反転授業とは

・ 反転授業とは、学習者が動画教材やオンライン教材を用いて講義内容を自宅で予習し、その予習を前提に教室での演習に参加することで、従来型の学び方よりも深い学習効果を得る方法。小・中・高・大の教育現場で広く注目されている学習スタイルである。

・ 予習を前提に行われる演習には、学習者同士がテーマについて議論したり、実験、プレゼンテーション、講義内容を応用した課題に関するグループワークで協働して解いたりするなど、様々なスタイルがある。反転学習は、学習者自身が主体的に学ぶアクティブラーニングを教室で展開するうえで有効な方法である。

・ 反転学習は、従来の学習方法を反転したものであることからその名がついている。英語では「Flipped(反転された) Classroom」という。従来の学習方法とは、教室で教科書を使って講義を行い、自宅で課題を解く(宿題)というもの。反転学習では、その従来の学習方法を逆にしている。つまり、教科書やビデオ教材などを使った講義の受講は自宅で済ませておき、教室ではその講義内容をベースにした課題を解く。

・ 反転学習は、2000年頃からアメリカの教育現場で導入が進んだ。アメリカの特に中学・高校では校内に学力格差があり、学力の低い生徒を底上げする必要があることから、出席率や落第率の改善に効果がある反転学習が注目されてきた。2000年代後半は、MOOC(無料で受けられるオンラインの大規模講義)のパイオニアであるKhan Academy(カーンアカデミー)が2006年にアメリカで開設されたことや、YouTubeが普及したことなどにより、インターネットで見ることのできる動画教材がオープン化し、反転学習の導入が加速した。

・ 反転学習が普及したきっかけとその成果について、東京大学大学院情報学環の山内祐平教授は次のように解説している。

大きく普及するきっかけになったのは、コロラド州の高校で誕生したFlipped Classroom (Bergman & Sams 2012)です。化学の先生である彼らは、授業を欠席した学生に対して、授業を収録して宿題として見るよう指示しました。この仕組みがうまく機能したので、全員が映像で予習し、授業では実験や個別指導を中心に行うようにしたところ、この方法が他の高校の先生に飛び火して、実践現場で拡大していきました。例えば、クリントンデール高校では、落第率が61.2%から10.8%に激減したという成果も上がっています。また、Flipped Learning Networkの調査では、67.1%のクラスで成績の向上が報告されています。

(引用元:FLIT|授業の常識をひっくりかえす! 『反転授業』を考える

・ 日本で反転学習が注目されるようになったのは、2013年頃からである。教育現場へのタブレット導入とともに話題になり始めた。例えば、佐賀県武雄市では、2014年度から反転授業が推進されている。

佐賀県武雄市の全11校の公立小学校では、2014(平成26)年より児童一人ひとりにタブレットを支給し、「スマイル学習」という名で反転授業を行っています。
全教科の全ての時間に反転授業を導入しているわけではなく、対象は3~6年生の算数と4~6年生の理科。まだまだ実績は少ないものの、2015年11月に行われた調査では、「明日の授業が楽しみ」「少し楽しみ」と答えた児童が8割を超えるなど、学習意欲へ好影響が見られています。

(引用元:ベネッセ教育情報サイト|注目の反転授業とは? 反転授業のメリット・デメリット

また、近畿大学付属高校では2013年度から、iPadを活用した反転授業を行っている。例えば英語の授業は次のように行われる。

英語の授業では、授業の導入として語彙の習得や音読活動などを行った後、各自が家庭で教師が制作した解説ビデオ教材を用いて、語彙の習得や音読活動、確認テストを行います。

そして授業では、語彙の復習テストや英文理解の確認を行ったうえで生徒同士が互いを英語で自己紹介し、ワークシートに書き取るといった協働学習を行い、学んだ知識を活用し定着を図ります。これまでの英語の授業で行われていたインプットをさらに効果的にするアウトプットを取り入れています。

(引用元:Education Career|反転授業とは?学校の授業と家庭で学習していた内容を反転させる授業形式

反転授業の効果と課題

・ 反転授業には、学習内容の定着以外にも様々な効果が見込まれる。

- 教師側のメリット
従来講義に充てていた時間を、個別のきめ細かな指導に割ける。
ICTによって、児童・生徒の学習時間・学習成果の管理が容易になる。

- 学習者側のメリット
自分のペースで学習を進めることができる。
タブレット、映像教材を活用するので、学習者が主体的に学習しようとする意欲が高まる。

・ 一方、現状では反転授業には課題にもある。インターネット環境の整備に伴い反転学習は普及しつつあるとは言え、各家庭で学習環境を整えなくてはならないため、デジタルディバイド(デジタル環境の格差)や保護者の理解不足による学習者間の格差が生じる可能性が指摘されている。タブレット購入やネットワーク環境の整備などで家庭にかかる負担をどうするかという課題もある。

・ また、教師の側にも課題がある。反転学習は従来の教育手法とは異なるため、教師自身にとっても教え方や意識を変えることが迫られる。eラーニングについて調査研究を行うeラーニング戦略研究所が2015年に実施した調査によると、反転授業の認知度は50%を超え前年に比べ10ポイント上昇したものの、実際に導入しているのは前年同等の2%にとどまっていた。導入率が上がらない理由としては、「授業ビデオ作成における教員の負担」を挙げた回答が44.0%にのぼったほか、「生徒の自宅学習の定着化」「生徒宅のネット整備やタブレット費用負担」という回答もあった。

(参考)
リセマム|反転授業とは【ひとことで言うと?教育ICT用語】
ITpro|反転学習
eduview|「反転授業」と「MOOC」の根本的な違いとは〜加藤大氏に聞く
リセマム|反転授業、高大教員の認知50%超も導入進まず…課題が浮き彫りに
FLIT|授業の常識をひっくりかえす! 『反転授業』を考える
Education Career|反転授業とは?学校の授業と家庭で学習していた内容を反転させる授業形式
ベネッセ教育情報サイト|注目の反転授業とは? 反転授業のメリット・デメリット
教育家庭新聞|英語・数学で反転授業―近畿大学付属高等学校