医療観光とは

・ 医療観光とは、医療ツーリズム、メディカルツーリズムとも言い、外国を訪れて、診断や治療、検診などの医療サービスを受けること。医療サービスの種類は、がん治療のような高度医療、美容整形、健康診断など幅広い。外国への滞在中、医療サービスを受けるだけでなく周辺を観光したり、同伴者が一緒に滞在することも多いことから、インバウンドのひとつとしてとらえられている。

・ 医療観光の歴史は古く、古代ギリシア時代にはすでにあった。日本でも古くから、温泉地に滞在して温泉療法を受ける湯治があり、外国に出かけず国内の別の場所で医療サービスを受けることも、医療観光のひとつの形態と言える。欧米では、スパ(療養を目的とした温泉)に行くことが日本でいう湯治と似たようなもの。医療観光は、21世紀初頭ごろからシンガポールで注目され始め、現在では多くの国が医療観光を産業のひとつとして位置付けている。

・ 日本では、健康保険制度が整備されており誰でも高度な医療を受けることができるが、このような国ばかりではない。世界には医療水準が低く、高度医療は高額費用がかかる特定の病院でしか受けられない国もある。例えば日本では医療費の自己負担額は誰でも3割だが、欧米や中近東などの国々では制度が整っていない。そうした国では、安い費用で高度な医療を受ける目的で、外国での医療を求める人が多い。医療観光では主に、医療費が高い先進国の患者や途上国の富裕層患者が、医療技術に優れ医療費が安いインド、シンガポール、タイなどに渡航するケースが多く見られる。また、費用の問題に加えて、自国で得られない医療サービス(例えば、臓器移植など)を受けるために外国に渡航する例もある。

・ 医療観光を外貨獲得のために戦略的に推進している国では、外国人・富裕層を受け入れる医療機関には、国際的医療評価であるJCI (Joint Commission International)認証の取得を促している。この認証は、1,000以上の審査項目をクリアしなければ得ることのできないものであり、この認証が外国人でも安心して受診することができる病院であることの目印となる。

日本における医療観光

・ 日本でも、医療観光は成長市場として注目されている。政府は、医療観光をインバウンド推進施策のひとつとして掲げ、2011年には、最長6か月滞在でき3年以内なら何度でも入国が可能な医療ビザを創設した。それに呼応した医療機関の例として聖路加国際病院が挙げられる。同病院は、2011年にJCI認証を取得し、以後外国人患者を積極的に受け入れている。日本に医療観光で訪れる外国人の大多数は、プライバシーを守りたい中国人富裕層。日本の病院は信頼性が高く、対応が親切・丁寧であり、正確であるとして、医療の質が高く評価されている。

・ 日本政府観光局によると、2015年の訪日外国人客数は1,973万人で過去最高を記録したものの、今後は伸び悩みが予想される。政府は、医療観光の体制を整備して訪日客拡大を後押しするため、外国人患者への説明能力など政府が定めた基準を満たす医療機関の認定数を増やす見込み。訪日外国人客数2,000万人は目前ではあるが、その達成以後も訪日客を増やすために、医療観光を強化する方針。

・ 旅行会社各社も、医療観光を柱にした商品を開発している。例えばJTBでは、2010年より中国人を中心にオーダーメードの医療観光商品を提供しており、参加者数は増加傾向にある。2015年度は参加者が前年度比20%増となった。また、医療観光に特化した専門の業者もある。旅行会社が医療観光商品を扱えば、病院側は問い合わせ対応や見積もり、各種手配、情報提供など煩雑な処理をする必要がなくなり、医療に専念できるという大きなメリットがある。

・ 医療観光で訪れる外国人の受け入れ強化に乗り出す事例が多くみられる。例えば、長崎県のハウステンボスは、医療観光が今後の観光の柱になると見込み、健康をテーマとした事業を展開。福岡市のクリニックと連携し、ハウステンボスへの来場客に同クリニックでの医療サービスを勧めている。また、愛知県の藤田保健衛生大学病院では次のように、健康診断目的の訪日患者を想定し、2017年末に完成する新病棟で外国人患者の受け入れを強化する方針。

約150億円を投じて建設中の新病棟には医療ツーリズムを想定した特別フロアをつくり、家族も寝泊まりできる最高級個室病室を3室設ける。
(中略)
東南アジアや中近東からの来日客に備え、イスラム教の戒律に沿ったハラル食を提供する考えだ。特別フロアの一角には礼拝用の部屋も用意する。
(中略)
最高級病室を使った場合、(1泊2日の健康診断の)受診料は80万円程度になる見通しだが、海外の富裕層には最新型装置での検査を求める声も多く、需要は大きいと判断した。開設年にあたる18年で120人ほどの受診者を見込む。

(引用元:日本経済新聞|藤田保健衛生大、医療ツーリズムの受け入れ強化

(参考)
Wikipedia|医療観光
JTB総合研究所|メディカルツーリズム
日本経済新聞|医療ツーリズム、政府が体制整備 訪日客増へ新成長戦略 
日本経済新聞|藤田保健衛生大、医療ツーリズムの受け入れ強化
SankeiBiz|高い評判と信頼…増える訪日患者 病院や旅行会社、医療ツアーを収益源に
SankeiBiz|訪日医療ツーリズム「最高級」提供 オーダーメードで1人数百万円
産経ニュース|ハウステンボスが医療ツーリズム推進 博多の診療所と連携
マイナビニュース|今、アジアの「医療」が熱い! キーワードは”ジェネリック””医療ツーリズム”
ZUU online|中国「爆買い」が今度は病院で? 「医療ツーリズム」で病院が外国人でいっぱいになる日