N-NOSEとは

・ N-NOSE(エヌ・ノーズ)とは、生物化学者の広津崇亮氏(九州大学)が中心となって研究している、線虫(細長い糸状の生物)を用いたがん検査。がんを安価・簡便な手段で早期に発見することで、がん検診受診率の飛躍的向上と、がんによる死亡者数の激減につながると考えられており、N-NOSEが実用化された暁には「人類社会全体の変革」が起きるとして注目を浴びている。

・ 2017年3月、広津氏が代表取締役を務める株式会社HIROTSUバイオサイエンスは、独立行政法人国立病院機構四国がんセンターと、N-NOSEの共同臨床研究を開始したことを発表した。四国がんセンターとの連携によって、年間でおよそ1,000体のがん検体を収集することが可能になり、さまざまな種類のがんが研究できるのだという。

・ また、HIROTSUバイオサイエンスは、2017年4月、幅広い分野で研究・開発を手がける株式会社日立製作所と、N-NOSEの実用化に向けて共同研究を行うことを発表した。日立製作所が新たに開発した、線虫がん検査自動解析技術を用い、臨床評価で必要となる大量の検査を実行する予定。

N-NOSEの仕組み

・ N-NOSEには、Caenorhabditis elegans(C. elegans)と呼ばれる線虫が使われる。C. elegansは、体長約1mmの細長い多細胞生物で、嗅覚に優れるという特徴を持つ。C. elegansは、がん細胞特有の分泌物を匂いで嗅ぎ分けて反応するため、C. elegansを観察することによって、がん細胞の有無がわかるのである。

・ 広津氏はN-NOSEの実験の際、血液よりも尿で診断できるようにしたほうが簡便だと考え、がん患者と健常者のそれぞれの尿に対するC. elegansの反応を調べた。するとC. elegansは、がん患者の尿に近寄った一方、健常者の尿からは離れていったことが確認できた。そして実験を繰り返した結果、C. elegansは95.8%の確率でがんを発見できるという驚くべき精度を見せた。また、がんの進行がステージ1の状態でも、C. elegansは88.9%の確率でがんを発見することができた。

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N-NOSEの利点

・ N-NOSEが従来のがん検査より優れているのは、検査を安価で簡便に行える点である。2017年時点のOECD(経済協力開発機構)による最新の統計では、日本人ががん検診を受診する割合は他国と比べて低いことがわかっている。データの採取年や調査方法にばらつきはあるものの、たとえば子宮頸がん検診を受診した成人女性の割合は日本が42.1%で、米国の84.5%、フランスの75.4%、カナダの73.4%と比較すると低い。2016年に内閣府が「がん対策に関する世論調査」を行ったところ、がん検診に行かない理由として挙げられたのが「受診する時間がない」「受診費用が負担になる」などだった。

・ しかし、N-NOSEが実用化されれば、医療機関に行かずとも、通常の健康診断などで採取した尿を使ってがん検査を行えるようになる。また、1回の検査にかかる費用は100円程度と見込まれているため、N-NOSEの実用化と普及によって、がん検診の受診率が上がることが期待されている。さらに、N-NOSEによるがんの発見率は、ステージ1の初期でも88.9%と高いことから、早期の発見・治療によってがんによる死者が大幅に減り、治療費も減少することが見込まれている。そのため、N-NOSEによって社会が大きく変わると注目されており、早期の実用化が待望されている。

(参考)
株式会社HIROTSUバイオサイエンス
九州大学|線虫で100円がん検査
九州大学大学院 理学研究院 生物科学部門|広津研究室
日立製作所|日立とHIROTSUバイオサイエンス社が、線虫によるがん検査の実用化に向けた共同研究に合意
脳科学辞典|Caenorhabditis elegans
OECD Statistics|Health Status
世論調査|がん対策に関する世論調査
ダイヤモンド・オンライン|「天才高校生が開発」「尿1滴で」がん早期発見法の可能性
J-CASTヘルスケア|体長1ミリの線虫が尿1滴で診断…早期発見のがん検査、実用化へ