「下流老人」とは

・ 「下流老人」とは、貧困のため「普通」の暮らしができず、「下流」の生活を強いられる高齢者を指す。社会福祉士の藤田孝典氏による造語。藤田氏は、2015年に出版した著書『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新書)のなかで高齢者の貧困を問題として取り上げ、その後もNPO活動などを通じて貧困問題に取り組んでいる。貧困について議論されることが多くなった昨今、いずれは自分も「下流老人」になるのではと危惧し、高齢者の貧困を自分の問題として考える人が増えつつある。

・ 藤田氏は、高齢者が貧困に陥いる主なパターンとして、5つの場合を挙げている。以下のように、金銭的に困窮したり、他者とのコミュニケーションの機会が極度に減ったりすると、「下流老人」になりやすいといえる。

1. 事故・病気によって高額な医療費が伸しかかる。
2. 介護施設に入居できない。
3. 収入の少ない子どもに金銭的援助をせざるをえない。
4. 熟年離婚をする。
5. 認知症を患っても、頼れる家族がいない。

日本における「下流老人」の現状

・ 2016年、65歳以上の高齢者世帯で生活保護を受給しているのは約83万世帯にのぼり、過去最多だった。そのうちの9割が単身世帯。生活保護受給世帯の約51%が高齢者世帯となり、初めて半数を超えた。

・ 2015年に内閣府が日本、米国、ドイツ、スウェーデンの60歳以上を対象に行った比較調査では、「老後の備えとしての現在の貯蓄や資産の充足度」について尋ねる設問に「やや足りないと思う」「まったく足りないと思う」と答えた人は日本が57.0%で、4ヶ国中で最も多かった。また、50代までに行った「老後の生活費に対する備え」について尋ねる設問では、「特に何もしていない」と答えた人は日本が42.7%で、これも4ヶ国中最多だった。

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「下流老人」による「1億総下流老人社会」

・ 藤田氏によれば、「下流老人」という言葉に表れるような高齢者の貧困は、若者の貧困と密接に関係している。非正規雇用などの理由で困窮している若者への支援が不充分であれば、若者は老後のための貯金や年金保険料の支払いが充分にできず、高齢者になってから生活するのに必要な資金が不足する事態に陥るからである。

現在年金を受け取る立場の人よりもさらに現役時代の賃金が低い場合は、生活保護基準を割り込んだ年金収入しか老後に得られないことは明らかだ。若者の貧困と高齢者の貧困は相当に関連性があり、密接なつながりを有している。いまここで対策を打たなければ、「1億総下流老人社会」が到来することは目に見えているのである。

(引用元:東洋経済オンライン|貧困に陥った若者が、「下流老人」になる未来

・ 藤田氏は、特に女性の貧困問題を扱うライターの中村淳彦氏との対談において、「貧困問題の悪いところは、足の引っ張り合い」だと話している。高齢者福祉に取り組む人々と、子ども・若者への支援に取り組む人々とのあいだで、政府からの「予算の取り合い」が起こっているのだという。しかし藤田氏は、限られた予算のなかから高齢者か子ども・若者かの一方を選択するのではなく、年齢に関係なく支援が必要な人に税を分配し、そこから必要な税収を計算するべきなのだと訴える。現在の「下流老人」に手を差し伸べ、今後「下流老人」と呼ばれる貧困層を増やさないために、社会における制度と意識の両面における改革が求められている。

(参考)
内閣府|高齢社会白書
日本経済新聞 電子版|生活保護、高齢者が初めて50%超す 厚労省調査
dot.|高齢者の9割が貧困化 「下流老人」に陥る5つのパターン
dot.|下流老人になるのは一般論信者 必要なのはお金より◯◯
東洋経済オンライン|貧困に陥った若者が、「下流老人」になる未来
ダイヤモンド・オンライン|若い女性は風俗嬢、老人は姨捨て山…一億総貧困時代が来た