HRテックとは

・ HRテックとは、HR(Human Resources、人事労務)の分野でITを活用すること。クラウドやデータ解析、AI(人工知能)などのIT関連技術を使って、採用、評価、配属などを行う手法を指す。FinTech(フィンテック、ITと金融・決済サービスの融合)、EdTech(エドテック、ITと教育の融合)などのテクノロジー系サービスに続く新たなトレンドとして注目されている。

・ HRテックのサービスとは、採用、配置(適材適所)、リーダー育成、評価、給与、従業員情報の一元管理、社会保険手続きの自動化、業務改善など、人事労務分野における様々な目的をテクノロジーによって効率的に達成するための、付加価値の高いサービスである。特に人事評価においては、長年、上司の勘や経験、好き嫌い、飲み会でのコミュニケーションなど、不透明な条件下で行われているという側面が否定できなかった。こうした状況は、AIをはじめとするテクノロジーによって改善されると見られている。

・ HRテックの発祥はアメリカ。2000年代初頭、メジャーリーグのオークランド・アスレチックスが、過去のデータを分析して勝率に貢献する要素を持つ選手のみを集めてチームを編成する戦略で、強豪チームとなった。このことは2011年に『マネーボール』として映画化され、企業の人事労務でもデータ分析が行われるようになった。

・ 日本国内でも2015年頃から、ベンチャー企業を中心にHRテックが本格的に動き始めた。2015年の日本の労働生産性は、OECD(経済協力開発機構)加盟34か国中21位で、アメリカ(4位)の6割程度しかない。限られた人材を最大限に生かし、生産性を高めるために、HRテックの普及が模索されている。

・ HRテックの広まりとともに重要視されているのが、「HRデータサイエンティスト」という人材である。HRデータサイエンティストとは、人事労務分野におけるデータサイエンティスト、つまり大量のデータを分析してビジネスに価値を生み出す人材のこと。例えばグーグルには人事部門にデータサイエンティストが起用されている。即時性のあるHRデータ(例えば、採用や評価に関するPDCAサイクルを即座に回す)や、信頼性のあるHRデータ(数的データだけでなく、定性的な評価情報を適切に扱う)を活用しながら、HRテックの価値を高めていくことが期待されている。

国内外のHRテック事例

・ HRテックは、欧米では普及が進んでいる。

欧米では、求職者側の経歴・希望と企業の募集条件を言語解析してマッチング精度を高めるサービスや、大量のデータから予測分析をかけ候補者の採用後のパフォーマンスを予想するサービス、財務と職場環境のデータを集約・分析することで最適な人員計画を立案するサービスなど、ITを活用した様々なサービスを提供する企業が急成長しています。

(引用元:日経ウーマンオンライン|AIが人事を変える日がやってくる

- なかでも、2013年創業のアメリカのZenefitsというベンチャー企業は、HRテックにおいて最も波に乗っている企業とされる。Zenefitsは、新規採用者の導入、給与計算、保険、年金、ストックオプション、休暇などを一元管理できる管理ソフトを提供している。創業して約3年ほどで、企業価値が10億ドル(約1,000億円)にまで成長した。

- HRテックを利用する立場で導入している企業は、例えば世界有数の金融機関クレディ・スイス。

クレディ・スイスは転職しそうな人を対象にこの仕組み(HRテック)を使い、最適な職場を割り出して異動させた。これにより、離職者を約300人減らすことに成功した。職場のミスマッチが減り、働きやすい環境づくりに生かせた。

(引用元:日本経済新聞|AIで人事部いらず? ビズリーチやヤフー、データで最適配置 人との役割分担、探る

・ 国内でも、HRテックサービスを手掛ける企業が登場している。

- 人材ビジネスのベンチャー企業サイダスによる「サイダスドットコム」は、従業員情報を一元管理できるクラウドベースの人材プラットフォーム。このシステムを採用した企業の例は、人員配置に課題を抱えていたJ・フロントリテイリング。

J・フロントはグループ従業員約1万1000人のスキルや経歴、適性検査の結果などを一元管理、今春の人事異動から活用を始めた。例えば傘下の大丸松坂屋百貨店で働く20代の女性販売員をグループ雑貨店の店長補佐に抜てきした。異なる環境に順応してやり抜く資質が決め手となった。

同百貨店の松田弘一取締役は「求められる人材の能力は変わってきた。適材適所の配置が経営課題」と説明する。

(引用元:日本経済新聞|ITで人事効率化 「HRテック」をベンチャーが開拓

- 人材紹介会社ビズリーチとヤフーらは、2016年秋より、AIが人事労務業務を担うシステムを展開することを発表している。

採用面接から現在に至る評価の積み重ねだけでなく、働きぶりを追跡調査してデータベースにする。これを、大量のデータから特徴を自分で見つけて学習するAIの基幹技術、深層学習(ディープラーニング)で分析。評価や最適な職場、ポジションをはじき出す。通常料金は月額10万円から。2019年6月までに2000社以上の導入を目指す。

(引用元:日本経済新聞|AIで人事部いらず? ビズリーチやヤフー、データで最適配置 人との役割分担、探る

・ こうしたHRテック分野には課題もある。例えば、日本的な慣行で出世してきた人のモチベーションの低下、人の業務成果を本当に適切に評価できるのかというハードル、技術革新や環境変化、経営方針の変化への対応など。人事労務にHRテックが導入されるとはいえ、その技術をうまく運用し、支える人材は今後も変わらず必要となる。

(参考)
日本経済新聞|ITで人事効率化 「HRテック」をベンチャーが開拓
日本経済新聞|AIで人事部いらず? ビズリーチやヤフー、データで最適配置 人との役割分担、探る
日経ウーマンオンライン|AIが人事を変える日がやってくる
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