おじいちゃんのノートとは

・ おじいちゃんのノートとは、東京都北区の中村印刷所が製造販売する方眼ノートで、正式名称は「ナカプリバイン 水平開き 方眼ノート」。ノートを開いたときに左右の段差が出ず、完全に180度水平に開くことができるのが特徴。どのページを開いても中央の縦ラインが膨らまず、平らになる。手で押さえることなくきれいに開くことができ、コピーやスキャンした時などに中央の縦ラインが黒くならない。

・ 中村印刷所は印刷・製本業を手掛ける町工場。中村輝雄社長(73)と夫人、息子、職人の中村博愛氏(80)の4人で営む(※)。輝雄社長の父が1938年に創業した会社で80年近く続いてきたが、近年紙の需要の減少とともに経営状態が悪化し、廃業の危機にあった。その危機を免れるために自社オリジナルの商品を作ろうと、「完全に水平に開けるノート」に目をつけ、開発に着手していた折、中村印刷所の近くで製本会社を営んでいた博愛氏が会社をたたむことになった。輝夫社長は、長年の付き合いがあり、製本の専門知識がある博愛氏に声をかけ、ノートの完成度向上に向けて開発に取り組み、2年かけてナカプリバインを完成させた。(※年齢は2016年7月時点。博愛氏は輝夫社長と同姓だが血縁関係はない。)

・ ナカプリバインの製法は次の通り。

水平開きノートの製法はこうだ。印刷後の二つ折りの紙を寸分たがわず重ね合わせた上で、背の部分に尖った器具で1ミリ以下の傷をつけ、そこに接着剤を二度塗りする。言葉で説明してもわかりにくいが、要するにきわめて精密な作業だ。

(引用元:東洋経済ONLINE|「水平開きノート」を作り続ける町工場の底力

・ 完全に水平に開くために柔軟性と強度の絶妙なバランスをとる必要があり、試行錯誤の末に編み出されたこの製造法は特許を取得した。また、東京都の機関が製品の普及を支援する「トライアル発注認定制度」にも選ばれたが、中村印刷所には販売のノウハウが欠けており、8,000冊ほどの在庫を抱えてしまっていた。

おじちゃんのノートが注目された経緯

・ 性能に優れたノートであるにも関わらず販売が振るわないなか、博愛氏は少しでもノートが知られるきっかけになればとの思いから、専門学校生の孫娘に「学校の友達にあげてくれ」と言ってナカプリバインの在庫の一部をまとめて渡した。ノートを受け取った孫娘が、2016年の元日にTwitterで次のようにツイートしたことで、ナカプリバインが爆発的に知れ渡った。

「【拡散希望】うちのおじいちゃんノートの特許取ってた…宣伝費用がないから宣伝できないみたい。Twitterの力を借りる! どのページ開いても見開き1ページになる方眼ノートです。欲しい方あげるので言って下さい!」

(引用元:日本経済新聞|SNSパワーさく裂 在庫の山も孫の投稿で瞬殺 (徳力基彦)

・ このツイートは、孫娘のフォロワーを中心に瞬く間に拡散し、リツイートは30,000超。あまりの反響の多さに驚いた孫娘が、ツイートを削除するほどだった。こういうノートが欲しかった、という主旨のコメントが次々とつき、中村印刷所にはナカプリバインの注文が殺到し、8,000冊ほどの在庫に対し30,000冊を超える注文が寄せられた。

・ ナカプリバインは、水平開きという特性上手作業でしか作ることができず、当初は1日300冊ほどしか作ることができない状態。発注に対応しきれないため、一時は受注を中止するほどであった。2016年7月現在、メモ帳形式や原稿用紙形式など合計12種類を製造。取扱店も増え、三省堂や紀伊国屋書店のほか、Amazonでも購入が可能である。(Amazon|ナカプリバイン 水平開き 方眼ノート A4 5mm罫 30枚 5冊セット

・ アジャイルメディア・ネットワーク取締役の徳力基彦氏は、「おじいちゃんのノート現象」に見る、マーケティングにおけるSNSの力について次のように解説する。

特に日本の中小企業では「モノづくり」と「営業力」が重要視されがち。消費者にどうやって知ってもらうか、商品の特長をどのように世の中に広めていくかというPRやマーケティングが後回しにされがちだ。

インターネット、ソーシャルメディア時代は、足を棒にして売り込んで回らなくても、本当にその商品を必要としている人に伝えることができれば、在庫の山が注文の山になることがあり得る。

(引用元:日本経済新聞|SNSパワーさく裂 在庫の山も孫の投稿で瞬殺 (徳力基彦)

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おじいちゃんのノートの今後の展開

・ 小学生向けのノート「ジャポニカ学習帳」を手掛けるショウワノートがナカプリバインの量産化に名乗りをあげ、2016年6月にはショウワノートと中村印刷所が共同で、きれいに開ける小学生向け学習帳を製造販売する契約を締結。翌年春の発売に向け、秋からは小学校の現場での実証実験に着手する予定。ショウワノートの工場でナカプリバインが量産されることとなった。

ショウワノートは、小学校の先生や実際の小学生からのヒアリングで「水平に開くノートがあると便利」などの声を受けていました。水平に開くノートの製造方法を模索していたところ、「ナカプリバイン」の存在をWebの記事で知り、ビジネスパートナーとしての依頼を行いました。

(引用元:PRTIMES|水平に開ける「おじいちゃんのノート」と「ジャポニカ学習帳」のショウワノートがコラボ 小学生向けの水平に開くノートの開発を開始

・ 中村印刷所では、水平に開かないと不便な地図や楽譜、絵本、教科書などに今後ナカプリバインを展開していく考えで、すでに企業からの問い合わせも来ているが、当面はノートの製造に専念する方針。

・ また、2016年8月10日には、ナカプリバインの誕生経緯、中村印刷所の廃業危機からの復活劇を描いたノンフィクション書籍『おじいちゃんのノート-下町の職人魂がオンリーワンを生んだ-』(セブン&アイ出版)が出版された。

(参考)
印刷一筋78年印刷親父・方眼ノートの中村印刷所|ナカプリバイン 水平開き
朝日新聞DIGITAL|「おじいちゃんのノート」注文殺到 奇跡生んだ偶然
日本経済新聞|SNSパワーさく裂 在庫の山も孫の投稿で瞬殺 (徳力基彦)
withnews|「おじいちゃんのノート」注文殺到 孫のツイッター、奇跡生んだ偶然
withnews|〝おじいちゃんの方眼ノート〟量産化 作るのは「ジャポニカ」の会社
ITmedia ビジネスオンライン|これぞ町工場の底力 廃業の危機を救った「おじいちゃんのノート」とは
東洋経済ONLINE|「水平開きノート」を作り続ける町工場の底力
PRTIMES|水平に開ける「おじいちゃんのノート」と「ジャポニカ学習帳」のショウワノートがコラボ 小学生向けの水平に開くノートの開発を開始