることの3点のみが明かされており、ビニールで覆われて販売されている。購入時のレシートにもタイトルは表示されない。購入して開封するまで、何の本かはわからないので、開封してすでに持っている本だと分かった場合には返金を受けられる。

・ 文庫Xの販売を開始したのは、岩手県盛岡市にある「さわや書店フェザン店」。文庫Xの中身は、包装ごとにバラバラなのではなく、同一タイトル。この書店が版元の出版社と著者の了解を得て、この販売企画を開始した。

・ 文庫Xには、手書きの文字で埋め尽くされた手作りのブックカバーがかけられている。ブックカバーのイメージは、ニュース記事「withnews|盛岡発「文庫X」が全国に拡散 書名伏せ販売、版元も驚く売れ行き」に詳しく公開されている。ブックカバーには以下のようなメッセージが書かれており、本の内容には全く触れられていないのが特徴。内容を一切紹介することなく販売する手法は珍しく、注目を浴びている。

「申し訳ありません。僕にはこの本をどう勧めたらいいか分かりませんでした。どうやったら『面白い』『魅力的だ』と思ってもらえるのか、思いつきませんでした。だからこうして、タイトルを隠して売ることに決めました」

(引用元:withnews|盛岡発「文庫X」が全国に拡散 書名伏せ販売、版元も驚く売れ行き

「心が動かされない人はいない、と固く信じています」「この本をあなたに読んで欲しいのです」

(引用元:産経フォト|謎の「文庫X」全国に拡散 書名と著者名、紙で隠す

文庫Xの販売企画の発祥

・ 文庫Xの企画の発案者は、さわや書店フェザン店従業員の長江貴士氏。もともとプライベートでこの書籍を読んでおり、多くの人に読んでもらいたいノンフィクション作品に初めて出合ったと感じたという。表紙を隠して本を売るというアイデアを以前から持っていたことから、文庫Xの企画の実施に至った。

・ 文庫Xの中身は、タイトルを明かせば敬遠されかねないテーマ、ジャンルの書籍であり、いくら良い本であっても普通に売ったのではなかなか手に取ってもらえない可能性があった。そこで、先入観にとらわれることなく、抵抗感なく手に取ってもらいたいという思いから、書籍を特定する情報を隠して販売することにした。

・ さわや書店フェザン店では、長江氏が考えた文章をアルバイト店員が手書きし、コピー機でモノクロ印刷したのち、手作業で裁断してブックカバーを作り、一つずつ包装している。2016年7月21日より、文庫Xとしての販売を開始した。

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文庫Xの反響

・ さわや書店フェザン店が当初仕入れた冊数は60冊であったが、販売開始から5日後には完売。通常、この書店では文庫本は月200冊売れれば月間トップとなるが、文庫Xは販売開始から1カ月余りで1,000冊弱、2カ月で1,600冊以上が売れた。老若男女幅広い層が購入している。

・ さわや書店フェザン店店長の田口幹人氏が、文庫Xの販売手法を、書店員ネットワークを通じて全国に紹介。2016年10月11日時点で約30都道府県の200店舗以上で販売されており、今後はチェーン店でも扱われる見込み。初版3万部だったこの書籍は、重版を繰り返し、すでに5刷5万5千冊にまで達した。全国の書店では、店独自のブックカバーを付けているケースが多いが、さわや書店フェザン店オリジナルのブックカバーを使って販売している店もある。

・ さわや書店フェザン店では、12月9日に「文庫X開き」が行われ、書籍名や著者名などが明かされる予定。それに向け、著者インタビューや書店員の思いをまとめたフリーペーパーが準備されている。

文庫Xの成功は出版業界における明るい展望

・ 近年、出版業界は不況と言われている。ごく一部のベストセラー以外、書籍の販売は低迷しており、インターネットのレビューを気にしながら本を買う人が増え街中の書店では本が売れにくくなっている。こうした中での文庫Xの販売企画の成功は、業界紙や新聞、インターネット、テレビのニュースメディアで数多く取り上げられ、暗い話題の多い業界のなかで明るいニュースとして注目されている。

・ 田口氏は、文庫Xのヒットについて次のように述べ、読者の「良い本に出合いたい気持ち」にうまく答えることができたと分析している。

田口店長は「漠然と『何か読みたい』と思っている人の背中を押したのでは」と分析する。書店では今、売れる本と売れない本の二極化が進んでいる。「ベストセラーが支持されているのは売れているという安心感があるからだ」という。

(引用元:毎日新聞|謎の文庫本 好評 タイトル、内容に一切触れず 盛岡のさわや書店、異例の売れ行き /岩手

・ また、インターネット上では、ネタバレ(書籍名や内容を明かす)があまり見られない。このことについて、長江氏や田口氏は、本好きな人を中心に企画の意図が広く理解され、共有されていると分析している。

(参考)
withnews|盛岡発「文庫X」が全国に拡散 書名伏せ販売、版元も驚く売れ行き
毎日新聞|謎の文庫本 好評 タイトル、内容に一切触れず 盛岡のさわや書店、異例の売れ行き /岩手
日本経済新聞|「文庫X」もう読んだ? 書名や著者名隠して販売
福井新聞|謎の「文庫X」、書店も驚きの反響 北陸初実施、宮下奈都さんきっかけ
産経フォト|謎の「文庫X」全国に拡散 書名と著者名、紙で隠す
J-CASTニュース|覆面とって初めて本とご対面 謎の『文庫X』が驚異の快進撃
岩手日報|「文庫X」全国ヒット 盛岡・さわや書店から広がり