同一労働同一賃金とは

・ 同一労働同一賃金とは、同水準の労働に対しては性別や雇用形態などの区別なく同じ賃金が支払われるべきだという考え。日本では、いわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)間に存在する不合理な格差を解消すべきだとして、2016~2017年に開催された「働き方改革実現会議」(議長:安倍晋三首相)において議論が行われた。同一賃金同一労働に関する新たな制度は2020年度から適用され、中小企業のみ2021年度からの予定。

・ 2018年1月現在でも、雇用側が正規雇用労働者と非正規雇用労働者間のあいだに不合理な待遇の格差を設けることは禁じられている。労働契約法第20条は、同じ雇用者に使用されている正規雇用労働者と非正規雇用労働者のあいだで労働条件が異なる場合、その違いが不合理なものであってはならないと定めている。また、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(通称、パートタイム労働法)第8条および第9条は、短時間労働者に関して、同一事業所の通常労働者と比較して不合理な待遇や差別的取り扱いを禁じている。

・ しかし実際には、給食代の補助として会社から支払われる手当を非正規雇用労働者のみ受け取れなかったり、非正規雇用労働者の取得できる産休が正規雇用労働者より短かったりといった事例が発生していた。ソーシャルメディア上でも、休憩所やウォーターサーバーといった正規雇用労働者の利用できる設備を利用できないなど、非正規雇用労働者たちから不満の声が上がっている。

同一賃金同一労働の実現が重要視される背景

・ 同一労働同一賃金の実効性を確保する法制度およびガイドラインの整備は、政府が主導する「働き方改革」の一環である。同一賃金同一労働の目的は、非正規雇用労働者の処遇を改善することだ。「働き方改革実現会議」において使用された資料のなかで、同一賃金同一労働の実現に対する意気込みが以下のように述べられている。

「正規」、「非正規」という2つの働き方の不合理な処遇の差は、正当な処遇がなされていないという気持ちを「非正規」労働者に起こさせ、頑張ろうという意欲をなくす。これに対し、正規と非正規の理由なき格差を埋めていけば、自分の能力を評価されていると納得感が生じる。納得感は労働者が働くモチベーションを誘引するインセンティブとして重要であり、それによって労働生産性が向上していく。

(引用元: 首相官邸|働き方改革実行計画(本文)

正規雇用労働者と非正規雇用労働者の不合理な待遇差を解消し、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにし、我が国から「非正規」という言葉を一掃することを目指し、同一労働同一賃金の法整備を実現する。

(引用元:首相官邸| 働き方改革実行計画(工程表)

・ 「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会中間報告」の参考資料によると、非正規雇用労働者の割合は、1984年(15.3%)から2003年(31.4%)にかけて急増し、2015年には37.5%となった。フルタイム労働者の賃金を100%とした場合、パートタイム労働者の賃金は56.6%だ。フランスの89.1%、ドイツの79.3%、英国の71.4%というデータと比べると、日本では正規雇用労働者と非正規雇用労働者との格差が特に大きいことがわかる。さらに、非正規雇用労働者はいわゆるボーナスなど特別手当の支給額が著しく少なかったり、年齢が上昇しても賃金が横ばいであったりと、正規雇用労働者と比べて金銭的に差が生じる点が多い。このような格差は「若い世代の結婚・出産への影響により少子化の一要因となる」などの理由で、社会全体に影響を及ぼすと考えられている。

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同一労働同一賃金ガイドライン案

・ 2016年、「同一労働同一賃金ガイドライン案」が公開された。これは正規雇用労働者と非正規雇用労働者のあいだに存在する格差のうち、何が「不合理」と判断されるかの基準を示すものである。たとえば基本給に関しては、「問題とならない例」として以下のような具体例が挙げられている。

B社においては、定期的に職務内容や勤務地変更がある無期雇用フルタイム労働者の総合職であるXは、管理職となるためのキャリアコースの一環として、新卒採用後の数年間、店舗等において、職務内容と配置に変更のないパートタイム労働者であるYのアドバイスを受けながらYと同様の定型的な仕事に従事している。B社はXに対し、キャリアコースの一環として従事させている定型的な業務における職業経験・能力に応じることなく、Yに比べ高額の基本給を支給している。

B社においては、無期雇用フルタイム労働者であるXは、パートタイム労働者であるYと同様の仕事に従事しているが、Xは生産効率や品質の目標値に対する責任を負っており、目標が未達の場合、処遇上のペナルティを課されている。一方、Yは、生産効率や品質の目標値の達成の責任を負っておらず、(中略)処遇上のペナルティを課されていない。B社はXに対しYに比べ、ペナルティを課していることとのバランスに応じた高額の基本給を支給している。

(引用元:首相官邸|同一労働同一賃金ガイドライン案

・ 一方、以下のような具体例は「問題となる例」とされている。

基本給について労働者の職業経験・能力に応じて支給しているE社において、無期雇用フルタイム労働者であるXが有期雇用労働者であるYに比べて多くの職業経験を有することを理由として、Xに対して、Yよりも多額の支給をしているが、Xのこれまでの職業経験はXの現在の業務に関連性を持たない。

基本給の一部について労働者の業績・成果に応じて支給しているC社において、無期雇用フルタイム労働者が販売目標を達成した場合に行っている支給を、パートタイム労働者であるXが無期雇用フルタイム労働者の販売目標に届かない場合には行っていない。

(引用元:同上)

(参考)
厚生労働省|同一労働同一賃金
朝日新聞|残業の上限規制、中小企業は1年延期 衆院解散が影響
日本経済新聞 電子版|残業規制・同一賃金、中小に「1年猶予」 厚労省方針
首相官邸|働き方改革実現会議
コトバンク|同一労働同一賃金
e-Gov|労働契約法
e-Gov|短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
弁護士ドットコム|会社のウォーターサーバー「正社員以外禁止」…派遣社員と差をつけることは違法?