パラダイムシフトとは

・ パラダイムシフトとは、特定の集団や個人の価値観(paradigm)が、短期間で劇的に移り変わる(shift)こと。元は学術用語だが、ビジネスの領域でも使われるようになりつつある。日本語訳はなく、カタカナでそのまま使用されている。

・ パラダイムとは、ある人の考えを支配している価値観のことで、パラダイムが異なるからといって善悪や優劣が存在するわけではない。パラダイムが何かをきっかけに急激に変わり、別の段階に移行することは、チェンジではなくシフトと呼ばれている。日常的な意味でのパラダイムシフトは、自分の価値観が大きく変わるきっかけとなった出来事に対して用いられる言葉である。

科学におけるパラダイムシフト

・ パラダイムシフトという概念を提唱したのは、米国の科学史家トーマス・クーン(1922~1996)である。クーンは著書『科学革命の構造』(1962年)で、この語を初めて使用した。その著書によれば、パラダイムとは、ある時代の人々にとって支配的な価値観であり、その価値観は科学の成果の蓄積によって少しずつ変わっていくのではなく、あるとき突然変化するのだという。

・ パラダイムには、たとえば「太陽は地球の周りを回っている」が該当する。このパラダイムが過去のものとなった理由は、科学者たちが時間をかけて学問的成果を積み上げてきたからではなく、コペルニクス(1473~1543)が唱えた地動説によって覆されたからである。また、パラダイムシフトが起きつつあることの例として、2011年に福島第一原子力発電所で起きた事故により「原子力はクリーンなエネルギー源である」という価値観が覆され、議論の渦中にあることが挙げられる。このように、人々の価値観が短期間で一変することが、パラダイムシフトの原義である。現在、パラダイムシフトという概念は学問の世界で広く受け入れられている。

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ビジネスにおけるパラダイムシフト

・ 一方、ビジネスの世界で使われるパラダイムシフトという言葉は、クーンが提唱したものと大きく異なる。米国の経営学博士スティーブン・コビー(1932~2012)は、著書『7つの習慣』(1990年)において、パラダイムという語を独自に解釈した。そのパラダイムに対するコビーの解釈を、転職・研修事業を手がける株式会社ジェイックは、以下のように説明している。

私たちは無意識のうちに、自分の経験をもとに、あらゆる事実を解釈しています。物事をあるがまま見ているのではなく、ある種の“レンズ”や“地図”を通して見ています。このレンズこそが、一人ひとりの経験や価値観に基づくパラダイム®であり、私たちが物事をどう見るかを決め、私たちの行動を方向づけているのです。

(引用元:7つの習慣研修|7つの習慣とは

・ コビーの著書は世界中で人気を博し、パラダイムおよびパラダイムシフトという言葉はビジネスの世界でも広まった。『実践 7つの習慣』の著者であり、経営に関する講演や執筆を行っている佐々木常夫氏は、パラダイムについて以下のように述べている。

言ってみれば私たちは、パラダイムという眼鏡をかけて生活しています。ジュースが入っているコップを見て、「もう半分しか残っていないのか」と思う人は悲観的なパラダイムという眼鏡をかけ、「まだ半分も残っているぞ」と思う人は楽観的なパラダイムという眼鏡をかけています。

(引用元:PHPオンライン 衆知|<実践 7つの習慣>パラダイムを変えれば結果も変わる

・ このように、ビジネスにおけるパラダイムとは「個人の価値観」という意味で使われている。パラダイムシフトとは、物事の見方を変え、アイディアを生み出すことである。いまやビジネスの世界でよく聞かれるようになったこの言葉だが、クーンの提唱した元の意味も頭に入れておくとよいだろう。

(参考)
三省堂ワードワイズ・ウェブ|10分でわかる「パラダイム」の意味と使い方
コトバンク|パラダイムシフト
PHPオンライン 衆知|<実践 7つの習慣>パラダイムを変えれば結果も変わる
瓦版|パラダイムシフト
7つの習慣研修|7つの習慣とは
Stanford Encyclopedia of Philosophy|Thomas Kuhn