行動経済学とは

・ 行動経済学とは、人間は必ずしも合理的に行動しないという前提のもと、伝統的な経済学では説明できなかった社会現象などを、人間の行動を観察することで実証的にとらえる学問。2017年10月、ノーベル経済学賞の受賞者として、リチャード・セイラー教授(シカゴ大学)の名が発表された。理由は、行動経済学の発展に貢献したため。近年、ビジネスに役立つとして行動経済学が注目されつつあるなか、行動経済学の権威であるセイラー教授のノーベル賞受賞が発表されたため、行動経済学は今後ますます脚光を浴びると考えられる。

・ アダム・スミス(1723~1790)などが研究していた伝統的な経済学において、人間は常に合理的な経済活動を行う「経済人」(ホモ・エコノミクス)であった。しかし、現実の人間は、衝動的な散財をはじめとした非合理的経済活動を行うことがある。そこで、人間は合理的経済人であるという仮定を非現実的なものとみなし、人間心理に着目して経済に関する人間の行動傾向を明らかにするのが行動経済学である。

行動経済学における諸概念

・ セイラー教授が提唱した行動経済学の概念のひとつが、「心の会計」(メンタル・アカウンティング)だ。人間は「これは必要経費」「これは浪費」などと判断しながらお金を使う傾向にある。たとえば、「なんとなくお菓子が食べたい気分」というときに500円のケーキを買うことは浪費だと判断してお金を出し渋っても、「糖分をとってリラックスしないと、仕事に差し障る」というときには、ためらいなくケーキに500円を払う、といった具合である。また、働いて得た給与の20万円も、ギャンブルで得た臨時収入の20万円も、金銭的価値は変わらないにもかかわらず、臨時収入の20万円はあっというまに使いきってしまうという行為にも、心の会計が影響している。

・ 行動経済学に関連する概念として「サンクコスト」(埋没費用)がある。サンクコストとは、投資や消費によって失われた金銭・時間・労力のうち、どのような行動をとっても回収できないもののこと。サンクコストを取り戻すことは不可能であることから、意思決定をする際にサンクコストは無視することが合理的である。しかし、人間はサンクコストに固執して、非合理的な判断をしてしまうことがある。たとえば、1万円で厚い本を買ったが、読まずに放置してしまい、その本に対する興味が薄れたとする。のちのち、興味はなくとも時間をかけてその本を読むか、時間がもったいないので読まずに処分するか、選択することになる。その際、本に支払った1万円は、読んでも読まなくても戻ってこないサンクコストであるため、考慮しないのが合理的だといえる。しかし人間は、「せっかく1万円も払ったのだから、読まないともったいない」など、サンクコストにこだわって非合理的な考えをしてしまうことがある。このような人間心理に関連する経済行動を研究するのが、行動経済学である。

yoko815
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行動経済学に関する書籍

・ 日本ではすでに行動経済学に関する書籍が多く出版されており、セイラー教授の著書も翻訳されている。セイラー教授による『行動経済学の逆襲』(早川書房、2016年)は、自身の半生を振り返りながら、従来の経済学者たちから批判されつづけてきた行動経済学が学問的地位を築くまでの過程をつづったエッセイ風の書籍。随所に散りばめられたユーモアと読みやすさが高く評価されている。

・ 分かりやすさに定評のあるのが、真壁昭夫『最新 行動経済学入門 「心」で読み解く景気とビジネス』(朝日新聞出版、2011年)である。行動経済学の基本的な諸概念が平易に説明されており、初心者に最適だとされている。

(参考)
コトバンク|行動経済学
東洋経済オンライン|ノーベル経済学賞、セイラー教授の受賞理由
コトバンク|スミス
コトバンク|経済人
ZUU online|浪費の原因は「心の会計」 どうすればお金が貯まるのか
コトバンク|サンクコスト
WEBRONZA|[書評]『行動経済学の逆襲』