神Excelとは

・ 神Excelとは、米マイクロソフト社によって開発され、多くのオフィスや家庭で使われている表計算ソフト「Excel」を、表計算ソフトではなく文書作成ソフトとして扱ったことで生まれた、表計算ソフトとしての意義を感じづらいExcelファイルを指すスラング。別称は「Excel方眼紙」。非効率的であるとして批判されることが多い。2017年9月30日、東京都墨田区において「Excel方眼紙公開討論会」が開催され、講演やパネルディスカッションが行われたことで、神Excelはあらためて注目された。

・ 神Excelは紙媒体への出力を前提として作られていることから、「紙」と「神」をかけて、情報工学を専攻する上原哲太郎教授(立命館大学)が命名した。なお、上原教授は「ネ申Excel」と表記している。上原教授は2012年頃から神Excelについて問題提起をしており、Excel方眼紙公開討論会で講演を行った。

神Excelの問題と具体例

・ 神Excelは、計算をするためでなく、罫線を駆使して文書の見た目を美しくしようという意図で作成されていると思われる。しかし、見た目が重視された結果、数字や文字を1マスに1つずつしか入力できず、手間と時間が余分にかかってしまう。また、そのように入力された数字・文字は1つずつバラバラになっているため、コピー&ペーストなどの手段でほかのファイルに転記することができず、手動で打ちなおす必要がある。この際、手間と時間がかかるだけでなく、誤入力が発生する可能性も生まれる。そのため、上原教授は「生産性を猛烈に下げてる」と神Excelを批判する立場をとっている。

・ 上原教授が神Excelの具体例として挙げたのは、独立行政法人・日本学術振興会の科学研究費(科研費)助成事業に研究者が応募する際に必要とされていた書類である。大学に所属する研究者が、自身の研究費を獲得するために科研費を申請することは一般的であり、必要事項を1マスに1文字ずつ神Excelに入力して印刷し、郵送で提出する作業を多くの研究者が強いられていた。

・ しかし2016年、国会議員の河野太郎氏がこの問題に着目した。河野氏はTwitter上に、「行革推進本部で文科省をよんで、こういう神エクセルを至急、全廃する」と投稿し、さらに「科研費関係の問題提起の窓口」を設けて対応を行うと発表した。河野氏が行動を起こした結果、2018年度公募分から科研費関連書類の神Excelは廃止され、webフォームでの申請に切り替わった。

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なぜ神Excelは使われつづけるのか

・ 上原教授の提言や河野議員の行動により、神Excelの問題は周知されつつあるが、神Excelを使いつづけている官公庁や企業がなくなったわけではない。そこでIT関連メディア「@IT」が、マイクロソフトでの勤務経験があり内閣官房で補佐官を務める楠正憲氏に取材を行ったところ、以下のようなことがわかった。

・ 楠氏はかつて、政府が自治体からの情報を受け取るシステムに関して、webフォームでの情報入力・提出を提案したものの、現場からはExcelを使いたいという要望があったという。理由のひとつは、現場職員にwebフォームを調整するスキル・知識がなく、webフォームの項目に変更が必要になるたび、webフォームを構築した業者に依頼しなければいけなくなること。Excelであれば職員自身で仕様の変更ができるという。仕様変更のみならず、webフォームに関するあらゆる作業にはスキルと知識が必要とされる一方、Excelであれば多くの人が操作できる。楠氏はこのような状況を理解したうえで、「WordやExcelでも、柔軟性が高くデータの再利用が容易な仕組みを作ることは可能なのだが、罫線を多用するなど、印刷したときの見栄えを優先する文化や慣習が、日本の職場には色濃く残っている」と嘆いた。働き方改革などの施策が掲げられ、ITの活用や生産性向上が叫ばれる昨今、企業だけでなく官公庁でも、非効率的な慣例を見直す必要性が高まっている。

(参考)
EventRegist|Excel方眼紙公開討論会 presented by Forguncy
Twitter|河野太郎
@IT|「神エクセル」が役所ではびこる理由
ITmedia NEWS|「Excel方眼紙=悪」なのか? 公開討論会9月に開催
ねとらぼ|データとして役立たない「神エクセル」問題に解決の兆し 河野太郎議員が文科省へ全廃を指示
日本学術振興会|科学研究費助成事業(科学研究費補助金)(奨励研究)の応募手続きの電子化等について