大企業病とは

・ 大企業病とは、主に、長い歴史をもつ成長した大企業にみられる傾向。積極的に事業に挑戦するベンチャー企業と違い、すでに成長している企業は守りの経営に入るため、新たな挑戦や取り組みに消極的になる。これを大企業病と呼ぶ。また、大企業が抱える組織的な問題や、大企業に勤める社員に見られる保守的な行動傾向を総称して、大企業病と言う。

・ 大企業病という言葉を作ったのは、立石電機製作所(現オムロン)創業者である立石一真氏。立石氏は1900年(明治33年)生まれ。1933年に立石電機を創業し、50歳を過ぎてから従業員を100倍、売り上げを1000倍にまで成長させ、倒産寸前の町工場を世界企業オムロンへと飛躍させた功績者。立石氏が大企業病という言葉を初めて使ったのは次のような場面で、大企業病の持つ意味はこの趣旨が原点である。

昭和五十八年、創業五十周年の年頭(に、立石氏は)「大企業の仲間入りをした立石電機は、大企業病にかかっている。大死一番、意識革命に徹し、創業の精神に還り、徹底的分権により中小企業的な組織と簡潔な制度で活性化を図ることこそ、五十周年にふさわしい大仕事である。全員でこれに挑戦してほしい」と指示しました。

(引用元:OMRON|第六話 大企業病の克服、第三の創業へ

・ これ以後、大企業病が経営の本質を突く言葉として一気に話題となると、立石氏は次のように語った。立石氏は、当時すで蔓延していた大企業病を鋭く言い表していた。

「私の『大企業病』が、その年の秋には日用語化したが、ここまで有名になるとは、私自身考えてもいなかったので、初めはいささか驚いた。が、考えてみれば、世の中には大企業病に悩まされている会社がたくさんあるのだから、マスコミが取り上げるのも当然であった。ただし、私といえども、ただ不用意に外に向かって『わが社は大企業病にかかっています』などと恥を話すはずはない。十分に対策を練り上げて、成算があったからこそ話題にしたのである」

(引用元:同上)

大企業病の症状

・ 日本では多くの企業が大企業病に罹っていると言われている。リクルートマネジメントソリューションズが2015年12月、従業員数500名以上の企業で働く男性正社員を対象に行った調査では、5割以上の回答者が、自分の勤める企業は「大企業病である」と回答していた。同調査では、大企業病の具体的な症状として次のような回答結果があげられていた。

- 企業内の意思決定が遅い。判断が先送りされ、即断即決されない。会議が多い。手続きにはんこが多い。
- 組織の判断が内向きで、独りよがり。サービス業であるにも関わらず客の声を聞こうとしなかったり、データばかり見ようとしたりする。
- 事なかれ主義。できない理由を考えるのが上手い。幹部に対しYesマンであろうとする傾向。
- 部門間が断絶している。業務の分業化が進んでいて、スムーズな連携に支障がある。

・ ジェフ・ファッジ氏(※)は、大企業病には10の兆候があるとまとめている。上に挙げた特徴以外の兆候は次のようなもの。(※発言の当時、ソフトウェア開発を核にグローバル市場で開発・製造・保守までを手掛ける日系企業SATO Global Solutionsに所属。2016年8月現在、別の企業に所属している)

- 議題のない会議に、8割方の時間が費やされている。
- 中途採用時、同じ業界にいた候補者から採用する。
- 現在の貢献度に関係なく、長く勤める従業員を大事にする。
- リーダーにならないことが、安全なキャリアであるとみなされる。

・ 人材紹介コンサルタントでキャリアカウンセラーの海老一宏氏は、大企業の中でも特に幹部やエリート候補が大企業病に罹りやすいと指摘する。海老氏は、高学歴、有名企業というブランドは、「人よりも上にいる」という意識を生んでしまうため、ゆがんだ優越感やプライドとなって大企業病を引き起こしてしまうと解説している。

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大企業病は中小企業でも起き得る

・ 大企業病は、大企業だけに生じるものではなく、中小企業においても起きる可能性が指摘されている。吉野家ホールディングスの会長、社長を歴任した安部修仁氏の話をまとめた記事によると、中小企業が大企業病に罹る予兆は、次のようなもの。

予兆としては、現場が仕事の目的を見失い、ルーティンワークとして「昨日までやってきた仕事を今日もやる」という働き方になり始めたら、危険です。本来であればトップが定めた経営目標に沿って、必要な仕事が各部門に割り振られ、現場に下りていく。それが、現場の人々が与えられた仕事を続けていくうちに、いつの間にか仕事の目的が「今ある仕事の細かい改善」のみになり、なぜその仕事を自分がやっているのかを考えなくなる。

経営陣からするとすごく劣後の、事業活動の目的からかけ離れた仕事の精度を一生懸命上げて、それが仕事だと思い込む「手段の目的化」が起きるのが、大企業病の症状です。

(引用元:DIAMOND Online|中小企業にも起こる「大企業病」の兆候と対処法

・ 特に社歴の長い中小企業は、大企業病になっていないかの注意が必要である。大企業病になった企業は、顧客にも目を向けず、新しいことにも挑戦しなくなるので、商品・サービスは衰退し、売上や利益が減少していく。そうなると、社風はいっそうネガティブなものに落ち込んでしまう。大企業病は、企業そのものの存続にも関わる問題である。

(参考)
OMRON|第六話 大企業病の克服、第三の創業へ
PRESIDENT Online|大前版「名経営者秘録」(2)-立石一真さんの「わかりました」
DIAMOND Online|中小企業にも起こる「大企業病」の兆候と対処法
キャリコネニュース|あなたの職場は大丈夫? 会社を蝕む「大企業病」10の兆候
リクルートマネジメントソリューションズ|「大企業病」を患う組織の実態
PHP人材開発|大企業病の症状とは? あなたの会社は大丈夫か?
PHP人材開発|社員を蝕む大企業病~その特徴と克服方法
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