教育困難大学とは

・ 教育困難大学とは、基礎的な知識が欠如している、著しく勉強意欲が低いなどの問題を抱えた学生が多いことから、正常な教育活動が成立しない大学。2017年8月3日、教育困難大学の問題を取り上げた記事「『教育困難大学』のあまりにもひどい授業風景」が東洋経済オンラインに掲載され、ソーシャルメディア上で話題となっている。記事を執筆し、『見捨てられた高校生たち―知られざる「教育困難校」の現実』(学事出版)などの著書がある教育ライターの朝比奈なを氏は、教育困難大学を以下のように定義した。

志願者数が伸び悩み、経営のためにどのような学力の志願者でも受け入れている大学が多数存在する。このような大学には、「教育困難校」と呼ばれる高校の卒業生が多数入学している。大学進学率が低く大学入試が難しかった時期には、進学できなかった学力層を多数抱えている高校だ。筆者は、高校からの連続性を踏まえて、どのような学力の志願者でも受け入れている大学を、「教育困難大学」と呼びたい。

(引用元:東京経済オンライン|「教育困難大学」のあまりにもひどい授業風景

・ 朝比奈氏は記事中で、ある大学教員と学生とのやりとりを紹介した。それによれば、授業内で教員が学生に「日本の自然林にはどのような野生動物がいるか」と質問したところ、「わかりません」や「ブタ」といった答えが返ってきたという。これについて朝比奈氏は「驚くほど無知な大学生がむしろ増加しているのでは」と懸念を示した。

・ また、教育社会学を専門とする葛城浩一・准教授(香川大学)は、「受験すれば必ず合格するような大学」を「ボーダーフリー大学」と定義し、そのような大学は「基礎学力や学習習慣、学習への動機づけの欠如といった、学習面での問題を抱える学生を多く受け入れており、より多くの教育上の困難に直面している」と述べた。そのため、朝比奈氏の提唱する「教育困難大学」は「ボーダーフリー大学」と重なっているといえる。

・ 葛城准教授は学生へのアンケート調査を行い、その結果から「ボーダーフリー大学」ではそうでない大学よりも「私語」や「いねむり」といった逸脱行動が多い傾向があると主張した。調査対象となった大学では、学生が授業中に大声で叫んだり、横になって寝たりといった行動をとることは珍しくないという。さらに、自由が丘産能短期大学で教鞭をとる嶋田淑之氏は、授業中の私語をやめない学生に「出てゆけ!」と怒鳴ったら「てめえが出てゆけ!」と怒鳴り返されたエピソードを知人の話として紹介したほか、学生が自身の成績に不満を抱いて担当教員を脅すことは「日常茶飯事」だと述べた。

教育困難大学が生まれた背景

・ 朝比奈氏によれば、教育困難大学は「志願者数が伸び悩み、経営のためにどのような学力の志願者でも受け入れている」という。このような大学には、基礎的な学力・知識を身につけていない人でも入学できるため、入学した学生への指導を困難だと感じる教員が多いと考えられる。

・ 葛城准教授は、教育困難大学の学生がとる逸脱行動の例として、授業の出席がとられた直後に教室を退出してしまう「疑似出席」も挙げた。疑似出席が発生する理由を、葛城氏は以下のように説明した。

その要因としては、ボーダーフリー大学では出席重視の評価が行われていることが考えられる。ボーダーフリー大学の教員に対するインタビューでは、テストで点数が足りないので不可を出したくても、「上」から不可にしてはいけないという圧力がかかり、結局は「出席さえしてれば、単位がとれるシステム」になってしまっているという声も聞かれた。

(引用元:香川大学|ボーダーフリー大学が直面する教育上の困難-授業中の逸脱行動に着目して-

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教育困難大学に関する意見

・ 教育困難大学に関しては、インターネット上でさまざまな意見が述べられている。朝比奈氏の記事にも多くのコメントが寄せられ、「誰でも入れる状況なら、出口を狭くしなくちゃダメ」「大卒の学歴をばら蒔くだけの大学はいずれ淘汰されるべき」など、学位を取得するための基準を厳しくするべきだと主張するコメントが見られた。

・ 一方、著名な脳科学者である茂木健一郎氏は、朝比奈氏の記事を「示唆に富むものだった」と自身のブログにおいて紹介した。しかし同時に、教育困難大学の学生の能力が低いとは限らないと茂木氏は自説を述べた。

 相変わらずの授業をしている教師たちに対して、注意を向けていない彼らが、別の局面では目を輝かせて熱中することは大いにあると私は推測する。
 「教育困難大学」をめぐる本当の「困難」とは、この記事にも見られる、前提とされている古臭い学力観の方であると、私は強く感じている。
 一見無気力に見られる彼らが、疾走し始めるような独創的なカリキュラムの開発こそが今日の教育界において求められている最大のイノベーションであって、そのような変革は、旧来型の学力観をなぞっているだけでは決して実現できない。

(引用元:茂木健一郎 公式ブログ|「教育困難大学」をめぐる本当の「困難」とは何か。

(参考)
東洋経済オンライン|「教育困難大学」のあまりにもひどい授業風景
東洋経済オンライン|奨学金が支える「Fランク大学」の葛藤と不安
香川大学|ボーダーフリー大学が直面する教育上の困難-授業中の逸脱行動に着目して-
オルタナティブ・ブログ|大学の学級崩壊~迷走する大学・暴走する学生
茂木健一郎 公式ブログ|「教育困難大学」をめぐる本当の「困難」とは何か。