「お金の奴隷解放宣言」とは

・ 「お金の奴隷解放宣言」とは、お笑いコンビ「キングコング」のひとりである西野亮廣(あきひろ)氏が、自身のブログにおいて、2017年1月19日付のエントリーで用いた言葉。西野氏は、自身のプロデュースした絵本『えんとつ町のプペル』について、「(絵本の値段が)2000円は高い。自分で買えない」とする声が小学生から届いたとエントリー内で明かした。続いて、金銭に関する価値観を以下のように語った。

お金を持っている人は見ることができて、お金を持っていない人は見ることができない。「なんで、人間が幸せになる為に発明した『お金』に、支配され、格差が生まれてんの?」と思いました。そして、『お金』にペースを握られていることが当たり前になっていることに猛烈な気持ち悪さを覚えました。

(引用元:魔法のコンパス|お金の奴隷解放宣言。

・ そして、お金がない人でも読めるよう『えんとつ町のプペル』をインターネット上で無料公開する旨を述べた際、西野氏は「お金の奴隷解放宣言」という言葉を用いた。

だったら、もう『お金』なんて要らないです。僕とあなたの間から『お金』を取っ払います。『お金』を払いたい人だけが払えばいいようにします。(中略)お金の奴隷解放宣言です。

(引用元:同上)

「お金の奴隷解放宣言」をめぐる言説

・ このエントリーはインターネット上で拡散されると、多数の批判を浴びて炎上した。批判的な意見には主に2種類あった。そのひとつは、23万部を売り上げたとされる大人気の絵本を刊行からわずか3ヶ月で無料公開すれば、ほかのクリエイターも無償で作品を製作したり公開したりすることを求められるのでは、という懸念である。もうひとつは、西野氏がエントリー内で用いた「『お金が無い人には見せませーん』ってナンダ? 糞ダセーぞ」という強い表現や、「お金の奴隷解放宣言」という言葉の選択によって、クリエイターという職業を拝金主義者のように扱っているとするものである。

・ 西野氏のブログに対しては、SNS上で一般ユーザーが多数の意見を述べただけでなく、著名人も議論に加わった。声優の明坂聡美氏は、1月19日付のツイートにおいて「タダで提供できるものが良いもの程、作品の価値も、クリエイターに支払う対価も下げてしまう可能性がある」などと意見を述べた。このツイートに対し、西野氏は「えんとつ町のプペル」公式アカウントから「それがアウトだと、有名アーティストはYouTubeにPVをアップできませんね」と返信。両者はその後もTwitterの返信機能によるやりとりを続けたが、意見の一致を見なかった。

・ 西野氏を擁護する著名人には、実業家の堀江貴文氏がいる。堀江氏は、1月27日に生放送されたテレビ番組『5時に夢中!』において、西野氏を批判する人々に苦言を呈した。堀江氏は、作品を無料で公開することについて「そんなの音楽業界では昔からやっていること」「なんでこれを批判するやつがいるのか、頭おかしい」などと語った。

・ また、朝日新聞は2017年2月4日の夕刊に、西野氏に賛同するコラム記事を掲載した。執筆を担当した評論家・宇野常寛氏は、西野氏に対する批判は「見当ハズレ」であり「表層的な揚げ足取り」であると述べた。宇野氏は、現代において、テキストや画像といった「情報」は過剰供給されているために金銭的な価値が下がっており、絵本を実際に手に取るような「体験」にしか人々は価値を感じなくなっていると主張した。

「モノからコトへ」「情報から体験へ」。西野が行っていることは、インターネット普及以降の文化産業のかたちについてこの20年議論されてきたことの極めて直接的な実践に過ぎず、西野自身もそのことを隠そうとしない。(中略)だとすると、批判者たちから西野の挑発的な物言いへの反感を取り除いたときに残るのは、端的に述べれば既存のルールとシステムが通用しなくなることへのおびえでしか、ない。

(引用元:朝日新聞デジタル|(サブカル時評 宇野常寛)変化におびえていないか

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その後の「お金の奴隷解放宣言」

・ 西野氏を批判する側の意見にも、擁護する側の意見にも、ある程度の妥当性がある。少なくとも、西野氏は批判的な意見に耳を傾け、ブログの文章にあとから修正を加えた。たとえば、前述の「糞ダセーぞ」を「糞ダセー」に変更し、その直後に「……いや、モノによっては、そういうモノがあってもいいのかもしれません(←ここ大事!ニュースになると切り取られる部分ね)。しかし、はたして全てのモノが『お金』を介さないといけないのでしょうか?」という文章を挿入して印象を和らげた。また、ブログの末尾に以下のような文章を加えることで、ほかのクリエイターに対する配慮を見せた。

僕は「全部無償にしろ!」とも思いません。お金を稼ぐことが悪いことだとは思っていません。『えんとつ町のプペル』だって、こういうことができるようになったから、やっただけ。僕だって、お金を貰わないと回らない仕事をたくさん抱えています。(中略)…てなワケで俺は無料にするけど、その代わり他のクリエイターに「西野はタダにしたんだからおまえもしろ」なんて絶対言っちゃダメよ。

(引用元:魔法のコンパス|お金の奴隷解放宣言。

・ このようにして、「お金の奴隷解放宣言」議論は時間の経過とともに収束するかに思えたが、西野氏は2017年2月5日付のエントリー内で、世間が日本音楽著作権協会(JASRAC)に「お金の奴隷解放宣言」を叫んだと主張した。JASRACが音楽教室での演奏にも著作権料を課すと発表したことから、JASRACを批判する世論は西野氏の「お金の奴隷解放宣言」と同質だと考えている様子。これによって、西野氏の「お金の奴隷解放宣言」はあらためて注目を浴びたため、この是非をめぐる議論は長引きそうである。

(参考)
魔法のコンパス|お金の奴隷解放宣言。
livedoor NEWS|キングコング西野 絵本「えんとつ町のプペル」のネット閲覧無料化を宣言
ハフィントンポスト|キングコング西野、絵本ネットで無料公開に賛否「すごい」「クリエイター殺し」で激論
エキサイトニュース|キンコン西野、「えんとつ町のプペル」を無料公開も「お金の奴隷解放宣言」で賛否
J-CASTニュース|炎上王・キンコン西野がJASRACに大感謝 「身体を張って炎を引き取ってくれた」
J-CASTニュース|キンコン西野は「ただただゲスいね」 「明坂聡美攻撃」をヤマカンが斬る
スポーツ報知|ホリエモン、キンコン西野の絵本無料公開を支持「批判するやつは頭おかしい」
朝日新聞デジタル|(サブカル時評 宇野常寛)変化におびえていないか