ネット中立性とは

・ ネット中立性(net neutrality)とは、インターネット上のコンテンツはすべて公正に扱われるべきだという考え。インターネット中立性、ネットワーク中立性とも称される。たとえば、ISP(インターネットサービスプロバイダ、インターネット接続事業者)がユーザーによる競合他社のコンテンツへのアクセスをブロックしたり、競合他社によるコンテンツの表示速度を不当に遅くしたりすることによって、自社のコンテンツを優位に立たせようとすることは、ネット中立性を侵しているとみなされる。

・ ネット中立性に関する議論は日本ではさほど目立たないが、2017年7月現在、ドナルド・トランプ政権下の米国では、ネット中立性に基づいた規制を緩和しようとする動きがある。そのため、AmazonやYouTubeなどのコンテンツ事業者や市民団体が強く反発し、大きな問題となっている。日本でも、ニュースサイトなどを通じて海外ニュースを追っている人たちのあいだで注目されている。

ネット中立性が必要とされる理由

・ マーケティングリサーチなどを手がけるMM総研が行った「ブロードバンド回線事業者の加入件数調査(2017年3月末時点)」によると、ISP業界におけるシェア第1位はOCNで全体の約2割。それにYahoo! BB、So-net、BIGLOBEが続いているが、シェアはいずれも1割程度。さらに、OCNよりも「その他」のシェアが多いのである。このことから、日本においてISPの寡占は生じていないとみられる。

・ しかし、通信政策などを専門とする実積寿也教授(中央大学)によると、「米国の半数以上の家庭ではブロードバンドサービスに対応した固定ISPの選択肢はわずか1社」なのだという。ユーザーがインターネットを利用するのに必要なネットワークを提供するISP市場において、特定の一社および数社が支配的であれば、自社および自社の関連企業が提供するコンテンツのみ通信費を無料にしたり(ゼロレーティング)、ISPに一定の料金を支払った企業のコンテンツのみ高速で表示するなどの方策により、他企業のコンテンツを不利な状況に追い込むことができる。このような企業による利益追求行動を防ぐのが、ネット中立性という考えである。放送と通信に関する規制および監督を行う米国の政府独立機関・連邦通信委員会(Federal Communications Commission、FCC)は、民主党のバラク・オバマ政権下にあった2015年、大手ISPの反対を受けつつも、上述したような不公平な方法でISPがコンテンツを扱うことを禁じる規則を承認した。

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ネット中立性をめぐる動き

・ しかし、2017年に共和党のトランプ氏が米大統領に就任して以来、ネット中立性に基づく規制を緩和しようとする動きが加速した。トランプ大統領が、FCCの新たな委員長として、規制反対派のアジット・パイ氏を起用したからである。パイ氏は、上述したゼロレーティングはユーザーから支持されてきたと話し、民主党政権下で開始された、ゼロレーティングを行う大手ISPに対する調査を終了させた。

・ このような規制緩和はネット中立性を侵害しているとして、AmazonやYouTube、redditなどの企業や団体、市民が反発し、抗議のためのwebサイトが立ち上げられた。7月12日にはオンラインで抗議集会が行われ、その結果としてFCCに200万件のコメントが送られたうえ、連邦議会には500万件のメールが送信されたという。

(参考)
JPNIC|ネットワーク中立性問題について
NHK放送文化研究所|米FCC委員長、ネット中立性の規制撤廃へ週内に方針発表=関係筋
NHK放送文化研究所|米FCC,「ネット中立性」の新ルールを採択 インターネットの運用に強く関与へ
CNET JAPAN|アマゾンやグーグルなど約200社、「ネット中立性」問題で一斉抗議
CNET JAPAN|トランプ政権移行で米通信業界に影響–FCC、大手2社への「ゼロレーティング」調査終了
ケータイ Watch|第771回:ネットワーク中立性 とは
ITpro|FCCのネット中立性規則見直しに反発 Amazonなどが7月12日に抗議行動
Tech Crunch Japan|ネット中立性規則の廃止に反対するオンライン抗議集会にネットの自由をもとめる数百万の声が集結
株式会社MM総研|ブロードバンド回線事業者の加入件数調査(2017年3月末時点)
日本経済新聞 電子版|トランプ米大統領、FCC委員長にパイ氏を指名 規制緩和派