通訳案内士とは

・ 通訳案内士(通訳ガイド)とは、日本を訪れた外国人観光客に対し、通訳案内(客に付き添い、外国語で旅行案内をすること)を行う職業。通訳案内士として業務を行うには国家資格が必要とされ、資格を持たない人が報酬を受け取って通訳案内を行うことは禁止されていた。しかし、増加しつづける外国人観光客に対して、通訳案内士の「量的・質的な確保は事実上不可能」であることなどを背景とし、2017年5月26日、改正通訳案内士法が国会で成立した。これにより、通訳案内士の資格を持たない人でも、報酬を受け取って通訳案内を行うことが可能となる。今回の規制緩和によって、観光業界における通訳案内士の立場や通訳案内の現場がどのように変化していくか、業界関係者などは注目している。

・ 2005年、国土交通省は旅行業者に対し、「無資格通訳ガイドの使用禁止の徹底について」と題する通知を公開した。同通知のなかでは、外国人観光客向けのツアーで通訳案内士の資格を持たない添乗員が通訳案内を行っている事例が見られると指摘されており、通訳案内をめぐる事情は当時から問題視されていた。

・ そこで、「通訳案内士のあり方に関する懇談会」を開催するなど、通訳案内に関する問題が2008年から本格的に検討されはじめた。2009年から2011年にかけて開かれた「通訳案内士のあり方に関する検討会」では、多様化する外国人観光客に対し、通訳案内士制度が対応しきれていないため、「通訳案内士を補完する役割を担うものとして、通訳案内士資格を取得していない者についても、その資質管理を行ったうえで、ガイド業務を認めることが適当である」という結論が出された。その後、経済に関する構造改革を目的として内閣府に設置された「規制改革会議」において、通訳案内に関する審議が行われ、通訳案内士の資格を持たない人も有償で通訳案内が行えるという規制緩和が決定された。

通訳案内士の仕事

・ 通訳案内士の行う通訳案内という業務は、国土交通省によって以下のように説明されている。

通訳案内業務とは、サービスを受ける者に対して、単に日本語を翻訳して伝えたり、旅行の円滑な実施上必要不可欠な範囲内で事物の名称等を伝えるにとどまらず、その事物の背景にある我が国や地域の地理、歴史、文化、政治等を含めて、自らの知識を用いて能動的・積極的に説明を行う行為をいう。

(引用元:東京都産業労働局|無資格ガイドの使用禁止の徹底について

・ また、通訳案内業務の具体例として、以下のような行為が挙げられている。

- 日本の硬貨、お札を説明する際に、印刷された人物や建物について解説する行為。
- 観光地において、単に地図等に記載してあるその事物の名称を伝えるにとどまらず、
その内容、背景等を説明する行為。
- 旅館システムの歴史、特徴を説明する行為。
- 料理の食材や調理方法の説明に付随して、歴史、文化等について説明する行為。

・ 通訳案内士の大半はフリーランスであるとされ、一般社団法人・日本観光通訳協会に登録することで、旅行会社などからの仕事を紹介される。ツアーで通訳案内を行う仕事を受託すると、通訳案内士はツアー当日に外国人観光客が宿泊しているホテルへ向かい、客と合流してツアーを開始する。一日あたりの報酬の相場は1万円~3万円とされているが、フリーランスであることから福利厚生を受けられないほか、時期によって紹介される仕事の数が変動するため、通訳案内士の業務のみで生活している人は少ないのが現状だという。

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通訳案内士になるには

・ 2017年5月に国会で成立した改正通訳案内士法により、通訳案内士の資格を持たない人でも通訳案内の業務ができるようになった。しかし、通訳案内士が国家資格であることは変わらず、試験に合格した人しか通訳案内士を名乗ることはできない。通訳案内士は、資格を持たないガイドに比べて「より質の高い案内士」として、今後も活用される予定である。

・ 通訳案内士試験は年に1回行われ、一次試験と二次試験とがある。一次試験では、外国語・日本地理・日本歴史・一般常識の4科目で筆記試験が課される。外国語科目では、英語・フランス語・スペイン語・ドイツ語・中国語・イタリア 語・ポルトガル語・ロシア語・韓国語・タイ語から1つを選択する。二次試験では、一次試験で選択した外国語による、通訳案内の現場を想定した口述試験が行われる。

・ 政府機関である日本政府観光局の発表によると、2016年度における通訳案内士試験の受験者は11,307名で、合格率は21.3%だった。合格者のうち、英語を選択した人が2,006名で最も多く、中国語を選択した人が140名と2番目に多かった。しかし、英語選択者の合格率は23.8%である一方、中国語選択者の合格率は9.5%にとどまった。このように、選択した言語によって合格率にばらつきがあるものの、総じて合格率は低く、通訳案内士の国家資格を取得するには猛勉強が必要であるといわれている。

(参考)
朝日新聞デジタル|通訳ガイド、無資格でも 外国客急増で 質低下の懸念も
Japan National Tourism Organization|通訳案内士(通訳ガイド)実務研修会等のご案内
Career Garden|通訳案内士
ダイヤモンド・オンライン|通訳案内士(通訳ガイド)のやりがいと現実の収入
東京都産業労働局|通訳ガイド制度に関する周知について(旅行業者の方へ)
東京都産業労働局|無資格ガイドの使用禁止の徹底について
e-Gov|通訳案内士法
内閣府|通訳案内士制度の見直しについて
内閣府|規制改革会議(平成25年1月~平成28年7月)
観光庁|通訳ガイド制度
観光庁|国家試験のご案内
日本政府観光局|平成28年度通訳案内士試験の合格発表